$ 貢ぎちゃん「ユリサ」 $
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#1 [りぃ]
――ユリサ19歳、夏――
大好きなあの人が望むなら
どれだけでも貢ごう
そう決めたのは
誰にも負けたくなかったから。
彼にとって1番の女になって
優越感に浸りたかったの。
:09/07/10 12:27
:P905i
:2CS068IU
#2 [りぃ]
送信者:じゅんくん
件名:無題
本文:
お金があるときに連絡ちょーだい。
―END―
…またか。
このお決まりのメールが
くるようになったのは
いつ頃からだっけ。
彼が変わってしまったのか。
それとも私が彼を
変えてしまったのか。
:09/07/10 12:38
:P905i
:2CS068IU
#3 [りぃ]
始まりは18歳の冬。
中学の時からの親友・萌に
無理矢理誘われて、
よく知らないバンドの
ライブに行くことになった。
:09/07/10 12:44
:P905i
:2CS068IU
#4 [りぃ]
「はい、これユリサのチケ。」
ライブハウスの前で
萌から渡されたチケットに
目を落とすと、出演の欄には
複数のバンドの名前が
連なっていた。
「今日はイベントライブだから
本命の出番まで暇だな〜」
そう呟きながら萌は
ライブハウスがある地下への
階段を降りていく。
:09/07/10 12:52
:P905i
:2CS068IU
#5 [りぃ]
よくわからないまま
萌の後をついていくと、
地下にはライブハウスの
入り口があり、そのドアに
張ってあるフライヤーが
ふと目についた。
「萌、今日のライブって
もしかしてこれ…?」
フライヤーを指差しながら
萌に尋ねると、当然のように
萌は笑顔で頷いた。
「うん!楽しいよ〜」
:09/07/10 12:58
:P905i
:2CS068IU
#6 [りぃ]
そのフライヤーに載っていた人達は
目を疑うような派手な髪型で、
よくわからない化粧をして
着てるのは奇抜な衣装…
「…ヴィジュアル系っ?!」
:09/07/10 13:03
:P905i
:2CS068IU
#7 [りぃ]
「うん、そうだけど?
もう始まってるから
とりあえず入るよ!」
萌がわたしの腕を掴んで
ドアを開けるのと同時に
中から爆音が響いてきた。
「なにこれっ!!」
私は状況をひとつも飲み込めないまま
萌に引っ張られて
フロア真ん中辺りに入り込んだ。
:09/07/10 13:09
:P905i
:2CS068IU
#8 [りぃ]
ステージには、さっきの
フライヤーで見たような
奇抜な人達がいて、
動き回って飛び跳ねたり
頭を振り回したり、
奇妙な光景が広がっていた。
初めて見るヴィジュアル系の
ライブに衝撃を受けて
ぽかーんとしてるうちに
演奏が終わり、メンバーが
ステージ脇へ捌けていく。
:09/07/10 13:20
:P905i
:2CS068IU
#9 [りぃ]
「あ、最前空いた!行こう」
バンドが変わるたびに
お客さんも移動するらしく、
最前列にいたお客さんが
抜けていくのを萌が見つけ
とっさに私の腕をつかみ
またぐいぐいと引っ張っていく。
:09/07/10 13:30
:P905i
:2CS068IU
#10 [りぃ]
「やっぱりライブは最前で見ないとね〜♪
バンド転換の10分の間、
ご機嫌な萌と喋ってると
次のバンドの出番になった。
メンバーの最初の1人が
ステージに出てきた瞬間、
「きた!これが本命なのっ」
萌が嬉しそうに私に言った。
:09/07/10 13:43
:P905i
:2CS068IU
#11 [りぃ]
ちょうど私たちの目の前の立ち位置にきたボーカルの人に
萌が嬉しそうに手を振ると
ボーカルの人も萌に笑顔を返した。
そんなやり取りの後、
演奏中の曲を楽しげに
口ずさむ萌をみて、
私はほっこりした気持ちになって
視線をステージに戻した。
:09/07/10 17:26
:P905i
:2CS068IU
#12 [りぃ]
それにしても
すごいライブだなあ〜
あの人の衣装すごい!
脚が綺麗〜
そんなことをあれこれ考えながらも
ステージから一瞬も目が離せず、
どんどん引き込まれていくのを感じた。
:09/07/10 17:36
:P905i
:2CS068IU
#13 [りぃ]
「ユリサどうだった?」
ライブ後、会場を出るなり
萌がそう尋ねてきた。
「やー、なんてゆうかさ、
最初は衝撃だったけど
なんか…いいね!」
「え、ほんと?
