夏祭り、恋花火
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#62 [七瀬]
「お前アカンわ。」
は?
「一生男できんわ。
結婚もせんと、一人おばあちゃんや。」
頭を横にふる遊希。
『あんたにそんなこと
決められたくないっ!』
「そんな
“自分から好きになった人じゃなきゃいや”とか
幼稚園児みたいなこと言ってたら、そうなるやろ。」
:09/03/18 22:39 :N703iD :1U/TvnL6
#63 [七瀬]
うっ……。
遊希の言ってることが
図星やから、なんも言い返されへんかった。
そう。
私は幼稚園児だ。
まだ
“いつか、あの人が迎えに来てくれる”
という甘い夢を見ている。
甘くて二度と叶わないだろう夢。
:09/03/18 22:43 :N703iD :1U/TvnL6
#64 [七瀬]
7歳の時。
初めてあの人に出会ったのは、10年前。
その人もただのバイトだった。
そして当時7歳の私は、
ただの“バイト先の子供”という存在。
あの人は当時23歳。
年の差は15歳。
:09/03/18 23:43 :N703iD :1U/TvnL6
#65 [七瀬]
また新しい人が来た。
最初はいつものように、
そう思ってた。
『なあなあ〜。
アンタ名前は〜?』
あの頃の私はバイトの子が入る度に
男だろうが、女だろうが、話し掛けてた。
そして質問攻めにする。
:09/03/19 13:03 :N703iD :DKWoRP7w
#66 [七瀬]
『何才なん?』
『どこ住んでんの?』
『なんで、ここで働いてるん?』
『彼女おんの?』
今、思えば
かなりウザいガキ。
子供嫌いな私やったら、
多分キレてた。
お母さんにも、よく怒られた。
“邪魔したらアカン”って
:09/03/19 13:09 :N703iD :DKWoRP7w
#67 [七瀬]
最初はニコニコと答えてた子たちも、
忙しくなってきたり、
隅々まで聞かれたり。
段々、うっとうしくなってくる。
当たり前やわな。
そんなことをするのが私は面白くって溜まらんかった。
ほんまひねくれてるガキ。
:09/03/19 13:13 :N703iD :DKWoRP7w
#68 [七瀬]
で、いつものように質問しまくる。
でも、あの人は
いつもの私の逆のポジションにおった。
いつも、バイトの子を
質問して、うっとうしがってる顔を見て楽しんでる私。
私が質問しまくる姿を見て楽しんでるあの人。
:09/03/19 13:16 :N703iD :DKWoRP7w
#69 [七瀬]
質問に答えながらも、ニヤニヤ笑ってる。
なんか負けた気がした。
負けず嫌いな私は、
ムキになってさらに質問する。
そんな私を見て楽しんでる。
あの人は“大人”やった。
“子供なんて、どうってこない”
って感じやった。
:09/03/19 13:20 :N703iD :DKWoRP7w
#70 [七瀬]
それからというもの、
私はずっと祭に行ってる。
お母さんにたまに、ついていってただけやったのを、
“祭”と聞いたら
ついてゆく。
もちろん、あの人に会うために。
めっちゃ楽しい。
あの人としゃべることが。
あの人は子供の私にも真剣にしゃべってくれた。
最初は適当やったくせに。
:09/03/19 13:26 :N703iD :DKWoRP7w
#71 [七瀬]
でも、そんなことが
ずっとは続かへん。
私が小学4年生になろうとする前、
「祭に来たいなら働き!」
とお母さんに言われた。
いつか言われるなあ
とは思ってた。
だって、
あの人のところで
ずっとしゃべってたら
そう言われるよな。
:09/03/19 13:33 :N703iD :DKWoRP7w
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