微妙な10センチ。〜最終〜
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#380 [あき]
電話口で泣き出す私に、彼は更に怒りを増した。
《もういいって何だよ!!何が言いたいっ!!はっきり言えよっ!!》
怖くて言えない。
ただ涙が溢れ出た。
『……もういいって…西条さん、怒るばっかりで私の話聞いてくれない…私を認めてはくれない…私を信じてはくれない…もう、そんなの嫌だ…』
泣きながら必死に伝えた私の意志は、彼には伝わらなかった。
《当たり前だろっ!!約束を破られて、何を信じろって言うんだよっ!!!》
:09/08/26 23:59
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#381 [あき]
『……だから、西条さんと私は合わないと思う…こんなんじゃ、付き合えない…』
必死の思いでそう言った私の言葉に彼は怒りを爆発させた。
爆発と同時に思わぬ所へ矛先が向けられたのだ。
それが、毎夜毎夜傷付け合う原因だったのだ。
彼の言葉に私は初めて言葉を失った。
《結局、未練があんだろっ!!その男に!!!》
:09/08/27 00:08
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#382 [あき]
『未練って…そんな事思ってたの…?』
《…あきは、俺には何も言ってくれないだろ…。俺が何を言おうが、何をしようが、何も言わない。》
『それは、あなたを信じてるからっ!!だから…』
《違うよっ。興味が無いんだよ。…だから、好きも、会いたいも…言ってくれないんだよ。一度も言ってくれてない…。そんな俺の気持ちわかるか?》
西条さんの、怒りの裏に言いようのない淋しさを感じた。
言葉が出なかった。
:09/08/27 00:15
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#383 [あき]
『……』
《頭では、わかってんだよ。
その彼の事忘れられてないって事は。》
『……』
《だけど、あきが、俺を好きでいてくれてるって確信があれば、俺は何も言わない。
なのに、それすらないんだ。
不安になるだろ…
怒りたくもなるだろ…》
『……』
《いつもあきの傍にいるのは俺じゃない。その彼だ。
俺は、会いたい時にすぐには会えないんだ。こうやって声を聞くのが精一杯なんだよ。
それなのに、それすら、あきは、俺にくれない…。そんなんじゃ俺、勝てないじゃん…》
:09/08/27 00:24
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#384 [あき]
『…ごめん…』
やっとの思いで出た言葉は、やっぱりこの三文字だった。
彼の怒りにばかり、不満を抱き、苦痛を覚えた日々。
彼と言い合いをする度に傷付き、怯えた。
だけど
私の数百倍も、彼は傷付き。
私の数百倍も、彼は怯えていたんだ。
『…もう会ってないし、連絡も取ってないから。』
彼には気休めの言葉に過ぎないけれど、それしか今の私には言えなかった。
:09/08/27 00:32
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#385 [あき]
《…でも…今すぐには忘れられないのは仕方ないよ。
だってずっと好きだったんだよ…好きで、好きで、たまらない人だった。
だから、何年もずっと傍にいたし、彼も、いつも傍にいてくれた。
そんな関係だったから…
だから、すぐには忘れられないよ…
でも、私は、貴方を選んだの。
それだけはわかって欲しい…》
自分の想いを初めて口に出来たと思えた。彼に、伝わって欲しいと願いながら、必死に伝えた。
けれど、彼は言った。
《ほらな、俺には言ってくれない言葉を彼には言うんだ!!好きだって。俺に向かって、何度も何度もっ!!俺の気持ちなんて、これっぽっちも考えてない証拠だろっ!!そんなに好きなら、俺は身を引くよっ!!俺はそいつには勝てない!!!》
:09/08/27 00:44
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#386 [あき]
『…勝とうとは思ってくれないんだ…』
悲しくなった。
私は強く引っ張って欲しいだけなのに。
その手を握って、離さないでいて欲しいだけなのに。
《…それを俺に求めるのは、間違ってるとは思わないのか?》
:09/08/27 00:47
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#387 [あき]
《俺はいつでも、手を伸ばしてるよ。なのに、あきは、それに掴まってくれない。なのに、どう勝負しろって言うんだよ…。》
彼の淋しい声に私はまた涙が溢れた。
『届かないよ…。
私は一生懸命伸ばしてるのに、西条さんの手。遠いもん…
なのに、こっちに来いばっかりで…
彼が、背中を引っ張るんだから、西条さんの手に届かないんだよ…。もう少し伸ばしてよ…。
掴みたいの…。』
:09/08/27 00:55
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#388 [あき]
《…俺には無理だ。
これ以上は、伸ばせない。
俺はあきが好きだったよ。》
この夜。
私達の付き合いに、終止符が打たれた。
あの二度目の再会から、たった数ヶ月だった。
彼の、最後の言葉だけが胸に響く。
私は、自分の意志の弱さから
なおちゃんも、西条さんも失った。
二兎追う者は一兎も得ず。
昔の人は巧いこと言うもんだ。
自分の馬鹿さ加減にほとほと吐き気がした夜だった。
:09/08/27 01:03
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#389 [あき]
また、面白みのない生活が始まる。毎朝早朝に起きて、深夜まで働く。一時は干された仕事。私達の終演と共に、職場でも人の噂は七十五日。噂が消沈したのか、はたまた、やはり若手には難しかったのか、少しづつ私の手元に仕事が戻ってきた。私は、また言われるように、言われるがまま、夢中で働いた。あれ以来、彼からの連絡は無かった。私は、一時、淡い夢を見ただけだと、そう自分に言い聞かす。仕事をしていると、時々耳にする、彼がいる地方の出張話。ドキンと胸が鳴った。何食わぬ顔をして、資料を盗み見する。そこには、変わらず、提携先として彼の社名が記載されていた。けれど、そんな噂を立ててしまった私には関係のない出張話で。勿論、立候補する勇気も無かった。彼と出会う前の日常に戻っただけの話。
:09/08/27 01:22
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