微妙な10センチ。〜最終〜
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#731 [あき]
西条さんとは相変わらずの関係を続けていて。

なおちゃんとも、相変わらずで―…


だけど、考えたって何も解決しない事は明確で。
もはや私には、どちらも煩わしくて、どうでも良くなっていた。

ただ、日々
流されるがまま過ぎていて。

淡々と過ぎていた。

⏰:09/11/16 21:50 📱:W64S 🆔:u8G2/lLk


#732 [あき]
――――――――

何気無い昼下り。
簡単にコンビニおにぎりで昼食を済ませ、いつもと変わらず、与えられた書類に目を通し、与えられた仕事に取りかかる。
ふとデスクの横、コピー機の前に立つ後輩の蒼白い顔が気になった。

『大丈夫?顔色悪いよ?』

声をかけてみる。
後輩は、そんな私の声に昔からひどくて。と小さな声で苦笑いをした。

ああ。あれか。

『鎮痛剤あるよ?飲む?』

そう言ってデスクの引き出しからポーチに入れた錠剤を差し出した。後輩は、助かりますと苦笑いをして一錠受け取ると、給湯室に向かったのだろう。うねりをあげるコピー機をそのままに、私の前から立ち去った。

⏰:09/11/17 01:47 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#733 [あき]
(生理痛ねぇ…〃)

そんな後輩の背中を見送り、可哀想にと少し肩をすくめ、再びデスクに戻り、書類に向かう。ボールペンを握り、はたと手が止まった。

……
………

視線をデスクの隅。
毎年、出入り業者に貰い、強制的に配布される可愛げも何もない無機質な月めくりカレンダーに移す。

……
………

⏰:09/11/17 01:56 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#734 [あき]
引き出しを開け、スケジュール帳を開いた。

がさつな性格の私でも、何故か昔からこれだけは欠かさない。
日々のスケジュールは勿論の事、何らかしらの形で、日々の生活を記してきていた。
感想であったりメモであったり…
一冊のノートには、私の日々が記されている。
ペラペラとめくり、目的の文字を探す。
今月はまだ、目的のものを見つけられない。
ページをめくって、先月、先々月の自身のスケジュールを確認する。やはり先月、先々月もまた、目的のメモ書きは見つけられなかった。やっと見つけた目的の文字が最後に記されていたのは…

三ヶ月も前だった。

⏰:09/11/17 02:12 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#735 [あき]
(………)

三ヶ月前には、ハッキリと日付にはマル印、その数日後には、バツ印がついている。
これもまた私の昔からの癖で、私だけの決まった印。

その文字(印)が、三ヶ月前を最後に、今まで記されていない。
スケジュール帳をパタリと閉じて、静かに引き出しに収める。
再びカレンダーを見つめ、今月も、あともう少しで終わる頃だと改めて気付いた。

心臓がバクンと鳴り、ドキンドキンと脈を打った。

⏰:09/11/17 02:24 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#736 [あき]
―――――――

感じた事のない恐怖。
物音ひとつしない冷めた部屋のソファー、暗闇の中、ただ、ただ体を抱える。外はザーザーと本降りの音がしていた。

『…まさか…』

本能なのか、潜在意識の中にあった憧れなのか、自然と手がお腹に伸びる。

『…はは…まさかぁ〃無理だしっ!』

意識が拒絶し、伸ばした手をハラハラと振り払い、意識を多量に飲み干し続けた錠剤を見つめる。

『……いや、こっちでもマズイよね…』

⏰:09/11/17 22:41 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#737 [あき]
黒い闇に悪魔の声が聞こえる。その声に一瞬心が揺れた。揺れてそして。

『……最低…』

そう呟き、涙が溢れた。情けなくて悔しくて涙が止まらなかった。
この言葉は誰に向けられた言葉でもない。

(今までこんなに薬を飲んでんだから…飲み続ければ大丈夫…)

悪魔の…いや私自身の声が聞こえ、それに頷いたのも、また私自身。
おぞましい私自身
に向けた言葉だった。

⏰:09/11/17 22:53 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#738 [あき]
頭を抱え、溢れる涙をそのままに、ただひたすら言葉を吐き続けた。
今はただ、そうするしか出来なかった。

『ごめんなさい…
ごめんなさい…』

本当は
気付いてた―…


あの時あの瞬間から。
起きるかもしれない奇跡に、覚悟をした筈なのに。

私は…
私という人間は…

⏰:09/11/17 23:19 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#739 [あき]
湧き出る感情は。

歓び

でも

希望でも

なく―…


恐怖。

であるという事が。

どうゆう意味なのか。

⏰:09/11/17 23:20 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


#740 [あき]
そして今、現実になるかもしれないと思えば思う程。私は恐怖に怯えた。

それは
間違いなく。
その小さな奇跡を起こそうとした彼の想いへの裏切りだという事に。

『ごめんなさい…
ごめんなさい…』

起きているのかもしれない0.1パーセントの奇跡を、瞬時に自分の保身の為だけに消そうとした事に。

『ごめんなさい…
ごめんなさい…』

⏰:09/11/17 23:30 📱:W64S 🆔:hcsGFdM6


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