微妙な10センチ。〜最終〜
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#177 [あき]
念のため…
念のため…

何の?

帰ってた…

ってた…?

私、本当に、帰るつもりだった…?


答えが出せなかった。

だから、笑ってないと、押し潰されそうだった。

⏰:09/07/31 21:22 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#178 [あき]
―――

どうぞ、ごゆっくりと、着物を着たおばさんが笑顔を残し、襖が閉まる。
二人並んで、部屋を見渡す。すぐさま、暑いねと、西条さんが冷房のスイッチを探す。私は、何がやってるのかなとテレビのスイッチを押した。
何かしてないと、気まずさでおかしくなりそうだった。

数十分前。
せっかくだから、お勧め温泉ないの?の私の冗談に、彼はあるよと言って、この温泉街に車を走らせた。
まさか、飛び込みなんて無理でしょうと笑う私に、彼は任せとけと一件の宿に入って行った。
バカなと焦りながらも、彼の背中を見送る事数分。大きくまるサインをしながら、意気揚々と車に戻ってきたのだ。

こいつ…何ものなんだっ!!

⏰:09/07/31 21:30 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#179 [あき]
『ここの女将さんと、ちょっとした知り合いでさ。にしても、部屋あって良かった。』

『あっそうなんですか…〃』

お茶をすする私達。
熟年夫婦かよっ!!

『でも一部屋…』

『いや、そこまでは無理言えないだろ?』

何故、そんなに、当たり前のように、だけど、どこか満足げなんだっ!!

『で…ですよねーっ〃』

ああ。
私って、本当弱いな。

⏰:09/07/31 21:34 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#180 [あき]
『ここの温泉、かなりいいよ。お肌ツルツルになるからっ!!』

『うんっ…』

『とりあえず、風呂入ってきたら?』

『後でいいです〃先に行ってきたらどうですか?』

今夜。私は、どうされちまうんだろう。
彼がお風呂に行く間に
柔軟体操をしっかりして、いざという時の飛び蹴り、もしくは関節技、なんだったら、ボディーブローの練習をしておきたかった。

※いや、実際には、運動音痴なもんで、出来ませんけどね。

⏰:09/07/31 21:40 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#181 [あき]
彼が温泉に向かった間に、中居さんが、布団を敷きに来た。

手早く、二組の布団を敷くと、お休みなさいと、出て行く。
しばらく、それを見つめて、はたと気づき、私は、ずずずっと布団を離す。
二組の布団が、緊張を妙に強めた。
しばらくすると、戻ってきた音がする。
『君も入っておいでよっ』
そう言いながら、襖が開き、浴衣姿の彼が現れる。
やっぱりドキンと胸が鳴った。

⏰:09/07/31 21:51 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#182 [あき]
ただし、残念な報告です。確かに私は、彼の浴衣姿にドキンと胸が鳴りました。
だけど、その数秒後には、お腹を抱えて、涙を流して、震える事になるんです。
それは…

浴衣が、微妙に短い!!
手足の長い長身の彼には微妙に短い!!
そう、例えるならば、スレンダーな西郷どん。
私は、吹き出しそうになったのを、ぐっとこらえて、普通に振る舞う。
なのに、彼は、その姿で、そう、スレンダーな西郷どんは、ああうまいとお茶をすすったんですっ!!風呂上がりにビールじゃなくて熱い日本茶をっ!!
さっ…西郷どん…!!

その姿が、何故かツボにはまり、思わず、枕に顔をうずめて、窒息死覚悟で笑いをこらえたのでした。

⏰:09/07/31 21:58 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#183 [あき]
もう撃沈寸前でした。
湯呑み片手に、不思議がる彼に、もう、私の笑いのツボは大喜びなわけです。
必死に伝えました。
思わず西郷どんと言いそうになりました。

『さ…西条さん?浴衣、もうワンサイズ大きいの、持って来てもらいましょうか…?〃』

『そうだ。小さいかなと思ってたんだよね。なんか、動きつらいしっ…やっぱり、これ小さいよね?』

『で…ですかねぇ〃なんか、きつそうだったからっ。』

⏰:09/07/31 22:11 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#184 [あき]
えっ?気づいてたんですか?
気づいてて着ちゃったんですかっ?
あなた…

もう。
私息が出来ません。
ちぬ…ちんじゃう…

『何が、そんなに面白い?〃』(※方言でした)

こんな時、方言禁止ですっ!!か…可愛い過ぎるっ!!もう、ツボは崩壊です。
必死に平然を装い、フロントに申請。無事に一件落着です。届いた浴衣を、サラリと着こなす彼を見て、落ち着きを取り戻した私。
もう。衝撃的でした…

⏰:09/07/31 22:17 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#185 [あき]
こんな所で、この人と私は何をしてるんだろう。
どうしたいんだろう。

考えても答えは出ない。

ブラウン管に移る光景に笑う彼の横で、私も画面を見つめる。
ブラウン管の中の人達は、何だかわあわあと騒いでいた。西条さんの笑い声の横で、私もはははと笑ってみる。
面白いねと私に笑顔を見せる彼に笑顔で頷いてみた。
だけど、私には何が面白いのか、やっぱりわからなかった。

ただ、わかるのは。
あの時
私がこの彼に
必要とされた事。
出会ってから一カ月。
いつも、いつも
彼が私を想う
その気持ち。
だけだった。

⏰:09/08/01 03:35 📱:W65T 🆔:bShKEOAI


#186 [あき]
静かな夜。何の音も聞こえない。あれから、もうどれくらいの時間が流れているのだろう。
お休みなさいと電気を消した。

長い長い静寂。
妙な緊張。

その静寂、緊張を破るように、隣の布団から、確かに聞こえた。《俺を選んでくれる?》の台詞に聞こえないふりをした。そんな私に彼は、もう寝たのかと笑ったように言って、まるで子供をあやすように、優しい声でお休みと、そう言った。そして、背中を向け続ける私に、ただポツリと確かめるように《俺についてこい。》そう呟いた。

彼が眠ったのか、眠れてないのかは背中越しにはわからない。

ただ、ただ、静かな夜だった。

⏰:09/08/03 23:43 📱:W65T 🆔:sjOOZQAY


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