微妙な10センチ。〜最終〜
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#320 [あき]
ショーウインドの中、ライトを浴びて光っていたそれは、太陽の光を浴びて、本来の輝きを取り戻したかのように、嬉しそうに光る。
私にはとても眩しくて見れなかった。

『…私には派手じゃないかな?〃』

『そっか?いいじゃんっ。』

『そう?…ありがとっ。』


キラキラと光るそれを私は照れ笑いと称した笑みでかえす。

『大切につけさせて頂きます〃』

『よしっ。』

そして微笑み差し出された西条さんの右手に、キラリと光る指輪がはめられた左手を差し出し微笑んだ。

⏰:09/08/17 00:21 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#321 [あき]
じっとりとした風が私達の間をすり抜けて、また厚い雲が、空を覆いだす頃、鉄の塊が駅へと入ってくる。いつの間にか増えた人が一斉に動き出したと同時に、別れを惜しむ人で、入り口付近が混雑した。スーツ姿のサラリーマンは迷惑そうな顔を向けながら、急ぎ足で次々に乗り込んでいく。私もまた、その迷惑そうな顔を向けられながら、ありきたりの言葉を交わし、いつまでも離れない手を握り、うんうんと返事しながら微笑む。
もう待てないぞと、最後の発車音がホームに鳴り響いて、私達の間に隔てられるドアがプシューと音を立て閉まった。
西条さんは、ドアの向こう側、手を挙げまたねと言って、私は大きく頷き、手を振る。
塊が動き出して、彼は遠く離れた向こう側へと帰って行った。
ある休日の昼下がり。
私達は、二度目の再会を終わらせて。
私は自分自身の何かを終わらせたー…

⏰:09/08/17 00:39 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#322 [あき]
スーツ姿のサラリーマンは迷惑そうな顔を向けながら、急ぎ足で次々に乗り込んでいく。私もまた、その迷惑そうな顔を向けられながら、ありきたりの言葉を交わし、いつまでも離れない手を握り、うんうんと返事しながら微笑む。
もう待てないぞと、最後の発車音がホームに鳴り響いて、私達の間に隔てられるドアがプシューと音を立て閉まった。
西条さんは、ドアの向こう側、手を挙げまたねと言って、私は大きく頷き、手を振る。
塊が動き出して、彼は遠く離れた向こう側へと帰って行った。
ある休日の昼下がり。
私達は、二度目の再会を終わらせて。
私は自分自身の何かを終わらせたー…

⏰:09/08/17 00:40 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#323 [あき]
愛車に乗り込み、ルームミラーで、ついさっき、つけてもらった首にかかったそれを見た。
自分が選んだ?だけあって、シンプルかつキラリと光るそれは可愛い代物。
だけど…正直気分は複雑。
(…今からの時期は苦手なんだよねっ…)
そう。私は突然の雨に降られる季節や、汗ばむ季節になると貴金属は一切しない。
雨に打たれたり、汗をかいた時に、あのアクセサリーがまとわりつく感が、とてもとてもとてもとても!!!気持ちがわるいのだ。(※かなり、しつこく声を大にして言わさせて頂きたい。)だけど、つけてもらった数分後に外すのは、やはりいくら何でも、申し訳ない。
それに…
やっぱり
なおちゃんネックレス。
小さなお土産屋に売っていた、真っ青な石のあのネックレス。
あのネックレスを外して、これをつけてしまった首には。
やっぱり多少の違和感と、言いようのない寂しさがあった。

⏰:09/08/17 01:00 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#324 [あき]
鍵をさし車が唸る。
ハンドルを握る手を見る。
また指輪がきらりと光った。

(…つけちゃった…)

指輪を持っていない。
これは嘘じゃない。
私は、思春期を迎えた頃から自分の手が大嫌いだった。
父親に似てしまったこの手は、女の子らしさのかけらもなく、指は太く短いし、指先なんて丸くて平べったい。爪なんて弱くもろい性質で伸ばせた試しがない。だから、指輪なんて手が強調されるようなものなんて恐れ多い。マニキュアすら塗った事がないのだ。
そりゃ、一応女だし?憧れたりはしたけれど。
過去にも、一度たりともねだった事はなかった。

⏰:09/08/17 01:14 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#325 [あき]
手、そして指は私の最大のコンプレックスだったのだ。
私が一生に一度だけ
唯一つけるとするならば。
それは。結婚指輪。その指輪しかしないと心に決めていた。
自分の左手薬指を見つめても、初めての指輪は、やっぱり女心をくすぐった。仲間入りをしたようで、嬉しかった。
だけど、やっぱり…

《あきが、俺を認めさせたら。よくやったって言わせたら…指輪買ってやるよっ!!》

はるか遥か、遠い昔。
酔っ払ったなおちゃんが
言ったあの言葉。(※一編参照)嬉しかった思い出。
果たせそうにない言葉。
それが胸に響いていた。

⏰:09/08/17 01:26 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#326 [あき]
この指輪は私の決意だ。

私が西条さんのものになったという証。

未来を掴むんだと決めた。
だから、なおちゃんを…諦める。あの日、そう決意した、その証なのだ。

そっと指輪に触れてみる。
そして、私は前を見据えて強くハンドルを握った。
車を静かに発進させて、ゆっくりと前へ動かす。
駐車場を出て、流れゆく景色の中、私はただ車を前へと動かせた。ただ、ただ前進させたのだ。

そう決めたんだ。
自分で決めた…

何度も、そう言い聞かせながら、愛車を前へと進めていた…

⏰:09/08/17 01:42 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#327 [あき]
―ピッ…プルル〜
《おうっ。》

相変わらずの愛想もない返事。
もっと違う言葉ないのかな。

『わたしっ。』

でも、私も私だ。
相変わらず可愛げのない言い方。いつからかな…こうなったの。

《んあ。てか、遅ぇよっ。昨日、かけ直すって言ったのはそっちだろ?俺、かなりご立腹なんだけど?》

怒られた。
なのに、これは昔から悪い気はしなかった。

『帰ったら電話するって言ったじゃんっ〃』

案の定小憎たらしい言い草。
自分でも笑っちゃう。

⏰:09/08/17 19:06 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#328 [あき]
《んだそれっ。はい言い訳っ!!〃》

ああっ。
今日は機嫌良いんだ。
…良かった。

『うっせ!〃だから、電話したのっ。』

可愛くないなぁ…私。
これが。最後なのにっ。
たぶん…最後なのに…

《はぁ?なにっ。帰ってない訳っ?ますますウゼー〃》

冗談じゃないよ?
本気だよ。
…本気なの。

『あの彼と一緒だったっ。さっき帰ったけどっ?〃』

ねぇ。どう思った?
どう感じてくれた?
なんて言う…?

⏰:09/08/17 22:28 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


#329 [あき]
《…ふーん。そう。》

で…ですよねぇ〃
アナタは私に何の干渉もないものねっ。
私に幸せになって欲しいんだもんねっ。
そうだよねっ…
うん…やっぱりね…
そう言うと思った…

『………』

あれっ。
自分で言い出したのに。
解ってた答えなのに。
考えた小憎たらしい台詞。
出て来ないやっ…


《まっ、要件は昨日だったからっ、今日じゃ遅ぇしっ。と、いう事で。じゃっ!》

『うん…』

―プチッ。プー…プー…
私の返事を聞いたのか聞いてないのか。なおちゃんの電話は切れた。

⏰:09/08/17 22:51 📱:W65T 🆔:FF5wDsUw


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