微妙な10センチ。〜最終〜
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#80 [あき]
匿名さん。ありがたいです!
―”
三日目の朝も、彼は同じ時間にロビーに現れた。
昨日とは違うシャツで、違う香水で。私を迎えに来た。挨拶を交わして、ホテルを出発。しばらく走ると彼は言った。
『晩飯はちゃんと食べましたか?』
昨日の業務連絡の結果報告か?
『はぁ〃一応。食事取りましたよっ。』
軽くかわす。
本当に一応だった。
ビジネスホテルは基本食事は自由。ホテルにあるレストランで食べてもいいけれど。
なんだか、そんな気分にもなれず。
私は近くのコンビニで、サンドイッチを買った。
それを、一人、狭苦しい部屋でもそもそと食べたのみだった。
:09/07/18 20:19
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:DTqTo6g6
#81 [あき]
『その反応は、まさかお菓子ですか?』
悪戯な笑みで、確認業務は続く。
『まさか〃』
若干、見抜かれたようなバツの悪さに私ははははと笑った。
『そうですか。飯はちゃんと食って下さいね。』
彼は前を見つめながら、そう言った。
『はぁ。〃』
私はそんなに、痩せてるのか?
いやいや、んな訳ない。
そんなに、やつれてるのか?いやいや…まさか。
相変わらずの中肉中背。
どちらかと言えば、小豚ちゃん体型寄り。
彼が私の食に、そんなに、こだわるのか、サッパリ掴めなかった。
:09/07/18 20:27
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:DTqTo6g6
#82 [あき]
三日目も、特に何かトラブルがある訳でもなく、何か特別な事があるわけでもなく。私達は、そつなく進めていく。
途中、定食屋さんで、昼食となった。
ワンコインシステムらしい、そこは、サラリーマンやOL達で溢れ返っていた。せわしなく、動き回る、おばさま達を全く気にしないで、相変わらず、焼き魚定食にご飯大盛を吸い込んでいくブラックホール。
その横で、ざるうどんを、すすった。
午後からは、会議を済ませて、打ち合わせの梯子をして。
いい加減、ウンザリ、グッタリだ!と言いたい頃に、私はやっと解放された。
:09/07/18 20:34
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:DTqTo6g6
#83 [あき]
『今日も、お疲れした。〃』
『お疲れ様した。』
『まだまだ長いですよねぇ。いい加減疲れてきたぁ!〃』
『確かにねぇ〃明日も、また同じ時間に来るから。ちゃんと起きてよ。』
『はいはい!!〃』
三日目にもなると、私と西条さんの間にも、妙な馴れ合い感が出てくる。
移動中は、かなり雑談も増えた。
初日は、ぺこりと頭を下げて、お疲れ様でした。と挨拶した事も、三日目にもなると、お疲れした。となり、笑顔で手をあげる。
はいと返事する事も、はいはいとなる。
西条さんに至っては、完全なるタメ口。
いや、立場的には私の方が強しでも、年齢は彼の方が年上なので、致し方ない現象だけどね。
彼は、手を振る私に、プッとクラクションを鳴らして、ホテルを後にした。
:09/07/18 20:54
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#84 [あき]
出張、三日目のこの夜。
私達の間に、事件が起きた。
私は相変わらず、電波が悪い部屋で、膨大な書類と挌闘していた。
今日、終えた仕事。
明日、やらなければいけない仕事。
それを、相変わらず、機械に弱い私は、ボールペンを握りしめながら作成していく。
押し付けられた、この一週間の仕事。
に、ほとほとウンザリしながら。
:09/07/18 21:06
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:DTqTo6g6
#85 [あき]
ふと考えるのは、やっぱり、なおちゃんの事。
時計を見ると、20時を過ぎた頃。今なら、21時からのバイトに向けて、車を走らせている時間。
鞄から携帯を取り出して。短縮番号ゼロー…
《んー?》
やる気も、愛想もない返事。
久しぶりの声。
私の大好きで
大切な声。
その声は、耳から伝わって、全身を駆け巡った。
:09/07/19 00:15
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:uu9YQiaQ
#86 [あき]
『わたしっ!〃』
思わず、声が上擦る。
そんな私に、彼はうんと返事をした。
『何してた?』
平然を装い、書類の散らばった小さなテーブルから、部屋の隅に置かれた小さな椅子に座る。
《とくに。何?》
『え…別に…』
昔は暇なら、何時間も電話した。
その相手から、こんな質問を投げかけられるとは思いもしなかった。
:09/07/19 00:22
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:uu9YQiaQ
#87 [あき]
《なら切るぞ。なんか電波悪いし。何言ってっかわかんねー。》
とっさに、画面を確認すると、電波記がたった一本、せわしなく、点いたり消えたりしていた。
『ちょ…待ってよ!!今ね、仕事で○○にいるの。一週間だって。本当に最悪。しかも、このホテル電波悪くて〃』
それでも必死に話を繋げようとした。
そうかって笑って欲しかった。
お疲れ様って言って欲しかった。
この、疲れきった、体も精神も。
なおちゃんの、たった短いその言葉だけで。
百倍も元気になれた。
:09/07/19 00:33
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:uu9YQiaQ
#88 [あき]
なのに、彼は思わぬ言葉を吐いて私のこの気持ちを、グシャリと握る。
《ふーん。まだ、利用されてんのかよ。いい加減辞めればいいのに》
あんなにも、応援してくれたのに。
試験に受かった時は、良かったなって言ってくれたのに。
毎日毎日奮闘する私に頑張ってるなって言ってくれたのに。
今は、利用…ですか。
二言目には辞めろ…ですか。
私が、こんなにも大切にしてきた仕事を。
踏ん張ってきた仕事を。
ここまで来た仕事を。
彼は
簡単に片付けた。
:09/07/19 11:30
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:uu9YQiaQ
#89 [あき]
『…利用…ね…〃ほんと、そうかもね〜。あたしも疲れちゃったし…』
返す言葉が無かった。
だけど、彼と繋がっていたかった。
どんな言葉でもいい。
彼の声を聞いていたかった。
少し弱音を吐いてみた。
それは、たった一言。
頑張れよって言って欲しかっただけ。
《…ん?何?電波悪いんだよっ!!また電波良くなったら、かけてきて。イライラするわ。》
:09/07/19 11:36
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