微妙な10センチ。〜最終〜
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#271 [あき]
南出口。出てすぐに立ち止まる。
少しキョロキョロして、私の車を見つけると、ぱっと顔がほころんだように見えた。
その姿に向かって、私は笑顔で手を振る。
私の姿を確認して、彼も軽く手を挙げると、あの優しい笑顔で、歩いてくる。

『うすっ!!お疲れ様〃』

『お疲れ様でしたっ。乗って下さい〃』

何だか、妙に照れくさい。男性らしい軽い小さなバックを、トランクに入れると、私達は、また久しぶりの。二回目の再会を果たした。

⏰:09/08/13 22:05 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#272 [あき]
『じゃっ。どこ行きましょうか?〃っても、私、こっちあまり知らないんですけどねっ。』

『…あきの住んでる街を見てみたい。だめ?』

さらりとそう言った彼に私は、ドキリとした。
私は、首を横に振ると、微笑んで冷静さを保ちつつ車を動かす。

久しぶりだとか、髪型変えたとか、そんな何気ない会話。
大通りを離れて、高速道を目指す。
道中、緊張と、慣れない道で四苦八苦しながら、車を進める私に、横で彼は若干引きつりながら笑っていた。

高速道に乗って西へ向かう事数キロで、彼のお願いを聞き入れ、途中、サービスエリアにて、運転席を変わった。(申し訳ない…)

⏰:09/08/13 23:33 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#273 [あき]
『にしても、あきが、この車とは、意外かも?』

『…そうっ…?』

ちらりと右側を見てみる。運転席に座る、西条さん。
すぐに目を逸らした。

箱型普通車。
もう何年も前に生産されて、当時の人気車も、時代の流れと共に、需要が減り今はもうない。
今、同じ車が走っているのは珍しいくらいだ。
それでも、私は大切に乗っている。

『…もう珍しいかもねっ…〃』

快調に流れる左側の景色を見た。
私の右側。この景色に、なおちゃん以外の誰かが座っている。
改めて、実感した。

⏰:09/08/13 23:44 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#274 [あき]
『昔、人気あったよね?あきもその時に?』

『私はこれは、自分の車潰しちゃって…友達から、そっくり、もらったのっ。だから、全部、友達の趣味ですよ。』

笑って、流す。
はるか昔、愛車を事故で失った。(※パート1参照)次に乗った愛車は、乗って数年で寿命で失った。(続編参照)続けて二台共に失った私には、新しい愛車を用意する資金なんて残っちゃいなかった。
困り果てた私と、愛車の維持がツラいが、手放したくはないと嘆く友人。
二人の意見が合致して。
そのまま私が譲り受けた。普段は私が愛用しているが、未だに、友人も乗り回している。
今や二人共有と言える代物だった。
ねえ。なおちゃん…

⏰:09/08/13 23:59 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#275 [あき]
微妙な空気が車内に流れる。彼自身、その友達が、なおちゃんである事に気づいている様子だ。
これ以上は聞きたくない。そう全身で言っていた。

『…お腹減りましたねっ。私、朝から何も食べてないしっ〃』

『…そだなっ〃何がうまいの?』

私は、身振り手振りで、次から次へと、名物の名前を挙げる。西条さんは、私の言葉に、笑いながら、旨そうだねと答えてくれた。

そう。私は、この人を選ぶんだ。
今、運転席に座るこの笑顔の爽やかな彼を。
私は自分の意志で、選んだんだから…

⏰:09/08/14 00:08 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#276 [あき]
車を走らせて、三時間。
私の住む街に入ってきた。ここからは、さすがに私の出番だろう。高速道を降りて、運転席を変わる。
愛車を駐車場に入れて、二人手を繋ぐ。
私が生きる街。
小さい田舎街だと思ってはいても、他県からすれば、ここは、実は観光地。国宝や世界遺産があったもする街。
私が、西条さんの生きる街に行った時のように。
私も、彼にくるりと街を紹介した。
そんな街に、西条さんは喜んでくれた。
初めて見ると言った国宝の建物にも、立ち寄る。
時間も忘れて、二人ではしゃいだ。
全てを忘れて。私は、はしゃいだ。

⏰:09/08/14 00:26 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#277 [あき]
『やっぱ、本場は違うねっ!〃美味いよ。』

『そう?私は食べ慣れてるけどっ。』

『なんだそれっ!〃』



『は〜…すごいねっ。』

『うん。…実は私も、初めて見た〃』

『おい地元人っ!!〃』

『地元人だから見ないんでしょ?〃』


繋いだ手。

これでいい。
これで、いいんだよっ。

⏰:09/08/14 00:33 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#278 [あき]
彼となら幸せになれる。
彼なら、忘れさせてくれる。彼なら…

この夜。
二度目の私達の夜。
淡い光の中で、初めて彼と向き合った。

私を見つめる目。
私に伸ばす腕。
私を包み込む胸。

全てを彼に託した。
私に触れる体が
とても優しくて、涙が溢れた。

⏰:09/08/14 00:40 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#279 [あき]
朝、目覚めると彼が気持ち良さそうに眠っていた。
起こさないように、腕を伸ばし洋服を探す。
きしむベッドで、彼が目覚めた。そのまま、フワリと腕が伸びて、私を包んだ。そのまま強く引きつけられた腕に、私は体ごと、彼に寄りかかる。その腕は、私をしっかりと抱き寄せ離さない。笑いながら、離してよと言うと、離さないと言った。

離したら、どこかに行ってしまう。

そう言った。行かないからと言うと、彼はフワリと微笑んで、また強く私を抱き寄せた。

⏰:09/08/14 00:55 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#280 [あき]
西条さん来郷二日目。
感動する私を横目に、彼は、ちょちょいとカーナビをセッティング。
暖かい日差しの中、リラックスムードで次の目的地へ移動中。私の携帯電話が鳴った。バックを弄り、着信音がはっきりと聞こえた時、私の手は止まる。携帯電話を見つめて、指が固まった。

『出ないの?』

西条さんは、そう言った。
『え…うん…いいかなって…』

わかるから。この着信音。咄嗟に都合のいい嘘すら出てこなかった。

⏰:09/08/14 01:12 📱:W65T 🆔:0SdBI476


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