微妙な10センチ。〜最終〜
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#151 [あき]
昨夜からの頭痛が、一向に良くなる気配はない。

『頭いたい…』

昼休み、小さなテーブルで、完全に失せた食欲。
備え付けの自動販売機で買った、野菜ジュースを飲みながら呟いた。

『大丈夫ぅ?』

昼休み、たまたま一緒になった、仲間から軽い言葉が返ってくる。

『天気悪いとねー…〃』
何もかもを投げ出して、逃げ出したら、どんなに楽なんだろうと考える。
そんな事が出来たら…
パックをくしゃりと握ると、お先にと笑顔で席を立った。
そんな時、ポケットで携帯が震える。

⏰:09/07/27 23:13 📱:W65T 🆔:LBoOeDds


#152 [あき]
画面を確認して、廊下に出た。

―ピッ♪
『はいっ?』

《うーっす。お疲れさんっ。今昼休みか?》

『そうですけどっ?どうされたんです?』

《ちゃんと飯食った?俺も昼休みで特に用事はないんだけど。》

『そうなんですか…。お昼に電話あるなんて、びっくりした。』

《んーっ。まぁなんとなく、声聞きたくなって。》

西条さんは、本当に私の食にこだわる人だ。
また聞かれた。
そして、案外、ストレート直球。そして、爆走イノシシタイプだと初めて気付いた。

⏰:09/07/28 01:13 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#153 [あき]
『ちょっと〃真っ昼間から、何言ってんですかっ〃恥ずかしくないんですか?』

ズドンとボールを胸に投げつけられ、飲んだばかりの野菜ジュースを吐き出しそうになった。

《ん?別に、聞かれてもいいよ。》

『私は恥ずかしいです〃』

《そう?あっ。呼ばれてるわ。じゃまた電話するよ。》

『…はぁ…』


まだまだ、これは、彼の一部で、徐々に本性を表していく。

彼の本性…
いや。彼の愛に、私は、負けた事になるのか、ならないのか、今でも、それは、わからない。

⏰:09/07/28 01:32 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#154 [あき]
答えが出ないまま、また夜になった。
携帯電話が鳴る。
今夜は出たくない。
もちろん相手が誰かはわかっている。
仕事用の携帯が、こんな時間に鳴るのは、最近では彼しかいない。
それでも、やはり、仕事用携帯が鳴るのはドキリとするので、最近では、彼だけの専用着信音に設定したのだ。一度、眺めるだけにした。しばらく鳴ると、それは切れた…と思ったらすぐ鳴った。


うん。諦めよう…


―ピッ♪
『はいっ…』

《お疲れさまっ。》

⏰:09/07/28 01:48 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#155 [あき]
『お疲れ様ですっ。』

また始まる今夜の電話。
本日ニ度目の声。
何気ない会話で、必死に話をそらす。
だけど、目論見は儚く散った。いや、首を絞めただけだった。

《そろそろ敬語やめないっ?》

『これはもう癖だから無理ですよぉ〃』

《敬語使われてると、距離感じるわ。俺。》

『…そうですね…』


しまった。
この微妙な沈黙。
頼む。言わないでっ。

《で?答えは決めてくれた?》


はい撃沈。
だから出たくなかったのに…なんて思った私はかなり卑怯です。

⏰:09/07/28 01:55 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#156 [あき]
『……あはは…』

《…まだ悩んでる?好きって事に。》

『…ごめんなさい…やっぱり、わかりません。』

私の答えに、西条さんは、細く溜め息を漏らす。

《どうして、そんなに考え込んでるのか、俺にはわかんねぇよ。自分の気持ちだろ?好きな奴がいるなら、俺を振ればいい話だろ?…悩む意味がわかんねぇよ。》


小さく呟いた彼の言葉に、胸が痛くなった。

⏰:09/07/28 02:03 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#157 [あき]
『そうですよね…なんで悩んでるんでしょぉね…私。苦しいよ…』


そうなんだ。わかってた。
なおちゃんが好きなら、西条さんの言葉に苦しむ必要も、悩む必要もない。
誠の時も、たっちゃんの時も、私は悩まなかった。
確かに、二人を傷付けてしまったけれど。
答えなんて、決まってた。

なのに、どうして
この彼には
悩むんだろう。


それが
わからない。
だから

…苦しいんだ。

⏰:09/07/28 02:11 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#158 [あき]
《君の本当の気持ち、教えて?俺、覚悟出来てるからさ。》

西条さんの優しい声に、私は、少しづつ、心の声を、ありのままを伝えた。
彼には言わなきゃいけないと、そう思えた。

『あのね…私にはね…』

なおちゃんの事。
いつも、二人でいた事。
ずっと友達だった事。
だけど、ずっと好きだった事。
一時は、未来が見えた事。だけど、今では未来が見えなくなった事。

寂しくて、不安で悲しくて…自分の気持ちがわからなくなった事。

そんな時、西条さんと出会ったんだと。
私は、最後にそう締めくくった。

⏰:09/07/28 02:29 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#159 [あき]
《あの夜、泣いてたのは、その彼との事?》

『うん…』

《そっか…》

『私はね、彼との時間は、好きって感情を押し殺した日々だった。
腐れ縁には、邪魔な感情だったから?
だからさ、もういいやっ!!って何度も思ったのっ〃
…だけど、出来ないまま、こんな歳になっちゃって。〃やんなっちゃうよ…〃
ただ未来が欲しいだけなの。

幸せになりたいだけ…』

そして、最後に、私はそう言って―…泣いた。

⏰:09/07/28 02:46 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


#160 [あき]
西条さんは、それ以上、深く何も聞かなかった。
ただ、黙って、私の心の叫びを聞いてくれただけだった。
散々言って、散々泣いて、何だか、スッキリしたと笑う私に、俺って不利だよなぁって笑いながら。
それでも、やっぱり、気持ちは変わらないから。
と言ってくれた。
会いたいと言ってくれた。あの出張からひと月が過ぎた頃だった。

そして、後日。
私の自宅に、今度はプライベートで行く○○地方の三日間の往復チケットが、彼の名前で、送られて来たのだった。

⏰:09/07/28 02:58 📱:W65T 🆔:n0g0IsUg


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