夏祭り、恋花火
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#375 [七瀬]
「でも、良かったやろ?
まつりは原田さんと会えてんし。
感謝してほしいくらいやわ。
ほんま大変やったで。
原田さんの住所調べんの。」
ペラペラと楽しそうに話す麻友ちゃん。
私の知らんところで、
いろんなことが起こってて頭が着いていかなかった。
:09/03/30 00:54 :N703iD :gYBu1X56
#376 [七瀬]
「ほんまは、天神祭に連れて来たかってんけど、
思ったより時間かかって、間に合わんかった。
だって、おもろいやん。
奏とまつりが付き合った、天神祭で、その二人が壊れていくなんて。
それに思い出すんやろ?
天神祭の花火見たら、初恋の、あの人を。」
:09/03/30 01:01 :N703iD :gYBu1X56
#377 [七瀬]
麻友ちゃんは、心底悔しそうに、そして愉快そうに言った。
「ほんま惜しいことしたわ。」
『ふ…ふざけんといて。』
なんて弱気な声なんやろ。
麻友ちゃんとは、まるで対照的な声だった。
:09/03/30 01:05 :N703iD :gYBu1X56
#378 [七瀬]
「ふざける?」
そんな私を鼻で笑う麻友ちゃん。
「“ありがとう”くらい
ゆうてほしいなあ。
会いたかったやろ?
運命の赤い糸で結ばれた
愛しい愛しいあの人と。」
バンッ
『ええ加減にして!』
:09/03/30 01:10 :N703iD :gYBu1X56
#379 [七瀬]
机に手をつく。
周りの視線が突き刺さる。
今の私には精一杯の反撃だった。
けれども麻友ちゃんは
そんな私に、もろともしないようだった。
「“ええ加減にして”?
それはこっちのセリフや。」
:09/03/30 01:14 :N703iD :gYBu1X56
#380 [七瀬]
「いつまでも奏を振り回して…
ええ加減にしてよ!」
初めて、麻友ちゃんは声を荒げた。
大きな目が吊り上がり気味に私を見ている。
「私はまつりとは違う!
まつりみたいに
奏を初恋の人と重ねて見たりしてない!!」
:09/03/30 01:19 :N703iD :gYBu1X56
#381 [七瀬]
ズキン…
麻友ちゃんの言葉が
胸を傷める。
「私の方が奏を幸せに出来る。
一人の男として見れる!
私の方が…
奏を愛してる!!」
それでも、
容赦なく降り掛かってくる言葉。
:09/03/30 01:23 :N703iD :gYBu1X56
#382 [七瀬]
確かにそうかもしれない。
私は奏とあの人を重ねてた。
「私は、ずっと前から奏が好きやった。
まつりが悪いんやで。」
麻友ちゃんは店を出た。
私はポツリと、麻友ちゃんの言い残した言葉の重みを感じていた。
:09/03/30 11:38 :N703iD :gYBu1X56
#383 [七瀬]
祭があるまでの、この四日間。
すごくすごく考えた。
こんなに頭を使ったのは、人生初かもしれへん。
今日は雨がザーザー降ってじめじめしていた。
余りにも、すごい雨やから祭は中止に、なりかけけどセーフだった。
でも、花火は中止のようだった。
:09/03/30 11:47 :N703iD :gYBu1X56
#384 [七瀬]
傘をさして、カステラへと向かう。
今日は、大竹さんがお休みなので、
遊希がカステラを焼いて、私は前場をすることになった。
金魚は麻友ちゃんがするみたい。
少し安心した。
奏も来てるみたいだけど、会う元気と勇気はすっかりなくしてしまった。
:09/03/30 11:51 :N703iD :gYBu1X56
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