きもいーとか無理ーとか
言われるかと思った。」
私の感想を聞いて萌は
意外そうな顔で答えた。
:09/07/10 21:08
:P905i
:2CS068IU
#14 [りぃ]
「あ。萌、それよりさ。」
私はずっと気になってる
ことがあって萌に聞いてみた。
「ライブ中、萌の好きな
ボーカルの人と萌って
結構意志疎通ってゆうか
仲良しな人みたいだったね!
なんかすごいじゃん」
:09/07/10 21:21
:P905i
:2CS068IU
#15 [りぃ]
私が興奮気味に尋ねると、
萌は得意げに答えた。
「あんなのは、このジャンルでは
結構普通のことだよ。
常連とかオキニの子は
メンバーから構ってもらえるの」
常連?オキニ?構う?
よくわからないでいると
萌は説明を続けた。
「メンバーの好きなタイプの子とか
可愛い子はオキニになれるんだよ。」
それを聞いて私はヴィジュアル系の
世界をちょっとだけ知り、
とてつもなく魅力を感じたのだ。
:09/07/10 21:31
:P905i
:2CS068IU
#16 [りぃ]
「萌はあのボーカルの人の
“オキニ”なの?」
私がそう尋ねると萌は
大爆笑しながら答えた。
「自分で自分のことオキニ
なんて言ってたら
痛い奴だと思われるじゃん!
私はオキニってわけじゃないけど
ライブに通いまくってるから
覚えてくれてるだけだよ。」
:09/07/10 21:37
:P905i
:2CS068IU
#17 [りぃ]
萌は謙遜してそう言ったけど
私は、萌はオキニなんだと
なんとなく感じた。
その日は自分の知らない世界に
入り込んだ気がして、
どきどきしてなかなか眠れなかった。
:09/07/10 21:39
:P905i
:2CS068IU
#18 [りぃ]
その日から、頭の中は
ライブのことでいっぱいになり、
また萌と一緒にライブに
行きたくてたまらなかった。
萌にそれを話すと
とても喜んでくれて、
ヴィジュアル系の裏事情などを
色々教え込んでくれた。
:09/07/10 21:42
:P905i
:2CS068IU
#19 [りぃ]
萌の話を聞けば聞くほど、
私はなんだか萌が
羨ましくなってきた。
あんなにお客さんが居る前で
大好きなメンバーに自分だけが
構われるってどんな気持ちなんだろう。
すごい優越感なんだろうなあ。
私もそんな風になってみたい!
:09/07/10 21:45
:P905i
:2CS068IU
#20 [りぃ]
:09/07/10 22:04
:P905i
:2CS068IU
#21 [りぃ]
萌と一緒にいろんなライブに
行くようになって数週間。
私にも気になるバンドができ、
気になるメンバーがいた。
そのバンドのことや
メンバーのことは全然
詳しくなかったけど、
なんとなく、これからも
見てみたい気になったのだ。
:09/07/10 22:15
:P905i
:2CS068IU
#22 [りぃ]
私は萌とライブに行くまで、
勝手なイメージで、
ヴィジュアル系のお客さんって
黒っぽい服を着て、目の周りが
真っ黒な激しい人とか
お人形みたいな人とか
そうゆう人ばっかりかと思ってた。
でも実際にライブで見てみて
意外だったのは、萌や私も
そうだけど、巻き髪お姉系とか
ギャルみたいな子とか
盛り盛り姫系の子とか
全然普通の子達も結構居て
私のヴィジュアル系のイメージとは
まったく違っていた。
:09/07/10 23:44
:P905i
:2CS068IU
#23 [りぃ]
私と萌は、普段はお互い
バイトをしながらの大学生。
そんなある日。
「ユリサユリサ!!」
学校に登校するなり、
先に来ていた萌が
元気よく私に駆け寄る。
:09/07/11 08:23
:P905i
:9vx8iWJQ
#24 [りぃ]
「ユリサが気になるって
言ってたJEWELって
バンドね、今度渋谷で
インストアやるんだって!」
萌は楽しげにそう言ったけど
私はよく意味がわからなかった。
:09/07/11 08:58
:P905i
:9vx8iWJQ
#25 [りぃ]
「インストアってなに?」
「だから、
インストアイベントだよ!」
「イベント??」
やっぱりわからない。
「だからー、メンバーのトークとか
握手会とかサイン会とか
あるじゃん!」
:09/07/11 09:00
:P905i
:9vx8iWJQ
#26 [りぃ]
握手?サイン?
私はそれを聞いて驚いた。
「え!メンバーと握手とか
できるってこと?!」
私がそう聞くと萌はもっと
驚いて答えた。
「ユリサそんなことも
知らないのー?
