微妙な10センチ。〜最終〜
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#16 [あき]
おもむろに立ち上がった、なおちゃんが、私の後ろに立つ。
背中から、ふわりとなおちゃんの匂いがした。
『んっ?なんか悪戯したでしょっ!』
くだらなさすぎる悪戯が大好きな、なおちゃん。
隙を見せると、かっこうの餌食にされるのだ。
『するかっ!』
『怪しいっ!』
私は、バックをポンポンと触ってみたり、背中に手を回してみたりと、悪戯の痕跡を探す。
『信用ねぇなぁ〃』
『ないねっ〃』
:09/07/08 13:40
:W65T
:Uanw3whY
#17 [あき]
『じゃぁね』
『おう』
パタンと扉を閉じた。
懐かしい廊下を渡り、懐かしい階段を静かに降りると、廊下に漏れる光に、おばさんの背中が見えた。
『遅くまで、お邪魔しました〃』
襖越しに、丸いおばさんの背中に声をかける。
『あら、帰るの?』
おばさんは、振り返ると、私に微笑みかけてくれた。うんと、微笑み、頭を下げる。
:09/07/08 14:19
:W65T
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#18 [あき]
『おじさん…どう?』
病に伏せて、最近は、おばさんの手がないと、何も出来なくなってきた、あの、私の記憶に残る、優しくて、大きなおじさん。
『ん?寝てるわよ〃』
『そっかっ〃』
『あきちゃん、こっち来て座る?』
おばさんは、疲れた体を、ゆりお越し、私を隣に呼び寄せた。
『いいよっ〃おばさんも疲れてるんだからっ!早く寝ないとっ〃』
:09/07/08 14:25
:W65T
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#19 [あき]
『大丈夫よっ。』
ふふふと笑う、おばさんの顔には、深く刻まれた溝。私は、笑うと、首を振った。
『今日は、なおちゃんがいるんだから。なおちゃんに任せてたらいいんだよっ。また来るからっ〃その時は、お茶ご馳走なるねっ。』
そう?と静かに微笑んだ、パジャマに薄い羽織りを着たおばさんに、おやすみなさいと笑って言った。
:09/07/08 14:34
:W65T
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#20 [あき]
静かに廊下を進む。
ギシギシと鳴る廊下は、昔から比べると、大きくなり、それが胸に響く。
広くて長い廊下の先に玄関。サンダルに足を入れた時。また後ろで、おばさんの声がした。
『あきちゃん?なおとの事、頼むわね…』
後ろを振り返ると、小さな体のおばさんが、私に笑いかけていた。
『あははっ〃』
私は、うん。とも、ううん。とも言えずに笑ってしまう。
:09/07/08 14:40
:W65T
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#21 [あき]
『あの子、あきちゃんに沢山迷惑かけてるかけてると思うけど、これからも、あの子の事、助けてやってね』
『そんな事ないよ〃』
それには、強く首を振った。私の方こそ、沢山、彼に助けてもらったんだ。
『おばさんも、無理しないでね。』
『ありがとうね』
外まで見送ろうとしてくれた、おばさんの優しさを断って、私は車に乗った。
キラキラとした星空が、ここがどんな田舎町なのかを教えてくれる。
私には何がしてあげられるんだろう。
そう、星空に問い掛けてみた。
:09/07/08 14:49
:W65T
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#22 [あき]
真夜中、流れる景色を、駆け抜けて、私が暮らすこの街に辿り着いたのは、なおちゃんの町を出発してから、かれこれ数時間。
暗闇の冷たい玄関を開けて、パチンと電気をつけると、ベッドにバックを放り投げた。
寝室に置いてある小さなソファーに腰を下ろすと、煙草に火を付ける。
今回もまた
結局、何も言えなかった。
結局、何も聞けなかった。
その虚しさだけが、胸中を締め付ける。
ジリジリと燃える筒が、煙たかった。
:09/07/08 14:57
:W65T
:Uanw3whY
#23 [あき]
しばらくして、ごそごそとバックのポケットを探る。
【今、着いたよっ。おやすみなさい!】
可愛い絵文字も、ハイテクデコメも、何もない。
シンプルな文面を、作って送信しておいた。
返事が返って来ないのは、千も承知なので、ぽいっとテーブルに置くと、私は、ごそごそと、バックの中身を、明日の通勤用バックに入れ替える。
今度はいつ会えるんだろう。
そんな事を考えながら、バックのポケットをまさぐっていた。
:09/07/08 15:02
:W65T
:Uanw3whY
#24 [あき]
『…なんだこりゃ?』
バックのポケットの奥底から、身に覚えのない紐がはらりと落ちてきた。
色気もへったくれもない、麻が組まれた、それを手に取り、しばらく睨めっこ。
自然と記憶が蘇る。
この紐…
見た事がある…
あれだ…
昔、昔、手先が器用な彼が、作っていた。
いつしか、私達の間で、流行った。
【一本いっとく?ミサンガ】
だ…。
:09/07/08 15:08
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#25 [あき]
もしかして。
あの時、私の後ろに立ったのは…
バックにこれを
入れたんだ…
なーんだよっ!!
可愛くないったりゃありゃしない!〃
素直に、渡してくれたらいいのにっ!〃
それは、昔に比べたら、色も何もない。
飾りもなにもない。
ただの麻の紐った。
『手…抜きすぎだし…〃』
小さな小さな、その紐に、ぷぷぷっと笑って…
ジワリと胸が、暖かくなった。
:09/07/08 15:13
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