微妙な10センチ。〜最終〜
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#420 [あき]
《あきが嫌だって言ったんだろ?だから、変わってもらった。》


『言ってない…』


《仕方ないって言っただろ?》

『それは……』


《だろ?なのに何、責められなきゃならん…?》

『だから……』



何も言えなかった。

⏰:09/09/08 01:39 📱:W64S 🆔:YinlIU3I


#421 [あき]
『…せっかく来たのに…明日帰るよ?』


可愛げない言葉で、私は伝える。
本当は、また会えて嬉しかった。
本当は、また一緒にしたかった。
少なからず。
私はそう思った。
なのに。
あの時、言葉はその思いとは裏腹に、彼を撥ね付けた。
だから、彼は変わった。もう会わないつもりで、変わった。
悲しかった。
私なりの精一杯の言葉で、そう伝える。

⏰:09/09/08 03:46 📱:W64S 🆔:YinlIU3I


#422 [あき]
《…俺達は終わったんだよな?》

電話口、囁くように言った西条さんの声が、頭に響く。

そうだった。
私は彼に何を求めてたんだろう。
何を期待していたんだろう。
彼の愛に耐えられず。
別れを切り出したのは私なのに。
自分勝手な奴―…

『そだねっ…〃じゃぁ!』

⏰:09/09/15 02:04 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#423 [あき]
《…じゃぁ。気をつけて帰れよ。》

『うん。バイバイ!』

見えるはずもないのに微笑み通話終了ボタンを押す。
無機質な機械音が鼓膜を震わせた。
そのまま携帯電話をテーブルに置いて、散らかしたままの資料をガサガサと集めて、鞄に入れた。
何だか、何もする気分になれなかった。
小さなバスルームでシャワーを浴びて、整えられたベッドに潜り込む。
電気を消して、暗闇の中目を閉じた。
胸がキュッと痛かった。

⏰:09/09/15 02:11 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#424 [あき]

――

翌朝、まだ目覚めぬ朝に目が冷める。
今日あの、おじさんは、とんでもない時間に私を迎えに来ると言った。

《では、7時45分に迎えに来ます。》
《…早くないですかっ?》
《念のためですよ!》

どんなに自信が無いんだよ。と突っ込みたい所をグッと我慢した。

《じゃ、9時に迎えに来ますから》
《はーいっ。》

そんな会話をふと思い出す。
仕事のパートナーである彼は、本当に頼りになった。
遅くスタートしても、必ず時間通りに事が進み必ずの結果を出してくれた。
改めて頼りっぱなしだった自分に笑える。

⏰:09/09/15 02:25 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#425 [あき]
ベッドから起き上がると、頭がガンガンと脈打っていた。
また最悪の目覚め。

いつもの偏頭痛。

カーテンを開けると青白い空にどんよりとした厚い雲がかかっていた。

(…やっぱり天気悪いんだ…)

昔々の後遺症は、私をお天気お姉さんに変えた。
ガンガンと響くこめかみと、じんじん疼く右腕。
この季節は本当につらい。

本当に辛かった。

⏰:09/09/15 02:32 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#426 [あき]
ニコリと微笑み、おじさんパートナーと挨拶を交わして、淡々と時間だけが流れる。
昼前に本降りになった雨は、いっこうに上がる気配はなかった。
相変わらずの冷房車内は雨に濡れた体を、より冷たく感じ、益々、頭痛は酷くなった。
いっこうに効かない鎮痛剤。
途中何度も何度も飲んだ。

『昼飯どうしますか?』

『ああっ。食欲ないんで…〃』

『そうですかぁ。』

『気にせず、召し上がって下さい〃』

⏰:09/09/15 02:45 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#427 [あき]
『じゃ、遠慮なく…』

『どうぞ〃』

どこかの小さな駐車場に車は入った。
狭い車内で、おじさんは愛妻弁当を広げる。
その匂いが私の胸を焼き、冷えた体がブルッと震えた。
軽く言葉を交わして、車を離れ、目に入った自動販売機の元へ走り寄る。
この季節、自動販売機にホットと記された飲み物は見当たらない。
諦めてミネラルウォーターのボタンを押して、ガタンと音を立てて落ちてきたそれを手に取った。
雨が降りしきっていた。

『外の方が暖かい…』

⏰:09/09/15 02:55 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#428 [あき]
『そりゃ、出世しないわ…〃』

ミネラルウォーターを一口飲んで、一息つく。狭苦しい車内で、愛妻弁当をがっつくおじさんを遠巻きに見つめ、思わず呟いた。

決して、現場主義者とは思えない。
あの年代なら、勤続年数数十年だろうに。

くだらない会話は弾むくせに、肝心な所では、つまづいてしまう。
…上がり性。
降りしきる雨、車の停車位置さえ考えれば、濡れずに済んだ場所はいくらでもあった。
…視野と判断が甘い。

濡れた体に、いっこうに緩まない車内冷房温度。
…配慮に欠ける。

可哀想だが、出世出来ない原因、全てが、おじさんの一連の行動で物語っていた。

⏰:09/09/15 03:16 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


#429 [あき]
(とまぁ、そんな事はさて置き…〃)

煙草を数本吸い終わる頃に、おじさんの、愛妻弁当を片付け始める姿が見えた。
煙草をじゅっと灰皿に入れて、また走って車内に戻る。
助手席に座ると、爪楊枝で歯の手入れをしながら、おじさんは言った。

『飯、食わんのですか?』

『はい〃体調が悪くて〃』

『そりゃいかんなぁ。風邪か?』

『どうでしょ〃』

あんたのせいだよっ!
と突っ込みたくなった…。

⏰:09/09/15 03:25 📱:W64S 🆔:QiLm6EsI


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