CD購入者が参加できる
イベントだよ。
新曲が出るたびにやるから
結構頻繁にあるんだよ。」
:09/07/11 09:05
:P905i
:9vx8iWJQ
#27 [りぃ]
そうなのかー…
わりと普通のことなんだ…
萌から聞く話は私の知らないこと
だらけで驚くばかりだった。
「だからユリサも大好きなじゅん君と
お喋りできちゃうよ〜♪
せっかくのチャンスだし
狙っちゃいなよ。」
萌がニヤリとけしかける。
:09/07/11 09:10
:P905i
:9vx8iWJQ
#28 [りぃ]
「え!喋れるの?!
狙うってなに?!
何話そう…♪」
「あははっ
早速行く気満々じゃんユリサ。
私も付き合うよインストア。
一緒に行こう!
じゅん君狙っちゃえー!」
:09/07/11 09:14
:P905i
:9vx8iWJQ
#29 [りぃ]
私がなんとなく萌に
遅れをとっていると
萌は続けて“狙う”
とゆう意味を説明してくれた。
「狙うってゆうのはね、
好きなメンバーに電話番号とか
渡して繋がっちゃうってことだよ。
向こうが気に入ってくれたら
連絡がくるの♪」
:09/07/11 09:19
:P905i
:9vx8iWJQ
#30 [りぃ]
「繋がるって付き合えるってこと?」
私がわくわくしながら萌に
そう聞くと、萌は冷静に答えた。
「繋がるのと付き合うのは
違うんだよ。
ファンから本カノには
なかなかなれる人は居ないの。
繋がってる女の子も何人か
いるかもしれないし、
その中の1人にしかなれないかも。
セフとかミツカノとか…」
:09/07/11 09:29
:P905i
:9vx8iWJQ
#31 [りぃ]
それを聞いて私は
なんとなく理解した。
バンドマンってやっぱり
日頃から女の子に囲まれてるし
繋がりの子がいっぱいいるんだ。
当たり前だよね。
一緒に寝れるだけでも幸せ
ってみんな思ってるんだろうな。
本カノになれないなら
いっぱい居る女の子達の中で
1番になればいいんじゃない?
私がそうなれたらすごいよね…
:09/07/11 09:37
:P905i
:9vx8iWJQ
#32 [りぃ]
「あれ?」
私が1人であれこれ考えていると、
さっき萌が話した中の一言が
ふと引っ掛かった。
“ミツカノ”って言ったっけ。
「ねえ萌、ミツカノって何?」
:09/07/11 09:41
:P905i
:9vx8iWJQ
#33 [りぃ]
「ああ。ミツカノってゆうのは
メンバーにお金とか物を貢ぐ
女の子のこと。
ちょっと虚しい気もするけど
考え方によっては
メンバーを支えてあげてる
って思えるんじゃないかな。
バンドマンってなにげに
儲からないからね〜」
萌は笑いながらそう言った。
へえ〜
繋がりにもいろんな形が
あるんだなあ〜
:09/07/11 09:46
:P905i
:9vx8iWJQ
#34 [りぃ]
「あ、多分ミツなら1発で
繋がれるよ。
手紙に1万円くらい現金入れて
ミツします。って書いて
インストアとかで手渡しするの。」
それを聞いて衝撃だったけど
私は決めた。
「じゅん君狙ってみる!」
1番になりたい
ただそれだけの気持ちだった。
:09/07/11 09:53
:P905i
:9vx8iWJQ
#35 [りぃ]
方法は簡単だった。
萌に教わったとおり、
手紙を書いて、中に
1万円を入れた。
もちろん電話番号も書いて
あとは渡すだけ。
もし繋がれなくても
それはそれでいい。
何もなかったことにして
今まで通り普通にライブを
見に行けばいいだけだから。
ダメ元で試してみよう!
:09/07/11 09:57
:P905i
:9vx8iWJQ
#36 [りぃ]
生まれて初めての
インストアイベント。
初めてのイベントで
本命のメンバーを狙う
なんて無謀かもしれない。
でも不思議と後ろ向きな
気持ちにはならなかった。
優越感に浸れるなら…
心のどこかにそんな気持ちもあった。
:09/07/11 10:02
:P905i
:9vx8iWJQ
#37 [りぃ]
イベント当日。
会場となるCDショップの
イベントスペースの前には
参加するお客さん達の
列ができていた。
「お〜結構集まってるね〜!」
萌が楽しげに辺りを見回す。
私もどきどきしながら
萌と一緒に列に入った。
:09/07/11 12:35
:P905i
:9vx8iWJQ
#38 [りぃ]
「あ〜。ついにきたね」
つい口から出た言葉に
萌が笑いながら答える。
「ははっ。ユリサさっきから
そればっかりじゃん。
初インストア緊張する?」
「当たり前じゃん!
