微妙な10センチ。〜最終〜
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#306 [あき]
ギリギリまで、そんな時間を過ごした後は、しぶる彼を急かすように、その場を後にして、また車を東に走らせる。

西条さんは、帰りが心配だからと、一番近い駅でいいよと笑って言った。
それひどい、なんて笑いながら、彼の言葉に逆らわず、私は一番違い大きな駅へと車を向かわせる。
一時間程で、車は駐車場へと入った。
彼がこの地を後にするまで残り、二時間。
また二人並んで、手を繋いで歩く。

『あっ…ちょっとここ見ない?』

西条さんが突然に、立ち止まり指を指した場所。
私は、笑顔で頷いた。

⏰:09/08/15 02:31 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#307 [あき]
そこは、女としては、煌びやかな場所で、心踊る場所。

『これ、可愛い…』

飾られた品々を見ながら若干浮かれぎみ。
手に取って、鏡にあててみたりする。

彼自身、私の話はそっちのけで、ショーケースを眺めながら、これがいいと、綺麗なお姉さんになにやら言っている。

『あき、はめてみて?』

振り返ると、西条さんの手には、キラキラと輝くー…指輪。

⏰:09/08/15 02:39 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#308 [あき]
『えっ…うんっ。』

指にはめてみると、それは尚一層輝いて見えた。シルバーのリングに小さな花がモチーフとなり、キラキラと宝石が光っている。
宝石に疎い私でも、それが、何の宝石かわかる。

『似合うじゃん〃』

西条さんが、満足げに頷く姿に、ショーケース越しのお姉さんも、微笑んで、ありきたりの褒め言葉を言った。

『そう〃?』

そう言って私は指から抜くと、お姉さんに渡す。
西条さんは、腕を組み、少し首を傾げて考え込んだ。

⏰:09/08/15 02:48 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#309 [あき]
『私、あっち見たいっ!』

咄嗟に指した方向には、これまた煌びやかなネックレス。

『あきはネックレス好き?』

『うんっ…どちらかと言うと…?〃私指輪なんて持ってないしっ〃』


逃げる様に、その場を動いた。いくら、私でも、今の流れはー…わかる。

咄嗟の言い訳。

⏰:09/08/15 02:59 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#310 [あき]
『そっかっ。〃』

二人並んで、その場所を離れ、ネックレスのケース前へと移動する。

『これなんて可愛いよね?〃』

『うーんっ。俺は、こっちかな?』

『あ…それも可愛いかもっ!』

二人で、品定め。
お姉さんは、ニコニコと私達の背中を眺めていた。

⏰:09/08/15 03:02 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#311 [あき]
《女って、こうゆうの好きだよな。俺、場違いじゃね?》
《これ可愛くないっ?》
《わかんねっ。》
《買ってっ〃》
《いやだっ。》

沖縄の地。私が気に入った、真っ青な石のペンダント。気難しい顔をして、ドカドカと店に入って、文句たらふく言ったそれは、小さな紙袋になって、あの日から私の宝物になった。

《つけとけよ》
《うん。》

街を出て行くその時、そう約束した。なのに、その約束を私は破った。西条さんと初めて会った時は、シャツの下、見えないように首につけていたその宝物は。二度目には、ポケットに忍ばせて。三度目の今は…部屋に置いてきた。
それが全て。

⏰:09/08/15 03:20 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#312 [あき]
真っ青ペンダント。
なおちゃんペンダント。


それ以来、私は数あるコレクションをつけなくなった。

私だって一応、女だし。
それなりに持ってはいるけれど。

つけられない事が寂しくて、悲しくて。
あのペンダントが大切過ぎて。

他の何も
何もつけられなくなった。
(※真っ青ペンダントの詳細は、続編にて。)

⏰:09/08/15 03:31 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#313 [あき]
『気に入ったものあれば買ってやるよっ。』

『いいよっ!そんなのっ。〃行こうっ〃』

スマートに店へと入って、綺麗なお姉さんと談笑しながら、アクセサリーを選び、勝手やると言う西条さん。

緊張しながらドカドカと入って、私が選んだペンダントを、さりげなく買ってくれた、なおちゃん。

両極端な二人に、私の心がついて来ない。
早くこの場から逃げたくなった。

⏰:09/08/15 03:45 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#314 [あき]
『…やっぱ俺が買ってやりたいからっ!よしっ。決まりっ〃』

西条さんは、私の返事を待たずに、最初に私が可愛いと微笑み、手に取った小さな石のついたネックレスを指さして、お姉さんを呼んだ。

慌てる私に、いいからと微笑むと、カードを差し出しだす。

『ちょっとっ!高いからっ!いいってばっ』

必死に止める私の頭をポンポンと撫でて…

あれよあれよと、小さな紙袋が私の手に乗ってしまった。

⏰:09/08/15 03:53 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


#315 [あき]
右手には満足げな西条さん。
左手には小さな紙袋。
それを私は、何も言えずただ握るしか出来なかった。

『…ありがとう…〃』

『いいえっ。』

だけど、このお方の、破天荒振りはこれでは収まらなかった。

それは、せめてもの御礼とホームまで見送ると言った私。

…そのホームで起きた。

⏰:09/08/15 04:03 📱:W65T 🆔:MIdAGCFQ


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