微妙な10センチ。〜最終〜
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#121 [あき]
お疲れ様から始まった電話は、この一週間の話になり、互いを労い、互いを認め合い、そして笑い合った。

《またこっちに来る時は教えて。飯でも奢るよ!》

『わかりましたっ〃ま…当分はないと思いますけどねっ〃』

《はははっ〃了解。じゃ、おやすみ》

『おやすみなさい』


そう言って電話を切った時、一時間が過ぎていた。既に時刻は、深夜を通り過ぎて、、深く深く街も人も眠りについている時間。
物音ひとつしない静寂。

私は、また一人になった…

⏰:09/07/25 22:02 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#122 [あき]
携帯電話をテーブルに置いて、カビ臭い小さな浴室でシャワーを浴びた。
濡れた髪もそのままに、またベッドに倒れ込む。
倒れ込んだ先に手に取った、もうひとつの携帯電話。お気に入り待ち受け画面が記されているままだ。その携帯をベッドに放り投げて何かを諦める。
こんな夜をもう何日繰り返したんだろうか。
なのに、人間は、どんなに闇に包まれいても、お腹も減るし眠くもなる。
生きている以上、仕方ないのだけれど。

もう疲れた。
このまま朝になんて、こなきゃいいのに…

私は、またそう思いながら、また明日を迎える為に、今日を終わらすのだ。
自然と重くなる目と、体をベッドに任せた。

⏰:09/07/25 22:31 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#123 [あき]
体が夢心地になり出した頃。頭の上で携帯電話が鳴った。手を伸ばし、眩しい画面を見つめる。

【どうにかなったのか?歩いてるとか言うなよな。馬鹿。】


愛想も何もない嫌みの文字に、もう遅いよなんて、思ったのに…

【馬鹿とはなんだ。どうにもならなかったから、近くのホテルに泊まったしっ。】


少し嬉しかった。

⏰:09/07/25 23:21 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#124 [あき]
《あの時、迎えに来てくれなかったじゃん!!》

《迎えに来て欲しいなら、そう言え。》

《タクシー呼べばって言ったのは誰?》

《あれは、アドバイスだ。》

《あれは、迎えに来てって言ってるもんでしょぉ?》

《めんどくせ。どうにかするって言ったろうが》

《そこは空気読んでよっ!まっ言ったからって来ないでしょうがねっ。》

《俺は、どうにもならんな、行ってやるつもりでしたけど?》

⏰:09/07/25 23:34 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#125 [あき]
あれから数日後。
ふとした電話でこう会話した。

なんだ‥
変わってないじゃん。
ただ私達には言葉が足りないだけなんだ。
私達、まだ、こんなにも楽しく話せるんじゃん。
普通に話せるんじゃん。
変わってないよね。
私達…
なのに、この寂しさはなんだろう。

そっか。
長く居すぎて。
私達、もっと必要な、大切な何かを失ってるんだ…
そう気付いた。

⏰:09/07/25 23:42 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#126 [あき]
いつしか私達は、何も語らなくなったし、何も言わなくなった。

言葉を交わさなくても、何が言いたいのかを理解できるし、時間を重ねなくても、傍にいると思えていた。

それは、私達が、出会ったあの頃から。
再開したあの日から。
重ねた時間や、重ねた言葉が、歩いた道が、そうさせたに違いない。

あの頃みたいに、だらだらと電波を駆使して時間を重ねなくても
あの頃みたいに、長々と時間を重ねなくても。

私達は何かを共有していた。
それで満足していたんだ。

⏰:09/07/26 01:48 📱:W65T 🆔:G/V7tpkE


#127 [あき]
だけど、本当は、それじゃダメなんだ。
きちんと言葉を交わさないと、自分の思いは伝わらないんだ。
相手の思いも伝わらないんだ。
きちんと時間を共有していないと、自分の気持ちは確かめられないんだ。
相手の気持ちもわからないんだ。
そっか。
私達。そういや
たった一言。
好きって言葉すら
言えてないね。

心だけじゃ…
不安だよ。

⏰:09/07/26 01:59 📱:W65T 🆔:G/V7tpkE


#128 [あき]
あの出張から、時間が経った。
私は、毎日を仕事に追われ、早朝から深夜まで、仮面を付けた日々。
ただ、唯一違う事が起きた。
西条さん。

あの日から、彼が毎夜、私の携帯電話を鳴らす。
お疲れ様から始まって、1日の報告を費やし、おやすみなさいで締めくくる。
その時間が、毎夜毎夜続く。
いつしか
彼は、遠方にいる知人。
私の中で、そう位置付いていった。

⏰:09/07/26 02:07 📱:W65T 🆔:G/V7tpkE


#129 [あき]
その夜、また彼からの電話。私は帰宅して、ソファーに体を投げ出したところ。

―ピッ
『はいはーいっ』

《おーっ。お疲れい》

『お疲れ様ですっ。』

また何気ない会話。
私は、ジャケットを脱ぐと、煙草に火をつけながら、彼の声を聞いた。

《なに?今帰ってきたの?》

『うん。疲れたしっ』

彼の方言にも、もう幾分か慣れた。(※文章では標準語ですが、彼は方言なまりで話ます。)

⏰:09/07/26 02:13 📱:W65T 🆔:G/V7tpkE


#130 [あき]
『西条さんは?』

《俺は今から帰るんだよね。》

だいたい彼は、会社から帰宅道中に、私の携帯を鳴らす。それから約一時間の道のりを、私達は共有するのだ。そして、彼が無事に帰宅する頃、私の睡魔は限界に近づいて、じゃぁまたと終了する。

そんな毎日だった。

⏰:09/07/26 02:24 📱:W65T 🆔:G/V7tpkE


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