いつもライブか雑誌で
見てるメンバーに直接
会えるなんて…ねぇ?」
:09/07/11 12:53
:P905i
:9vx8iWJQ
#39 [りぃ]
「そんな緊張してないで
ちゃんと落ち着いて
がっつり喋らないと
もったいないよー!」
どきどきしっぱなしの
私と違って、やっぱり
こうゆうことに慣れている
萌は普段通り落ち着いていた。
:09/07/11 13:00
:P905i
:9vx8iWJQ
#40 [りぃ]
「萌は落ち着いてるね。
もう慣れてるから?」
私が尋ねると萌は真顔で答える。
「てゆうか私は別に
JEWELが本命じゃ
ないからねえ〜
だから特に緊張とかも
しないのかも」
なるほどそうゆうことか…
:09/07/11 14:43
:P905i
:9vx8iWJQ
#41 [りぃ]
そんなふうに萌と話していると
いつの間にか開場時間になり、
列が少しずつ前に進み始めていた。
「わー!萌、進んでるよ!」
「あ、ほんとだ。
やっと入れる〜
この整番だとあんまり
前の方には行けそうにないな〜」
萌はそう言いながら
私の少し前を進み始めた。
:09/07/11 14:59
:P905i
:9vx8iWJQ
#42 [りぃ]
「多分イベントはトークから
始まるからできるだけ
前のほうで見たいよね〜」
歩きながら萌はそう続ける。
「見る場所は自由なんだけど
メンバーがどんな順番で
並ぶかわからないから
どこに行くか悩むな〜。」
「じゃあ真ん中あたりが
無難なんじゃない?」
2人でそんなことを
話し合いながら、ついに
イベントスペースの入り口まで
列が進んできた。
:09/07/11 15:10
:P905i
:9vx8iWJQ
#43 [りぃ]
イベントスペースは、
CDショップの隣の
空きテナントを利用し、
壁で仕切られて周りからは
中が見えないようになっていた。
入り口でスタッフに整理券を渡し、
萌に続いてイベントスペースに入る。
:09/07/12 19:25
:P905i
:6MSS92kE
#44 [りぃ]
中へ入ると、会場は
横長のテーブルが1つと
5脚の椅子が並べてあり、
その向かい側にお客さんが床に体育座り、
といった形式になっていた。
既に前から4列ほど埋まっている。
:09/07/12 20:12
:P905i
:6MSS92kE
#45 [りぃ]
「この辺にしよっか」
萌に促され、5列目の
真ん中辺りに座る。
メンバーのために用意された
席を眺めながら萌が口を開いた。
「やっぱりちょっと遠いけど…
メインは握手だからね!
別にいいよね。」
私は萌が言うほど遠さは
気にならなかったけど、
握手の時に何を話そうか、
その事で頭がいっぱいに
なりながらメンバー登場までの
しばらくの時間を過ごした。
:09/07/13 10:24
:P905i
:EBMNedJU
#46 [りぃ]
私はなんだ落ち着かず、
じゅん君へ宛てて書いた
例の手紙を何度もバッグから
取り出して確認しては
またバッグへ戻す。
そんなことを繰り返しているうちに
司会のスタッフが登場し、
会場の緊張が高まる。
:09/07/13 10:53
:P905i
:EBMNedJU
#47 [りぃ]
司会のスタッフによる
いくつかの注意事項の後
ついにメンバーが登場する。
「それではJEWELの皆さんでーす!」
ファンの歓声と共に
会場の隅の扉が空き
メンバーが順番に出てきた。
いつもライブで見るステージ衣装とは
違い、私服姿のメンバーを
見るのは新鮮だった。
:09/07/13 17:11
:P905i
:EBMNedJU
#48 [りぃ]
「じゅん君私服オシャレだね!
ユリサの好きなお兄系じゃん。」
「ほんとやばい!
どストライクだよ〜」
メンバーのトークも聞かず
萌と盛り上がっていると、
しばらくしてトークは終了した。
:09/07/13 19:53
:P905i
:EBMNedJU
#49 [りぃ]
「これから握手とサインに
うつりますので、1列に
並んでお待ちください。」
司会の言葉で、体育座りだった
ファン達が一斉に立ち上がり、
握手の列ができ始めた。
ふと見ると、会場の後ろの方では
一生懸命化粧を直したり
髪型を整えている子達も大勢いる。
:09/07/13 20:07
:P905i
:EBMNedJU
#50 [りぃ]
私も一応軽く鏡で化粧や髪を
確認しつつ、萌と列に加わる。
「ユリサ、サインは何に
書いてもらうー?
何か持ってきた?」
萌に言われてハッと気づいた。
サイン何に書いてもらうか
考えてなかった!!
てゆうか…握手のことで
いっぱいいっぱいで忘れてた…
:09/07/13 20:12
:P905i
:EBMNedJU
#51 [りぃ]
「やばー…忘れてた!
