こいごころ
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#242 [向日葵]
沢口もそこへ来る。
茉里は浴衣を着なかった。
着ても意味がない気がしたからだ。
課題している時、頑張った髪型を褒めてくれた宗助。
でも今回ばかりは、もう褒めてはくれない気がした。
沢口はきっと褒めてくれると思う。
でも、褒められて嬉しいだろうけれど、宗助に誉められる喜びとはまた違う。
だから、着て行かない。
「あ、茉里ちゃん!」
校門にはもう何人かいた。
:09/06/23 03:44
:SO906i
:☆☆☆
#243 [向日葵]
茉里みたいに私服の子もいたが、ほとんどは浴衣だった。
「あ、沢口さん」
振り向けば、沢口が気づいた茉里に微笑みを浮かべて歩いてきていた。
「こんばんわ」
「こんばんわ。こんな大勢になっちゃったよ」
「いいよ。僕は大勢で騒ぐの好きだし」
そうやって微笑まれれば、なんだかホッとした。
この笑顔には、癒しを感じる。
「あ、笹部くん!こっちー!」
それを聞いて、茉里はドキリとする。
:09/06/23 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#244 [向日葵]
でも、宗助の方は向かなかった。
「さ、さあ!今日は楽しむよー」
邪念を払うように、茉里はそう告げて歩き出した。
「加賀さんは、浴衣着ないの?」
沢口が隣に並んで喋りかけてきた。
「あ、うん。なかったから」
「そっか」
歩いて行く度、人が増えて行く。気をつけないと迷子になるかもしれない。
それに周りは、夏祭りならではのものばかりで目を奪われてしまう。
:09/06/23 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#245 [向日葵]
最初、皆が立ち止まったのは、金魚すくいだった。
茉里は皆がやっているのをジッと見ている。
沢口は器用で、何匹も取る。
その容姿で集まってきた人も感嘆の声をあげる。
沢口はすくい終えると、金魚を3匹、袋に入れて茉里に差し出す。
赤く、光の加減によって金にも見える金魚は、とても綺麗で、ついつい茉里も嬉しくなって笑う。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そんな2人を、宗助は静かに見ていた。
:09/06/23 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#246 [向日葵]
[アンタは、茉里をどうしたいの?]
ミュシャに言われた言葉が、頭の中を何回もよぎる。
どうしたいかなんて、分からない。
ただ、傷つけたけないと思ってる。
小さな約束すら守ってやれず、傷つけた奴が何言ってんだって思われるかもしれない。
あの日、見つけ出せそうだった答えが、今、また霧の中に消えてしまった。
また見つけ出すには、また時間がかかりそうだと思った。
いや……、もしかしたら自分は、避けているのか?
:09/06/26 03:52
:SO906i
:☆☆☆
#247 [向日葵]
本当の想いから。
そんな事を考えている間に、皆がどんどん先に進んでいっとしまう。
宗助も、後に続いた。
「夏祭りと言えば、かき氷!」
後輩が言う。
「じゃあ買っちゃおうよ!」
近くの屋台に寄る。
せっかくなので、茉里も買うことにした。
かき氷を受け取ったと同時に、誰かが茉里の腕を引いた。
「しー」
沢口だった。
:09/06/26 03:53
:SO906i
:☆☆☆
#248 [向日葵]
「え、な、なに……」
「ちょっと、付き合って」
有無を言わせず、茉里は連れて行かれる。
皆と離れていく。
振り替えっても、もう姿は見えなくなってしまった。
「ゴメンネ。強引に」
川沿いに来た時、沢口がそう言った。
ここはさっきとは違い、人混みから離れている為、静かだ。
周りが静かになれば、茉里の心も静かになり、落ち着いた。
さっきはなんだか落ち着かなかった。
宗助が、いたから……。
:09/06/26 03:53
:SO906i
:☆☆☆
#249 [向日葵]
「加賀さん」
沢口がまっすぐに見つめてくる。
手に持っているかき氷が、ひどく冷たく感じる。
それは段々と麻痺を起こし、持っていると意識しなければ落としてしまいそいになる。
「もう分かってるかもしれないけど、僕は加賀さんが好きです」
茉里は恥ずかしくなってうつむく。
「あ……ありがとう」
小さな消えそうな声でそう言うのが精一杯だった。
:09/06/26 03:53
:SO906i
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#250 [向日葵]
「加賀さんさえよければ、付き合ってほしいんだ」
沢口を見る。
彼はやっぱり、優しげな笑みを浮かべて茉里を見ている。
出店の明かりで照らされた彼の顔は、皆が騒ぐようにかっこいい。
茉里はぼんやりとそう思った。
神様は、もしかして、今この瞬間、諦めろと言っているのだろうか。
たしかに沢口は嫌な奴じゃない。優しく、いつも自分を気遣ってくれている。
:09/06/26 03:54
:SO906i
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#251 [向日葵]
微笑まれれば、安心感に包まれる。
私は、宗助とは、結ばれないように出来ていたのかな……。
かき氷を持つ手のように、茉里の気持ちも麻痺しだす。
本当に宗助じゃなきゃ駄目だなんて、もしかすれば錯覚なのかもしれない。
それならば、沢口を選んでもいいのかもしれない……。
「わ……私……は……」
その時、携帯が鳴った。
最初、沢口も茉里も自分のだとはわからなかったが、やがて自分の鞄に手を当てると、自分だと茉里は分かった。
:09/06/26 03:54
:SO906i
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