微妙な10センチ。〜最終〜
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#696 [あき]
幼い頃は、無邪気に手を繋ぎ笑い会った。
《あきちゃん!》
《なぁに?なおちゃん!》《あのね、僕ねっ!》《あのね、あたしね!》
そんな淡い記憶。
時が過ぎて、様々な傷をおって、様々な問題を抱え再会した私達。
《あのさ》《なに?》《てかさ?》《いや、それはさ!》
その苦しみや傷を吐き出すように、二人で語り明かした。
くだらない事に何時間も笑い合った。
私達の間には、いつも互いを思う言葉が溢れていて。互いを必死とする時間が流れていた。
なのに、なんだこれ。
この微妙な空気。
何がいけなかったんだろう…
:09/10/31 01:07
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#697 [あき]
『何度も無理だって断ってるのにさ〃えらく私がいいみたいよ?』
行きたくないけど。
行くかもしれない。
私は卑怯だ。
微妙なニュアンスを残しながら、クッションを抱え、またボスリとソファーに横たえた。
古びた天井を見つめ、はははと笑って見せた。
『ふーん。』
また、なおちゃんはギターを手に取り、ポロリンと奏でる。
『なおちゃんは?最近どうなのよ!』
何気無い質問。
その何気無い質問に、彼もまた何気無く答える。
:09/10/31 01:17
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#698 [あき]
『ああ。そろそろ俺も考え時かなって思うよ。』
『ん?』
なおちゃんの話を、きちんと、聞き入れられているんだろうか。
わかってた。
ずっと知ってた。
なおちゃんは、女性を惹き付ける魅力のある人だって事は。
トラレタらどうしよう。
新しくライバルが出現する度に怯えたし、だけど、彼自身が興味を示さない事に、安心し、トラレない事を確信した(※勝手に)。
敗北を味わったのは、今も昔も、別れた彼女(実質は元奥さん)だけ。たった一度だけ。
:09/10/31 01:40
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#699 [あき]
昔に一度だけ、突然に現れた真っ青携帯の女。後に事情を知り、飛び蹴りしてやりたくなったけれど。あの状況でもまだ、私は、彼を信じていたし、彼を想っていた。だからこそ、強くいられた。
『で、どうすんの?〃』
『いや、どうすっかなと思ってる。』
『…そんなの知らないし〃』
今聞かされている新しい存在。
なおちゃんの言葉に
彼自身の心が、揺れている事がわかる。
そしてまた、それを強く否定できないのは。
自分自身が、西条さんの存在に、負い目を感じている。
私達の間でそんな二つの感情がぶつかり合っていた。
:09/10/31 02:06
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#700 [あき]
強く否定が出来ないまま、彼の話を聞き入れる。
男と女の出会いがあって。心の弱った女が、強さ、優しさ溢れる言葉に恋に堕ちる。
そして立ち直っていく。
本来ならば、見てて欠伸が出そうな定番ストーリー。
なのに、今こうして、話に吸い込まれてしまっているのかというと。
定番ストーリーだからこそ、痛い程わかるのだ。
私は彼女の想いが手にとるようにわかった。
そう。
もう何年も前。
私こそが、彼に繰り広げた定番ストーリーが、またその彼女の中でも、繰り広げられていたのだから。
:09/10/31 02:52
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#701 [あき]
『で?だから?私に何を言って欲しいわけ?〃』
『思ったままをどうぞ。俺は、女の気持ちがわからん!!』
『なおちゃんは、その子の事、女としてどう思った?』
『…いや。特に…』
『なら、相手を傷つけるだけだよ。やめとけ、やめとけぇい〃』
明るく、私らしく
彼から除外させる。
昔から、この言葉で、私はライバルを蹴落としてきた。
卑怯だ。
本当に、私は卑怯だ…
自分は、寂しさから耐えられず、フラフラとしてたくせに。
なのに、誰にもなおちゃんには触れて欲しく無かった。
ただの嫉妬。
:09/10/31 03:08
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#702 [あき]
なのに女心の解らないなおちゃんは言った。
私の言葉に、そうだよなと頷きながら。
だけど
私の目の前で。
いつもの調子で。
言った。
『いや、でも俺も一人は疲れるし。そろそろ、いいかなと思うんだよな。』
どうしてだろう。
私には、西条さんがいるのに。
なおちゃんの言葉に
ズキンときて。
グサリときて。
カッとなった―…
:09/10/31 03:18
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#703 [あき]
『なら、付き合えばいいじゃん。その彼女、ボロボロに傷つけると思うけどね。』
『んだよ。その言い方。』
カチンときた悪いクセ。なおちゃんに向けて、思ってもない言葉が飛び出した。なおちゃんは、ギターを置くと、私の目を見る。その目は、深い所で光っていて、不愉快さを表していた。それは、瞬時にわかったけど、言い出したのは自分。やっぱり後には引けない。
『だって、今まで興味示さなかったくせに、今回のその彼女にはなおちゃんも何か、魅力を感じたから、付き合ってもいいって思えるんでしょう。
なら良いんじゃないって言ってるの!』
:09/10/31 03:41
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#704 [あき]
『そうだな。そっちも、嫁の貰い手出来たみたいだし?』
『……』
『いいんじゃね?
想われる相手と一緒にいる方が幸せなんだよ。きっと。』
『そんな事ない!!
好きな人と一緒にいる方が幸せだよ!!』
『そうかな?好きにならなきゃ生まれない感情は沢山あって、それは、ほぼ苦痛でしかねーよ。会いたいに始まり、悲しい、寂しい、嫉妬に、怒り…な??疲れるだろ??』
:09/10/31 04:02
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#705 [あき]
『それは間違ってる。好きになってもらえない相手といる方がツラいんだよ!!』
『あきはどうなんだよっ?なら、その彼の事傷つけてんじゃねーの?いい加減にハッキリしてやれよっ。』
『そんなのわかってるっ。だけど、私は幸せになりたいのっ!だから、彼の所に行く事も真剣に考えて…』
『あっそ。なら、好きにすれば?俺も、彼女の事考えてやるつもりだし。』
『…あっそ!するわよっ!!バカッ!!』
:09/10/31 04:19
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