萌は何に書いてもらう?」
「私はとりあえず普段から
使うもののほうがいいかと思ったから
これにする〜」
そう言って萌が取り出したのは
普段から使っている
折り畳みミラーだった。
:09/07/13 20:17
:P905i
:EBMNedJU
#52 [りぃ]
「あ!いいねそれ!
私も鏡にしよう〜」
私は鏡と、例の手紙を手に持って
他の子達がメンバーと話している
様子を眺めながら
自分の順番がくるのを待った。
:09/07/13 20:26
:P905i
:EBMNedJU
#53 [りぃ]
「見て、あの子泣いてる!
ウケるんだけど〜」
萌は私の前で余裕で笑う。
「ねぇ萌、1人あたりの持ち時間が
思ってたより長いよ!?
どうしよう、じゅん君に何喋ろう…」
私が戸惑いながら萌にそう聞くと、
萌はケロッとして答えた。
「は?何言ってんのユリサ!
落ち着きなよ。喋る内容ごときで
困ってるようじゃ、繋がれても
やっていけないよ!」
:09/07/13 20:38
:P905i
:EBMNedJU
#54 [りぃ]
「それはそうだけど〜…」
メンバーと楽しそうに話している
他の子達を見ていると、
私の自信はどんどん
無くなっていく一方だった。
:09/07/13 20:40
:P905i
:EBMNedJU
#55 [りぃ]
「大丈夫だって!
場面でなんとかなるよ!
さすがに沈黙は気まずいけど
向こうから話振ってくれるっしょ〜」
「そうかな…」
萌が励ましてくれたけど
自分の順番が近づくにつれて
不安が大きくなってきた。
:09/07/13 20:45
:P905i
:EBMNedJU
#56 [りぃ]
「あと2人だねっ♪」
ついに私たちの番まで
あと2人とゆう所まできた。
すぐそこにじゅん君がいる。
「やばいやばい
1番目がじゅん君だよぉ〜」
私が取り乱していると、
ついに萌の番がきた。
「ユリサしっかりね!」
私にそう言うと、萌は
じゅん君と握手して喋り始めた。
:09/07/13 20:57
:P905i
:EBMNedJU
#57 [りぃ]
じゅん君が萌の鏡にサインしている間、
萌はじゅん君に話を振った。
「この次にくるの私の友達なんですけど
ちょー緊張しちゃってて
カワイイんですよ〜♪
じゅん君ファンだから
よろしくねっ」
そう言うと萌は笑顔でじゅん君から
鏡を受け取り、次のメンバーへと
進んでいった。
:09/07/13 21:05
:P905i
:EBMNedJU
#58 [りぃ]
いよいよ私の番だ!
じゅん君の前に進み出ると、
真っ先に手紙を渡した。
「これ読んでくださいね♪」
「ありがとうー」
じゅん君は笑顔で手紙を受け取ると、
しっかり私の目を見ながら
握手してくれた。
:09/07/14 10:12
:P905i
:.Lo0kSFo
#59 [りぃ]
「いつもいちばん前で
ライブ見てくれてる子だよね?」
私の顔を見たじゅん君は
自分からそう言ってくれた。
何を話そうか必死に考えていた私は
突然の出来事に唖然としてしまった。
「え…知ってるんですか?!」
「毎回最前で見てくれてる子くらい
ちゃんと覚えてるよー」
「うそ!嬉しいっ…」
:09/07/14 10:20
:P905i
:.Lo0kSFo
#60 [りぃ]
「今さら緊張してるらしーね。
さっきの友達が言ってたよ。」
じゅん君が笑いながらそう言うので
私はなんだか恥ずかしくなってしまった。
それと同時に、あまりにも
気軽に自分から話を振ってくれる
じゅん君の言葉や笑顔で、
私はさっきまでの緊張や不安が
一気に無くなっていくのを感じた。
:09/07/14 10:25
:P905i
:.Lo0kSFo
#61 [りぃ]
「だってインストア初めてだからー!」
じゅん君に冗談っぽく冷やかされるのが
恥ずかしくて必死に弁解すると
じゅん君は意外そうに答えた。
「あ、そーなの?
他のバンドのとかも?」
「行ったことないんですよー
でもじゅん君と喋ってたら落ち着いた。」
:09/07/14 10:35
:P905i
:.Lo0kSFo
#62 [りぃ]
私が素直な気持ちを伝えると
じゅん君は爆笑して答えた。
「あははっ!なにそれ!
