夏祭り、恋花火

　
何歳？
　
誕生日は？

血液型は？

どこ住んでんの？

こんなんは、序の口。

ファーストキスはいつ？

どこで？

どんな風に？

好奇心だらけの質問。

　
どれにも笑って答えてゆく。

なかなかやるな、コイツ。

確かな手応えを感じ始める。

そして、

『今、彼女おんの？』

と、とうとう聞いた。
　

　
｢ん～、彼女ってゆうか、奥さんやな。｣

『結婚してんの？』

｢そぉやな。｣

たこ焼きを焼き始めた手を見ると

指輪。

子どもの私でも、
その意味は理解できた。
　

　
　
『ふーん。子どもは？
子どもはおんの？』

｢まだ籍入れて、2ヵ月しか経ってへんし、
そんなんまだまだ先や。｣

『じゃあ、まだ見ぬ赤ちゃんのために頑張りや。

ここで、さぼらんように
まつりが見張っといたるわ。』

｢そりゃ、
どーもありがとぉ。｣

　
ほんまえらそうなガキ。

そんな私にも、笑って答えるあの人。

今の私やったら、

ガキんちょに
自分の子どものことなんか心配してほしないわっ！

ってキレてる。
　
　

　
　
それから、
本当に私は見張り続けた。

とゆうより、
お邪魔し続けた。

そして私が小学6年生になった時、

“原田さんに子どもが出来た”

と聞いた。

お母さんとおばあちゃんが話してるところを
盗み聞きした。

ショックやった。

なんでか分からへんけど、無性に悲しくって

イライラした。

今、思えば

出会った時から、あの人が好きやったんや。
　

　
　
それに焦った。

奥さんがおるのは、
正直なんも思わんかった。

けれど、
子どもが生まれたら、
もう私なんか相手してくれへんくなる。

そう思うと、
苦しくって苦しくって
溜まらんかった。
　

　
　
　
｢なんか最近、冷たいやん。｣

『別に。
真面目に働いてるだけ。』

私はこの頃から、1人で金魚を任されるようになった。

｢そっか。
おっちゃん寂しぃわ。｣

店を潰しながら、軽く言う。

　
そんなこと、思ってないくせに。

あの人は私の前では
自分のことを
“おっちゃん”とゆう。

今まで、なんとも思わんかったのに

最近は子供扱いされてるみたいで、いやや。
　
　
むしゃくしゃする。
　