微妙な10センチ。〜最終〜
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#597 [あき]
『まさかっ。』

『あらそうなんだっ。若いのに、ここまで、スピードで来たしね。てっきりそうかと〃』


冷酷に微笑む彼女。

『……』

『なんだか、○×地方のイケメンとも付き合ってんだって?』

『……いえ…』

『もう社内中広まってるよ?』


そんな訳ない。
ただ、脅されているだけ。

⏰:09/10/07 01:39 📱:W64S 🆔:qvWtMHFU


#598 [あき]
『…だから、どうして辞めないの?この仕事より、他の仕事の方が給料いいよね?』

『……』

『何にこだわってるわけ?』

『…この仕事が、ただ好きだから…ですかね。』

『…好きじゃ借金返せないよ?まっ。勝手にすれば、いいけど、ただ立場わきまえてもらわなきゃ困るわ。いい?二度と新しい担当受けんじゃないよ?』

そう言って、彼女は荒々しく煙草を押し消して、荒々しく部屋を出て行った。

⏰:09/10/07 01:44 📱:W64S 🆔:qvWtMHFU


#599 [あき]
バタンと閉まる扉の音が、ガツンと頭に響き、内蔵をギューっと痛くした。

『…勝手な事言ってんじゃないよっ。
ふざけんなっ…
あんたには関係ない話じゃん…
そんな性格だから、仕事貰えないんだっつーの…』

と、そう呟いてみた。
本当は、正面切って言ってやりたい。
言われっぱなしは悔しい。
だけど、そんな事したら、私はますます、この場所にいられなくなる。必死に震える拳を握りしめる。
すると、ズキンズキン打ち響く頭痛に、ぎりぎり痛みだす胃。更には顔面がピクピクとつり始め、ずきずきと骨が軋みだし。

『いた…いたたたた……』

私は、その場にうずくまり、動けなくなった―…

⏰:09/10/07 01:53 📱:W64S 🆔:qvWtMHFU


#600 [あき]
――
―――
――――

薬品の匂い。
ぼうっと目を開けた。
うっすらと見える天井に、細く長い管が繋がれている私の腕。
ポタリポタリとリズムを刻みながら、透明の液体が私の体に流れていた。

『……すみません。』

隣に立つ白衣の天使に声をかけた。
白衣の天使は、にっこり微笑むと、頷いた。

⏰:09/10/08 17:42 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


#601 [あき]
寝かされたベッドに、この感覚は久しぶりだなと、妙に冷静に考える。
天使に呼ばれたのか、推定年齢三十代後半。この業界では、まだまだ若手と呼ばれるんであろう医師は、寝かされた私の顔色を伺うと、カチカチとペンを鳴らながら丸い椅子に座った。

『よくもまぁ、こんななるまで我慢したもんだ〃相当痛かったでしょ?〃』

それはどこの部位を聞いてるんだろうか?
疑問点はあるけれど、まぁと微笑み頷く。

⏰:09/10/08 18:08 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


#602 [あき]
『まっ。しばらく安静にして、それから治していこう。とにかく、この点滴が終わったら、病室案内してあげて下さい。』

爽やか医師は、何やらサラサラとサインをすると、この世界ではベテランだろうと思える、熟年白衣の天使に言った。
天使は、わかりましたと微笑むと、私に言う。

『これは、栄養剤だからっ、あと三十分で終わるからねっ。』

『はぁ…あのぉ?』

『んー?』

『いや、いいですっ…』

私の返事を待たず、強制的に病室に連れてかれる。
だけど、もういいやとそう諦めた。
いや…助かった。
そう思ったのかもしれない。

⏰:09/10/08 18:15 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


#603 [あき]
あの後、何とかデスクに戻り、ペンを握った。
一時間…
二時間…

途中、何度かあの大粒で即効性のある錠剤を飲んだ。
何度も飲んだ。
だけど、効力を示さず、それどころか、益々強くなる耐え難い激痛に加え、視界がくるくると回りだして、汗が吹き出てくる。

(だめだ…気持ち悪い……)

トイレに行こうと立ち上がったその時、数名残る残業組が、ざわめいた。
そして、気付けば私は救急車に乗せられていたのだった。

⏰:09/10/08 19:02 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


#604 [あき]
苦痛を、うわごとのように訴える私にすぐさま担架が用意され、夜間入口から私はここへ連れてこられた。
移動中も、車の揺れに耐えられず、何度も何度も嘔吐した。

やっと到着した頃には、もう私自身、唸るような頭痛と、唸るような胃痛。顔面が痙攣し、手足が痺れて、動く事すら出来なかった。

そして、寝かされた担架の上、ただひたすら痛みを訴え続け、抱えたトレーに嘔吐し続けたのだ。

⏰:09/10/08 19:25 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


#605 [あき]
そして、慌ただしく検査に検査を継ぎ、私は最終的に、点滴で落ち着いた。

少し前からここに寝かされていて。
痛みも気分も、今はなんて事はない。
なんなら、いつしか、ウトウトとしていた私は、疲れた体を心を無して眠りにつけて、なんだかすっきりしていたくらいだった。

⏰:09/10/08 20:10 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


#606 [あき]
『あの…電話したいんで、病室には自分で行けますから。〃』

もう消灯時間はとっくに過ぎた暗闇の廊下。
車椅子に乗せられ、病室に向かう途中。
ふと目に入った公衆電話に、思い出す。
白衣の天使は微笑んで、四階だと教えてくれた。
ロビーに移動して膝に置いたバックから、携帯電話を取り出し、ボタンを押す。

…―緊張する。

だけど、伝えなければいけない相手に、私はボタンを押した。
静かなフロアに、ドキドキと心臓の音が響くんじゃないかと思った。

⏰:09/10/08 23:14 📱:W64S 🆔:haJuWVKA


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