喋って落ち着いたなんて
初めて言われたんだけど」
「いや笑うとこじゃ…」
「あ!」
大爆笑するじゅん君の前で
私が戸惑っていると、
じゅん君が何かに気づいた。
「サイン忘れるところだった
何に書く?」
:09/07/14 10:54
:P905i
:.Lo0kSFo
#63 [りぃ]
「あ、そっか。じゃあこれに。」
私は手に持っていた鏡を渡す。
「おっけーい♪
ついつい喋りすぎたね〜」
さらさらとサインを書いたじゅん君が
ぱっと顔をあげた。
「名前、何ちゃん?」
:09/07/14 11:05
:P905i
:.Lo0kSFo
#64 [りぃ]
「ユリサ!…です」
「ゆりさちゃんね。
なんか珍しい名前じゃない?
どう書くの?」
「そのままカタカナで…」
「お〜。なんかかっこいいじゃん」
そう言うとじゅん君はサインの上に
私の名前を入れて鏡を渡してくれた。
:09/07/14 11:14
:P905i
:.Lo0kSFo
#65 [りぃ]
「またライブきてね〜♪」
「はーい。行きま〜す」
最初の緊張が嘘のように
最後はゆる〜い空気だった。
私はじゅん君から鏡を受け取ると、
次のメンバーの前へと進んだ。
:09/07/14 16:47
:P905i
:.Lo0kSFo
#66 [りぃ]
想像を遥かに越えて
じゅん君と話せた気がする…!
手紙も渡せたし
そこそこ話せたし
よし!とりあえず目標達成!
解放感と達成感から、
他のメンバーの持ち時間は
ほぼ記憶にも残らないほどの物だった。
:09/07/14 16:55
:P905i
:.Lo0kSFo
#67 [りぃ]
最後のメンバーにサインをもらい終えると、
一足先に全メンバーを回り終えて
少し離れたところで私を待っていた
萌のほうへ歩み寄る。
「萌ーっ」
「お疲れ〜っ!
いい感じだったよユリサ!」
へなへなと萌の腕を取ると、
お互いメンバーとの会話の内容を
報告し合いながら会場を出て
近くのファミレスまで歩いた。
:09/07/14 17:01
:P905i
:.Lo0kSFo
#68 [りぃ]
「あー達成感っ!!」
ファミレスの席で私はホッと
胸を撫で下ろした。
「そうだね。あとはじゅん君から
連絡がくるのを待つだけか♪」
萌のその一言を聞いて、
私は一瞬戸惑った。
「そっか…!!
まだこれで終わりじゃないんだ!」
:09/07/14 17:06
:P905i
:.Lo0kSFo
#69 [りぃ]
「そうだよ?
むしろここからが本題なんだから!
今日からしばらく携帯手放せないね♪」
萌が楽しそうにそう言った。
そうか。
連絡がくるかもしれない
ってことをすっかり忘れていた。
とりあえずイベントで満足
してしまって、繋がりたい
なんて気持ちを一瞬忘れていた。
:09/07/14 17:13
:P905i
:.Lo0kSFo
#70 [りぃ]
その後しばらく萌と
ぐだぐだ喋り続け、
終電が近づいた頃やっと
2人で帰路についた。
萌と同じ駅で降り、
同じマンションに入り
エレベーターの中で別れる。
萌とは高校卒業後、同じ大学に入り、
一緒に地元から上京後、
同じマンションで違うフロアに住んでいる。
:09/07/15 10:38
:P905i
:FajTl1x.
#71 [りぃ]
「じゅん君から早く連絡くるといいね!
何かあったら教えて♪
じゃあおやすみ〜」
5階でエレベーターを降りた私を
萌が見送りながら声をかけた。
そして萌はそのまま6階へ上がる。
:09/07/15 10:42
:P905i
:FajTl1x.
#72 [りぃ]
自分の部屋に入り、
ベッドの上にバッグを放り投げると
床のクッションに腰を下ろす。
テレビをつけ、バラエティ番組を
眺めながらぼんやりと
今日の事を思い返した。
じゅん君今日もかっこよかったな〜♪
しかも私がいつもライブ来てること
知っててくれた…
:09/07/15 11:05
:P905i
:FajTl1x.
#73 [りぃ]
手紙も渡しちゃったし…
あ。貢ぎますとは言ったけど
もしじゅん君から連絡がきたら
私いくらぐらい貢ぐんだろう?
相場とかあるのかな?
月極め?それとも会うたび?
私は勢いで手紙まで渡してしまったけど
具体的なことを何も考えて
いなかったことに気づいた。
:09/07/15 11:10
:P905i
:FajTl1x.
#74 [りぃ]
ま、連絡がきてから考えればいっか。
50%くらいの確率でしか
連絡はこないと思い、
深く考えるのは止めて
とりあえずお風呂に入り
その日は何事もなく1日が終わった。
:09/07/15 11:20
:P905i
:FajTl1x.
#75 [りぃ]
―次の朝―
起きて真っ先に携帯を見る。
表示は何もなかった。
「きてないか…」
仕方なく私は学校へ行く
支度を済ませ、携帯を持って家を出た。
:09/07/15 11:26
:P905i
:FajTl1x.
