夏祭り、恋花火
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#75 [七瀬]
時は進んでゆく。

中学1年生になったばかりの春休み。


造幣局の通り抜け。

よくテレビでも放送されたりする。

この通り抜けには、
毎年、桜見物にたくさんの人が来る。

1メートル歩くだけでも、大変。

特に土日は押し潰されそうなくらい混雑する。

⏰:09/03/19 14:34 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#76 [七瀬]
 
 
そこには神野商会、唯一の茶店(チャミセ)を出す。


茶店を出してるのはここだけ。



私は茶店が大好き。

だって、あの人と長くおれるもん!

茶店の仕事は主に、
お客さんの注文を聞いて、料理、飲み物を届けて、
お金を貰う。

⏰:09/03/19 14:43 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#77 [七瀬]
 
一つの茶店に注文を聞く人が5、6人。


その他におでんを入れる人。
焼そばや焼き鳥を焼く人。

味噌汁を作る人。

とか、それぞれ役割分担する。


だから、
普段は屋台をしてる人も、茶店に一斉動員するというわけ。

⏰:09/03/19 14:48 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#78 [七瀬]
 
ってことは、

わざわざ屋台に遊びに行かんでも、
あの人は茶店におる。


やっぱ茶店は大好きや!

あの人は焼そばを焼いてる。

私は注文聞き係。

「焼そば一つ。」

と言われるたびにうれしくって、つい声が高くなる。

⏰:09/03/19 15:27 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#79 [七瀬]
『焼そば一つでーすっ!』


そしてあの人の傍で
焼そばが焼きあがるのを
待つ。


幸せな時間。


そんなことをしていると
時間はあっという間に過ぎてゆく。

通り抜けは夏祭りと違って終わるのが早い。


遅くて8時くらいまで。

⏰:09/03/19 15:31 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#80 [七瀬]
でも、

桜の咲き始めから満開まで

満開から散り始める頃まで店を出している。


だから10日間くらいしている。



学校が終わると、
ジャージに着替え、真っ先に駅へと向かう。


二駅向こうの
あの人の元へと…。

⏰:09/03/19 18:00 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#81 [七瀬]
 
 
 
でもその10日間もあっという間。


通り抜け最終日。



『ありがとうございました。』

最後まで酒を飲んで
なかなか腰を上げないサラリーマンたちも
ようやく席を立った。
 

⏰:09/03/19 18:02 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#82 [七瀬]
 
ふぅ。
やっと帰った。

疲れた身体にムチを打ち、最後の仕事をし始める。

それは洗い物。


お客さんの使った皿やら箸。
後はおでんを煮た大きな鍋など。

かなりの重労働。


大体2、3人の女の子たちとする。

⏰:09/03/19 18:11 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#83 [七瀬]
 
はずが女の子たちは、
おばあちゃんに呼ばれ、
とりあえず一人で始めることにした。


春とはいえ、まだ肌寒い季節。

冷たい水に耐え、金ダワシに洗剤をつけ、こする。



「まつり。」
 
後ろから柔らかい声。
 

⏰:09/03/19 18:14 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#84 [七瀬]
振り返ると、そこにはあの人。

「今日で最後やな。」

私はこの時、この意味がよく分からんかった。

『うん。今度は夏やな。』

これが終わると、天神祭まで祭がない。

「そやな。」

今、思うとなんで気付かんかったんやろう。

悲しそうな顔してたのに。

⏰:09/03/19 18:20 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


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