微妙な10センチ。〜最終〜
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#110 [あき]
なんの事?なんてとぼけてみた私に、西条さんは、こらこらと笑った。
それでも、おどけてみせる私に、西条さんは、ケラケラと笑いながら、心配して損したと言った。
私は、すっくと立ち上がり、お尻の汚れをぱんぱんっと叩きながら言う。

『…偶然の西条さんの電話に救われた〃ありがとう。あとっ…酷い事言って、ごめんなさい。じゃぁ。これでっ!!気をつけて帰って下さいねっ。また来ますっ!!』

彼の返事を待たずに私は歩きだす。
その私の背中に向かって、今度はハッキリと聞こえる声で、こう言った。

⏰:09/07/22 21:35 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#111 [あき]
『また電話していいですかっ!?』

驚き振り返る私。

『…あなたの番号。残していいですか?』

一週間、毎日となりに居たんだ。彼が、サラリと言ったこの言葉に、どれだけの勇気が詰まっているか、目に見えてわかった。
彼の後ろに、なおちゃんの顔が浮かぶ。
大人の振りした少年の西条さんの後ろに
少年のくせに大人のふりしたなおちゃんの顔。
そのなおちゃんが、浮かんでは…消えた。

私は彼の言葉に微笑んで、頷いた。

⏰:09/07/22 21:49 📱:W65T 🆔:mmCe/RwQ


#112 [うる]
あげます! 待ってます☆

⏰:09/07/24 17:11 📱:911SH 🆔:h6.39XXU


#113 [あき]
うるさん、ありがとうです
ー”
また数時間かて帰路につく車内。猛スピードで流れる景色を眺めながら、どこか西条さんの笑顔がちらついた。一週間、となりにいた彼は、いろんな一面を私に見せた。
仕事に向かう姿勢。
休憩時間にふと見せる彼自身。
どちらも、私には居心地が良かった。
そしてあの夜の
思いもよらない言葉に。
駅での言葉。

私の中で、何かが変わりつつあったー…

⏰:09/07/25 19:40 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#114 [あき]
大きな駅まで数時間。
そこから電車を乗り継ぎ、自分の街まで戻って来た頃には、もう深夜だった。
本来ならば、バスを利用して、自宅近くまで戻れるはずが、もちろんバスは遥か前に終了している。
重すぎる荷物を引きずりながら、タクシーを探した。
けれど、こんな田舎町の小さな駅にタクシーなんて簡単には見つからない。
歩けない距離でもないが、今の私の体力、またこの時間。想像しただけで吐き気がする。

『参ったな…』

思わず声が漏れた。

⏰:09/07/25 19:47 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#115 [あき]
周囲を見渡す。
駅周囲に建つ、寂れたホテルが、弱々しい光を放っていた。しばらくホテルと睨めっこ。
このままあの寂れたホテルに泊まるか。
いや
出来る事なら、帰りたい。歩くか。
いや
おぞましい。

バックから携帯電話を取り出す。
ピコピコと画面と睨めっこ。
こんな時間に起きていて、尚且つ、迎えに来てくれそうな人…


いないね…。

⏰:09/07/25 19:52 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#116 [あき]
半ば、自宅に戻るのは諦める。私は目の前にある寂れたホテルらしき建物に向かって歩きだした。
握り締めた携帯電話。
それを見つめて、立ち止まる。迎えに来れるはずもないとそもそも、リストから外した名前。

【ひま?】

そうメールを送った。
口は悪くて、偉そうで。
喧嘩ばっかで、むかつくし、可愛げないし、優しくない。だけど、私がピンチの時は必ず助けてくれる。
やっぱり優しいあいつ。
私を元気百倍にしてくれるあいつに。

ただ、一言、言葉が欲しかっただけ。

期待はしてないけれど…やっぱりそれでも期待した。

⏰:09/07/25 20:32 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#117 [あき]
【なに?】

珍しくすぐに返事が戻ってくる。
これだけで、少しだけ気分が晴れてしまう自分が、本当に情けない。

【ひま?】

同じ文面を送り返す。
またすぐに返事が戻ってきた。

【だから何?】


【家に帰れないの…】

⏰:09/07/25 20:37 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#118 [あき]
【意味がわかんね】

今の状況をかくかくしかじかと文面に綴る。
送信して数分で、また戻ってきた。

【タクシー呼べば】

そんな事言われる前から、わかってるし。
ただなんとなく、期待しただけ。

わかってた。
だけど
嘘でも、冗談でも、何だって良かった。

仕方ないなぁ。待ってろ。

そのたった一言を…期待しただけだった。

⏰:09/07/25 21:33 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


#119 [あき]
眠そうなフロントマンらしきおじさんに、鍵をもらうと、その古ぼけて寂れたホテルの部屋に荷物を置いた。
カビ臭い部屋には、一昔前の装飾品、そしてベッドが置いてあった。
ベッドに倒れ込む。

遥か昔。

夜の街、酔っ払いの私を何度も迎えに来てくれた。
恐怖の夜、遥か向こうにいた私を探し迎えに来てくれた。

もう迎えには来てくれない彼。

綺麗に整えられたホテルに佇む西条さん。
寂れたホテルに背を向けるなおちゃん。

いつから、どこで、何が変わったのか、わからなかった。

⏰:09/07/25 21:45 📱:W65T 🆔:tBOBuo2E


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