#76 [りぃ]
エレベーターを降りると、
ちょうど萌がいた。
「萌!おはようー」
私が声をかけると萌は驚いた
様子で振り返った。
「ユリサ珍しく早いね!
昨日連絡きた?」
「ううん。何もきてなかった。
もー、今日は気になって
早起きしちゃったよ…」
:09/07/15 11:43
:P905i
:FajTl1x.
#77 [りぃ]
私の言葉に萌は笑いながら答えた。
「あははっ!だから今日
こんなに早いんだ!
ユリサほとんど1限出ないのに
今日は珍しいと思ったー」
「ほんと、一緒に登校なんて久々だよね」
その後2人で学校へ向かい
私は珍しく萌と一緒に
1限の授業から出ることにした。
:09/07/15 11:51
:P905i
:FajTl1x.
#78 [りぃ]
2限目の講義中、
早速うとうとしていると
膝の上に置いていた携帯が
振動し始めた。
『あ、やば…寝てた…』
ぼんやりと携帯の画面を見ると
着信画面に知らない番号が
表示されている。
:09/07/15 11:55
:P905i
:FajTl1x.
#79 [りぃ]
「……?」
すっかり寝ぼけてしまい
状況を理解するまでに数秒かかった。
『…あ!!!!!!
じゅん君??!!』
そう気づいた瞬間、
私は講義なんかそっちのけで
教室を飛び出した。
状況を察知した萌が
自分の席から満面の笑みで
こっちを見ている。
:09/07/15 12:07
:P905i
:FajTl1x.
#80 [りぃ]
廊下で思い切って通話ボタンを押す。
「はい…?」
『あ、ユリサちゃん?』
恐る恐る電話に出ると、
親しみを感じる声で名前を呼ばれた。
『俺じゅんだけどわかる?』
その名前を聞いて鼓動が早くなる。
:09/07/15 17:34
:P905i
:FajTl1x.
#81 [りぃ]
「わかりますわかります!
嬉しい…電話きたらいいなって
思ってたから…」
『あ、まじで?
今なにしてんのー?』
じゅん君の問いかけに、
浮かれていた気持ちがふと我に返る。
「あ、今学校…ですけど。」
『学校?学生なんだ!』
「そう、大学生。」
『学校って都内?』
「都内ですけど…なんで?」
:09/07/15 17:52
:P905i
:FajTl1x.
#82 [りぃ]
『じゃあさ、今から会わない?♪
学校って抜けれる?』
「え!今から?!」
じゅん君の言葉に喜びながらも
驚きを隠せなかった。
『…無理?』
「えーっと…無理じゃないけど…」
:09/07/15 18:02
:P905i
:FajTl1x.
#83 [りぃ]
まず考えたのは今日の格好。
偶然にも今日は早起きしたから
わりと化粧もしっかりできたし
髪も綺麗に巻けてる。
服も…まぁアリかな。
こんないきなり個人的に会えるなんて
思わなかったから気合い入れた
オシャレなんかしてないけど…
なんでもいい!
会いたいっ!!!
:09/07/15 19:27
:P905i
:FajTl1x.
#84 [りぃ]
考えた結果、私はいさぎよく答えた。
「行きます!!どこですか?」
『そうだな〜…
とりあえず俺今渋谷向かっててさー
昼過ぎから渋谷でスタジオ入るんだけど
ユリサちゃん今から渋谷来れる?』
「全然行けます!」
『じゃあ俺着いたら駅前の
スタバで待ってるね〜♪』
:09/07/15 21:48
:P905i
:FajTl1x.
#85 [りぃ]
渋谷へ向かう約束をして
電話を切ると、みるみる
顔がニヤけていく。
私じゅん君と繋がったの?!
今から会えるんだ!!
ファンの子が誰も知らない
プライベートのじゅん君に…。
やばーいっ!!!
嬉しすぎて叫び出したい衝動を抑え、
荷物を取るためそーっと教室へ戻る。
:09/07/15 21:57
:P905i
:FajTl1x.
#86 [りぃ]
私の座っていた席へ戻ると、
ちょうどいいタイミングで
講義終了のチャイムが鳴った。
「あ、終わった…」
机の上に開いたままだった
テキストやノートを急いで
まとめているところに
萌が駆け寄ってきた。
:09/07/15 22:10
:P905i
:FajTl1x.
#87 [りぃ]
「じゅん君?!じゅん君から?!」
萌は勢いよく私に詰め寄ってくる。
「萌聞いて!!
今からじゅん君のとこに行くの!」
私も興奮を抑えきれず
電話のいきさつを簡単に
萌に説明する。
:09/07/15 22:17
:P905i
:FajTl1x.
