微妙な10センチ。〜最終〜
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#200 [あき]
彼女の背中を見送りながら、呆然と立ち尽くす私の後ろに、まだまだ青い、何年も下。いわゆる、後輩と呼ばれる彼女が突っ立っている。

『あのぉ…』

『…あっ…ごめん。じゃ。引き続きしようか…。』

私は、振り返り彼女に笑顔を見せると、自分のデスクに戻る。かき集めた書類、資料を説明しながら、一枚ずつ、彼女に手渡す。彼女は必死にメモを取りながら、私の言葉に頷いた。

こんな、まだまだ青い彼女にこの案件を上手くまとめられるのか。

そう思っても、何も言えなかった…

⏰:09/08/07 03:00 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#201 [あき]
この案件は、もう何年も私が担当してきた。
この地区だって、もう何回も足を運んだんだ。
勿論、ミスをした覚えはないし、トラブルだって起こした覚えはない。
なのに
突然に担当を外されたのは予想外の出来事だった。
今朝出社すると、なぜかそう決まっていた。
理由を聞いても他の仕事との兼ね合いだとしか言われなかった。
それ以上は、取り合ってはもらえなかった。
今更、そんな理由…

⏰:09/08/07 03:07 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#202 [あき]
『じゃ…何か、わからない事あったら聞いてね。』

そう締めくくって、全ての書類を、うろたえる彼女に手渡す。
バックからポーチを取り出して、部署をふらりと抜け出し、廊下の隅に追いやられた喫煙ルームのドアを開ける。

カチリと百円ライターで音を鳴らして、大きく吸い込んで、ふわりと煙りを吐き出した。
外は、今日も雨だった。

⏰:09/08/07 03:13 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#203 [あき]
仕方がない。
若手が入れば、誰かが追いやられる。私が、この部署に配属になった時だって、誰かの担当が私になったはず。

そう自分に言い聞かす。
社会ってのは、そうゆうもんだ。

と納得する。
クシャリと灰皿に押し付けると、私は、また自分に与えられた職務に戻る。

だけど。
これは、始まりに過ぎなかった―…

⏰:09/08/07 03:18 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#204 [あき]
『えっ…?』
まただ。
私なりに気合いの入っていた案件。かなり難しい案件で、何日もかけて下準備したのに。またまだまだ経験不足の後輩へ担当が変わっていた。


『私がっ!?』
もう何年も携わっていない、新人の頃に基本的な案件だからと、何度か担当させてもらった記憶がある。

『…休み…ですか?』
シーズンオフなのも、世間は大不況で仕事がないのも理解はしていた。だけど、私の職務には関係のなかった話。…のハズだった。

⏰:09/08/07 03:28 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#205 [あき]
何かがおかしい。
何年も担当してきた仕事が外され。
難しい案件が後輩に行き。簡単な案件が私に与えられる。
周囲は、忙しそうに、残業、休日出勤と慌ただしいのに、私には与えられた休日。
出社をしても、ごちゃごちゃと書かれている白板。
私の名前の欄は、つねに空白。いわゆるフリーという扱い。出張も、会議も、担当も。何も記されていない。
……まさか。
干されてる…?

そう気付いた時には
完全に、私は蚊帳の外になっていた。

⏰:09/08/07 03:34 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#206 [あき]
干される心当たりなんて到底無かった。
私は、問題児だったのかもしれない。
風雲児だったのかもしれない。
型破りだったのかもしれない。
だけど、与えられた仕事には一生懸命に取り組んできた。
勿論、ミスも沢山してきた。自覚はしている。
だけど…干される程のトラブルを起こした記憶なんてない。

どうして??
なんで??

⏰:09/08/07 03:39 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#207 [あき]
今日もまた、何もする事がなく、喫煙ルームに入っている。二本目の煙草に火をつけようとした時、懐かしい顔が覗かせた。

『…ご無沙汰してますっ〃』

『おーっ!あきぃ。元気っ!?』

彼女は、カチリと火をつけると、にこりと笑った。

『まあまあですかね〃』
目を合わせられず、私も二本目に火をつける。
新人の頃から、面倒かけっぱなしの、私が師匠と崇める大先輩。
彼女は、とうに違う部署へと移動して、なかなか顔を合わせなくなっていた。

⏰:09/08/07 03:44 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#208 [あき]
『相変わらずのハチャメチャかぁ?』

『何言ってんですかっ〃最近は、かなり真面目にやってますよっ。ミスもしてませんってばっ!』

そんな私に、あははと笑うと、彼女は、そっかそっかと頷いた。

『順調っ?』

くりっとした大きな目で、私の小さな目を見つめる。その目は、何もかもを知っている目だった。

『さすがですねっ〃耳に入ってますか?』

悪戯な笑顔で答えてみたけれど。その目に見つめられ、今にも泣き出しそうだった。

⏰:09/08/07 03:49 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#209 [あき]
『…なんだか、よくわかんないんですが、私、どうやら、只今、干されちゃってまぁすっ!!』

明るく声を出してみた。
片手を上げて、あははと笑ってみせる。
彼女は、そんな私に、バカだこいつと笑っていた。

『…何でなんですかね…?』

指に挟んだ二本目の煙草が、ジリリと音を立てて、灰皿に落ちた。
彼女は、ふうっと細く白い煙を吐き出すと、灰皿にくしゃりと押し込んだ。

⏰:09/08/07 03:54 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


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