微妙な10センチ。〜最終〜
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#71 [あき]
『今日もお疲れ様でした。有難うございました〃』

車を降りる時、そう言った私に、運転席に座る西条さんは、にこりと笑って言った。

『携帯聞いてていいですか?』

初日に交換した私の名刺には、携帯までは印刷されていない。
個人情報保護法なんちゃらというやつのおかげらしい。
確かに、あと4日も一緒に組むのだから、彼の判断は的確。いつかは必要になるだろう。
私は、ポケットから携帯を取り出して、じゃ、鳴らしますねと笑って言った。

⏰:09/07/12 19:55 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#72 [あき]
彼の携帯が短く鳴って、頂きました。と笑って言ったのを確認すると、私はまた、携帯をポケットにしまう。

『じゃ、明日も9時に迎えに来ます。』

『はい。宜しくお願いします〃』

走り去る車に、私は手を振って、フロントから鍵を受け取ると、また狭苦しい部屋に入った。

ポケットの携帯電話を、テーブルに置いて、重すぎる鞄を椅子に置いて。
ジャケットを脱いで…

バックから、もう一つの携帯を取り出した。
マナーモードを解除しつつ、そのまま、ベッドに転がって、しばらく睨めっこしてみた。念力すら込めてみる。
しばらくして、バカバカしくなって…
今夜も諦めた。
そして、あの夜からずっと。こうやって、心のどこかで、待ってる自分が、悲しくなった。

⏰:09/07/12 20:12 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#73 [あき]
走り去る車に、私は手を振って、フロントから鍵を受け取ると、また狭苦しい部屋に入る。

ポケットの携帯電話を、テーブルに置いて、マナーモードに設定する。

重すぎる鞄を椅子に置いて。堅苦しいスーツを脱いで。さっと持参した部屋着に着替える。
パチンとテレビを点けて、タバコを一本吸って。

今日もお疲れ様。

と自分を労ってあげる。

そして…

バックから、もう一つの携帯を取り出した。

⏰:09/07/12 20:16 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#74 [あき]
マナーモードを解除して、確認していく。
この時間が、一番至福の瞬間で、開放感に溢れる瞬間だった。
記された内容に、一件一件、返事をしながら、私自身の時間を楽しむ時間なのだ。

だけど最近は違う。

確認だけして、そのまま閉じる。返事する気分になれないのだ。
そして、ベッドに転がって携帯電話を見つめる。
なんなら少し念力まで送ってみる。

そして、諦める…

あの夜からずっと。
こんな事を繰り返す自分。心のどこかでは待ってる自分。
そんな自分に悲しくなる時間だった。

⏰:09/07/12 20:26 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#75 [あき]
すると、テーブルに置いたマナーモードの携帯が、ブルブル震えた。
テーブルの上で震えるもんだから、不愉快極まりない異音を奏でている。
時計を見ると、19時30分を過ぎた頃。
ほんの30分前に、今日1日を終えた所なのに。
肩の荷物を下ろした所なのに。
こんな時、仕事関係者しかしらないこの携帯が震えるのは、ほんとに嫌だ。
だけど、無視を出来ないのが、また、仕事用携帯電話の特性だった。
私は仕方なくベッドから起き上がり、手に取った。画面を確認してみる。

⏰:09/07/12 20:35 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#76 [あき]
―ピッ
『はい。○×です』(※名字)

11文字の数字が並ぶ相手に私は返事をする。

《お疲れ様です。西条です》

『ああっ!!お疲れ様でした〃』

しまった。
登録忘れてた〃
警戒むき出しで、出てしまったジャマイカ。
しかも、ああっ!とか言っちゃったし。
登録してない事、バレバレだし。
やる気あるのかって感じだしっ。


なんて、一人アタフタしてしまった。

⏰:09/07/12 20:48 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#77 [あき]
『どうされました?〃何か変更ですか?』

無礼を取り繕うように、務めて明るい声を出して仕事モードに切り替えてみた。

《いえ。今の所はありません。飯、食いました?》

この無礼がバレてないのか、彼は、さらりと、わけの分からない質問。

『へ?いや…まだですけど。』

突然の質問に、私は、思わず答えていた。


なんて素直なお馬鹿ちゃんなんだろう。

⏰:09/07/12 20:58 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#78 [あき]
《飯、ちゃんと食って下さいね!一応、業務連絡でした。》

『はぁ…わかりました。』

《あと、俺の番号は、せめて、この一週間位は登録しといて下さい〃》

『はっ…はい!〃ごめんなさいっ!』

《じゃ、お疲れ様でした。》
―プッ…プーップーッ…

ご飯を食べたか否かの確認業務?初めて経験する業務連絡電話は30秒で切れた。挙げ句にきっちり嫌み?だけを残されて?
西条 祐介。
恐るべし。

後々、この西条祐介は、もっと、驚くべきすご業を持ってくるが、それはもう少し後の話になる。

⏰:09/07/12 21:06 📱:W65T 🆔:6jrEfyzs


#79 [我輩は匿名である]
あげ(*^Д^)

⏰:09/07/17 07:36 📱:P904i 🆔:oIL4B.q.


#80 [あき]
匿名さん。ありがたいです!
―”

三日目の朝も、彼は同じ時間にロビーに現れた。
昨日とは違うシャツで、違う香水で。私を迎えに来た。挨拶を交わして、ホテルを出発。しばらく走ると彼は言った。

『晩飯はちゃんと食べましたか?』

昨日の業務連絡の結果報告か?

『はぁ〃一応。食事取りましたよっ。』

軽くかわす。
本当に一応だった。
ビジネスホテルは基本食事は自由。ホテルにあるレストランで食べてもいいけれど。
なんだか、そんな気分にもなれず。
私は近くのコンビニで、サンドイッチを買った。
それを、一人、狭苦しい部屋でもそもそと食べたのみだった。

⏰:09/07/18 20:19 📱:W65T 🆔:DTqTo6g6


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