微妙な10センチ。〜最終〜
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#806 [あき]
部屋を出て、静まり返った古びた階段に座り、西条さんに語る。

『…そだね。
その彼にも、いっつも怒られてるけどさ…
それでも、いつも私の言葉を聞いてくれたし、信じてくれてた。
でも、そうゆうのって言葉じゃないのね?
なんてゆうか…相手を認めてるか、認めてないかって事で。
それって、距離とか時間とか…関係ないんだよね。たぶん。〃』

私となおちゃんの間には、そんなもの関係なかった。時間も距離も…何も関係なかった。
ただ、相手を思いやるそれだけだった。
私と西条さんが築けなかったもの。

⏰:09/12/14 04:02 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#807 [あき]
《…その彼がやっぱり好き?》

『…好きかって聞かれたら、そうだけど、もう、私達の間には、そんなもの必要ないの。男とか女とか〃そんなんじゃなくなってるから。』

《…それが、理解できないんだよ。
男にしたら、そんな相手がいる彼女なんてたまんないよ?
これは、俺だけじゃないと思うよ?
たぶん、これからも、あきと、その彼の関係は、誰も理解できないんじゃないかな?》


『…そーだろうね〃
だから、これから先、私は、恋愛出来ないかもねっ〃つくづく思ったよ。』

⏰:09/12/14 04:09 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#808 [あき]
《それでもいいんだ?》

『…仕方ないと思ってる。私には、なおちゃん…彼の存在が大切なの。好きとか、そうゆうの抜きにして?私という人間に、彼という人間が必要なの。彼との関係は、壊されたくないし。壊したくない。』

《あきの、その気持ちは、やっぱりわかんないや〃》

『だろぉねーっ〃』


久しぶりに、西条さんの笑った声を聞いたような気がした。

暖かくて、優しくて。
初めて出会った頃の。
あの、じめじめした蒸し暑い空気の中で、フワリと靡いた優しい風のような声だった。

⏰:09/12/14 04:17 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#809 [あき]
《じゃぁ、そいつと結婚しちゃえよっ!なら、俺も諦めつくからっ!》

『あはは〃やめてよ〃もう無理だわっ!!〃』

そう笑った私に、西条さんは、最後の優しさを見せた。

《…したいんだろ?
他の誰でもなくて、その彼と。本当は、ずっと忘れてないんだろ?》

ドキンと胸が鳴った。
ズキンと胸が痛くなった。
電話を握る手が熱くなっていた。

⏰:09/12/14 04:21 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#810 [あき]
『それはもう、いいの〃』

諦めなんかじゃなくて。これが私の心の言葉だった。
一度は夢みたそれを、手放したのは自分。
もう、望まないし。
期待もしない。
そう決めた。

《へ−…いいんだ。》

そんな私の答えに、西条さんは、驚いたように言った。
私は、ふふふと笑うと、いいんだよと、答える。
そして誰にも言った事のない、密かな夢を言った。
西条さんへの、最後の言葉。

⏰:09/12/14 04:42 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#811 [あき]
『この先、彼が、誰とどんな人生歩くのかはわからないけど…
繋がってられたら、それでいいんだ。
もしね〃
もし!叶うなら!!
そうやって私か彼。
どっちかが人生を終える時に。それが、例えば一時間前でも三十分前でもいいから…一瞬でも、彼の奥さんなれたら…ラッキーって。
そうなればいいなって〃今は本気でそう思えてるの〃
もちろん、彼には言ってないけどね!』

私のこの言葉に、西条さんは、苦笑いをして、そうかと呟いた。

⏰:09/12/14 05:31 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#812 [あき]
そして、最後に、西条さんは言った。

《あきの気持ちは、よく分かった。でもな…
俺も、あきにそう思ってる。俺にとってのあきも、いつか一緒にいられたら、それでいいって思える相手になってるんだよな〃
だから、もう邪魔はしないけど、待ってるから。〃その彼…なおちゃん…だっけ?に振られた時は、いつでもこっちにおいで。》

その言葉に、また涙が込み上げてくる。

『もう、散々、コテンパン、めった刺しで振られまくってます〃』

明るく答えた私に、西条さんは、それも同じだと笑っていた。
じゃあと電話を切ったそれ以降。西条さんからの連絡は、プツリと途絶えた―…

⏰:09/12/14 05:45 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#813 [あき]
――――――――

懐かしい匂いのする静かな木段から立ち上がり、再びドアを開ける。彼はベッドに座り、愛用のギターを抱えていた。

『終わりっ!』

『あっそ。』

ポロリンと奏でられる音楽が、また懐かしさを呼び覚ます。
そのメロディに耳を傾けながら、私はソファーに腰を沈めた。

西条さんに告げた最後の告白。これから先、一生誰に話す事もない私の儚くて淡い夢は
目の前のギターを抱え、くわえ煙草でメロディを奏でる愛しい顔に重ねて。
消えた―…

⏰:09/12/14 21:00 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#814 [あき]
―――――

『私ね?』

『ん?』

『…好き。』

『は?』

『なおちゃんのギター…』

『…そう。』

『これからもずっと聞かせてね。』

『おぉ。』

―――――――――

⏰:09/12/14 21:12 📱:W64S 🆔:Xa3EAJMk


#815 [我輩は匿名である]
切なくて
歯痒くて

泣けるー(:_;)

⏰:09/12/16 15:12 📱:SH906iTV 🆔:2LqcTIZQ


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