微妙な10センチ。〜最終〜
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#50 [あき]
一台のワンボックスカーが目に止まった。
私は、ふざけんなと怒りたくなるくらいの持参した重い荷物を引きずりながら、よたよたと歩み寄る。車の社名を確認すると、間違いなく、聞いてた社名だ。
だけど、それと同時に
後ろのトランクドアを上げて、それを日除け変わりに座り。
サングラスをかけて、くわえ煙草。
手足のスラリと伸びた、なんとも胡散臭い男性が、私の視界に入る。
『あの…西条さんですかね…?』
:09/07/10 00:08
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#51 [あき]
渡された資料と同時に、迎えの人として聞いていた名前を、とりあえず言ってみる。
胡散臭い男は、すっくと立ち上がり、ちび助の私には迫力満点の威圧感を出しながら、私の名前を確認した。今度は私が返事をして頷く。
『遠いところ、お疲れ様でした。宜しくお願いします〃』
胡散臭い…いや西条さんは、くわえていた煙草を、携帯灰皿にくしゃりと押し込むと、サングラスを取って微笑んだ。
その衝撃はEXI○Eのあ○しばりだった。
:09/07/10 00:21
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#52 [あき]
『お待たせしてすみません。』
あまりの衝撃に吹き出しそうになるのを、ぐっとこらえて、私はそつない挨拶をする。
そんな私に、西条さんは、笑顔を向けて
『いえいえ。時間通りですよ』
と…言ったはず。
いや。私も標準語とは言いませんが、さすがに、仕事中は、なるだけイントネーションには気をつけて話ますよ。
それをこのお方は、爽やかな笑顔で、一瞬躊躇する程の方言。
あまりのダブルパンチに腰が砕けるかと思った程だった。
:09/07/10 00:29
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#53 [あき]
まあ、そんな事は、彼自身、もちろん気付いてない訳で。
立ち尽くす私の手に握りしめられた、一週間分の荷物を、乗せますよと言うように、手を差し出してくれた。
私は、放心に近い状態で、バックを渡す。
細い体が、重い荷物を軽々とトランクに詰め込んでくれた。
『とりあえず、今日は、エリアを経由してホテルまでお送りします。それでよろしいですか?』
(※何度も言うが、おそらく、彼はそう言ってると解釈した。)
『はい。今日の予定は、特に急ぎではなかったはずなので、お任せします。』
会話が成り立ってるか不安だったが、そう答えてみた。
:09/07/10 00:36
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#54 [あき]
なんとか、成り立ったみたいだった。
西条さんは、一世風靡したヨ○様ばりの微笑で、運転席に回る。
チンピラかと思ったら
ゴルフの、り○う君?スマイルで。
美しい日本語を使うかと思ったら、なまり万歳で。
もやしかと思ったら、大根で。
挙げ句にヨ○様ですか…
私は、あまりの衝撃に、運生まれたての仔羊のような足腰で(※実際は違うけど、そんな気分)なんとかヘナヘナと車に乗り込んだ。
:09/07/10 00:45
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#55 [あき]
この衝撃的な彼。西条さんが、後に、私と、なおちゃんの別れ道のキーマンになってくる。
まだまだ、この時は、そんな事は、蚊の脳みそサイズ程思ってもいない。
私の未来は…
あの懐かしい田舎街で。
口が悪くて、偉そうで。
へんこつ野郎で、ついてけないけど、本当は寂しがり屋で優しい…
あいつの隣にあると、まだまだ思っていた。
:09/07/10 00:54
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#56 [あき]
―――――――
暖かい日差しの中で、車は進んで行く。
簡単な打ち合わせを済ませた後、目的地までしばらく移動になる事を知った私は、流れる景色を見ていた。
西条さんは、真っ直ぐに前を向いて、ゆっくりと前に車を進ませる。
ラジオから、楽しそうな話題が流れ、DJが楽しそうに笑っている。
時折、世間の流行りらしい音楽が車内を華やかにする。
遠い世界のようだった。
膝に置いたバックの中。
マナーモードにしたままの携帯電話は、いっこうに震えない。
そのくせ、スーツのポケットに入れた携帯電話が、望んでもいない着信音で、時折、私を呼ぶだけだった。
:09/07/10 01:43
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#57 [あき]
『お疲れですか?』
市をまたぎに、またいで、目的地まで、あと少しといった所で、西条さんが、そう声をかけてきた。
駅で会って以来の声だった。
『いえっ…〃あまりにもいい天気で〃』
無難な答えを咄嗟に放つ。そんな私に、西条さんは、昨日までは雨だったんですよと教えてくれた。
そうですか。と笑って見せて、私は、どうりで暑いと思った。なんて話をつなげる。
西条さんは、そろそろ、本格的な梅雨ですねと笑って言った。
嫌な季節になりますね。と私も笑った。
:09/07/10 01:55
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#58 [あき]
天気なんてどうでもいい。
早く、一人になりたい。
一人になって、震えない携帯電話を確認したい。
もしかしたら、震えてた事に気付いてないだけかもしれない。それなら早く返事しなきゃ。
何してた?
ごめんね。気付かなかったよ。
元気?
私ね、今出張で、○○に来てるよ。
一週間くらいかかるかな。お土産何がいい?
言わなきゃ。
全ての思いを、また押し込んで、私は西条さんに笑いかけた。
:09/07/10 01:59
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#59 [あき]
出張一日目は、一週間中の担当エリアの下見をして、現地責任者と軽い打ち合わせもどきをして、そのままホテルへと向かった。
ホテルへ向かう間も、相変わらず、西条さんは黙々とハンドルを握って、ゆっくりと前へ進めるのみ。
これから一週間。
私は、この謎の西条さんと、行動を共にする。
いわゆる、彼は私の現地パートナーであり、私の補佐だったのだ。
名刺には
西条 祐介。
ご丁寧に、携帯番号に携帯メールアドレスまでが記載されていた。
:09/07/10 02:06
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