#88 [りぃ]
「そんなわけだから
とりあえず軽く化粧直して…
まぁとにかく急いで行かなきゃ。
昼過ぎからスタジオって言ってたし」
「おめでとうユリサっ!
なんかかっこいいよ!
頑張ってねっ。」
黙って私の話に聞き入っていた
萌は目を輝かせて私を応援してくれた。
:09/07/15 22:32
:P905i
:FajTl1x.
#89 [りぃ]
「じゃあ行ってくるね!
戻れそうな時間だったら
また学校戻ってくるから。」
「頑張ってね〜!!」
萌と別れると、ひとまず
トイレに直行し、鏡を覗き込む。
化粧は軽く直せばいいや。
髪は今日はゆる巻きだけど
じゅん君ゆる巻き好きかな…
盛り盛りのほうが好きとか?!
服は無難なワンピだしまあ大丈夫か…
よし!急がなきゃ!
:09/07/15 22:50
:P905i
:FajTl1x.
#90 [りぃ]
「じゅん君〜っ♪」
スタバの客席でじゅん君を見つけ、
今までにないゴキゲンな声で
じゅん君の名前を呼んだ。
いまだになんとなく実感は
ないけど…
今確かに私の目の前に
私のためだけにじゅん君がいるんだ…!
:09/07/17 08:57
:P905i
:ay.51GUo
#91 [りぃ]
「ユリサちゃん、久しぶり〜♪
学校抜けれた?」
「はい、全然大丈夫♪」
テーブル席に向かい合って座り
一通りお互いに軽く喋った後、
じゅん君が切り出した。
「この間インストアの時に
ユリサちゃんがくれた手紙だけどさ…」
その言葉で手紙の内容を思い出した。
あ。忘れてたけど…
私貢ぎますとか言ったんだよね。
実際そんなに貢ぐほどのお金なんか
持ってないのにどうするんだろう。
今この場でお金求められたら
普通に困るんだけど…
:09/07/17 09:10
:P905i
:ay.51GUo
#92 [りぃ]
そんな矛盾を感じていると
じゅん君は続けて口を開いた。
「お金なんかいらないから。」
一瞬耳を疑った。
お金なんかいらない?
:09/07/17 09:13
:P905i
:ay.51GUo
#93 [りぃ]
「え?なんで…」
「これも返すから。」
私が戸惑っていると
じゅん君は私に1万円を差し出した。
「これ…」
差し出された1万円札を見て、
手紙に入れたものだと直感した。
:09/07/17 09:20
:P905i
:ay.51GUo
#94 [りぃ]
私いらないの?
せっかく繋がれたと思ったのに
もう切られるの?
ただお金返しにきただけ?
浮かれていた気持ちが急に沈み始める。
:09/07/17 09:23
:P905i
:ay.51GUo
#95 [りぃ]
「いや、ちょっと待ってユリサちゃん…!」
私の様子を察したじゅん君が
とっさにフォローする。。
「…お金いらないってゆう意味
わかってる?」
「え?」
思いがけない言葉に、
頭が混乱した。
:09/07/17 09:28
:P905i
:ay.51GUo
#96 [りぃ]
「ユリサちゃんにこんなこと
させられないって意味だよ。
ユリサちゃん自身をいらないって
言ってる訳じゃないからね!」
…どうゆう意味だろう?
私はわけがわからず
ただじゅん君をじっと見つめるしか
できないでいた。
:09/07/17 09:33
:P905i
:ay.51GUo
#97 [りぃ]
「今絶対誤解してるっしょ!
切られるとか思ってる?」
「…うん。違うの?」
私がよくわからないまま
答えると、じゅん君は
笑いながら言った。
「わざわざお金返すためだけに
学校抜けさせてまで呼び出すと思う?
繋がる気もない子に
そこまでしないだろーさすがに。」
:09/07/17 09:39
:P905i
:ay.51GUo
#98 [りぃ]
とゆう事は…?
「俺的にはあの手紙もらった時、
現金なんか入ってなくても
電話かける気満々だったからね!」
じゅん君は自慢げにそう言った。
:09/07/17 09:45
:P905i
:ay.51GUo
#99 [りぃ]
「…………うそっ!!」
じゅん君の発言から少しの間をあけて
やっと事態を理解した。
驚く私を見てじゅん君はまた笑う。
「ユリサちゃんってさー
見かけによらず純粋なんだね。」
:09/07/17 09:49
:P905i
:ay.51GUo
#100 [りぃ]
つまりこうゆうこと?
インストアで初めて喋った時も
私のことを覚えていてくれて、
そんな私にじゅん君は
電話かける気満々だったと…。
お金無いバンドマンなのに
お金はいらないと…。
:09/07/17 09:52
:P905i
:ay.51GUo
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