こいごころ
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#252 [向日葵]
「ご、ごめんあの……」
沢口を見ると、にこりと笑って、電話に出るよう促してくれた。
急いで、誰かも確かめずに、急いで出た。
「もしもし」
そう言ったが、向こうから返答がない。
ざわざわと受話器越しに聞こえるから、繋がっているのは確からしい。
聞こえてないのかな?
「もしもし?」
もう1度言う。
「今どこだ」
息が止まる。
:09/06/26 03:54
:SO906i
:☆☆☆
#253 [向日葵]
周りの声が、聞こえなくなる。
神経が全て、耳に集中する。
「おい、聞いてるのか」
声を出したいのに、喉の奥で詰まる。
ああ……やっぱりダメだ。
麻痺していた気持ちが、覚醒していく。
どんな事をされても、私はあなたが好きとしか考えられない。
運命じゃないからなんて決めてられない。
運命に逆らってでも、私は今、あなたしか見えないよ。
錯覚なんかじゃ、絶対ない。
「そ……すけ……っ!」
:09/06/26 03:55
:SO906i
:☆☆☆
#254 [向日葵]
思わず泣きそうになってしまう。
「どうした?なんかあったのか?」
茉里の涙声に、宗助は心配する。
「かわ……川沿い……に、いる……」
「わかった。今から行く」
そう言って、宗助は電話を切った。
茉里もゆっくりと携帯を閉じる。そして沢口を見る。
「ごめんなさいっ……。私、諦められない人がいる……。大好きな人がいる……っ」
:09/06/26 03:55
:SO906i
:☆☆☆
#255 [向日葵]
最低だ。
甘えるだけ甘えて、私は沢口くんを傷つけた。
それでも、沢口は微笑んだままだった。
少し、寂しそうだけれど。
「そう……。でも、僕も簡単には諦めないから」
「でも、あの……」
「とりあえず、今日は帰るね。加賀さんの求めてる王子様がくるみたいだから」
そう言って、沢口は川沿いを歩いて行ってしまった。
その背中を、小さくなってしまうまで、茉里は見続けた。
気が抜けてしまえば、ポロポロと涙が溢れ始めた。
:09/06/26 03:56
:SO906i
:☆☆☆
#256 [向日葵]
好きな人を思うだけで、涙が出るなんて知らなかった。
こんな気持ちになるのは、きっと、いや絶対宗助だけ。
他の誰にもなった事はない。
自分は何を弱気になってたんだろう。
見込みがないかもしれないのは、今までもそうだったじゃない。
仮彼女は、ただひたすら突き進むだけ。
そんな風にしてでも、私はあなたのそばにいたいの。
「加賀!」
出店の間から、宗助が出てくるのが見えた。
:09/06/29 04:01
:SO906i
:☆☆☆
#257 [向日葵]
宗助がこちらへ走って来る。
茉里も宗助の方へ走っていく。
そしてそのまま、茉里は宗助の胸に飛び込んだ。
そう来るとは思わなかった宗助は、飛び込んできた茉里の勢いに負けて尻餅をついた。
「いった……加賀?」
茉里は力一杯宗助にだきつく。
「泣いてるのか?」
茉里は答えない。
宗助は困るが、そっと手を伸ばし、茉里の頭を優しく撫でる。
「迷子になって、心細かったのか?もう大丈夫だから。ちゃんと、見つけたから」
その言葉に、茉里は更に涙を流す。
:09/06/29 04:01
:SO906i
:☆☆☆
#258 [向日葵]
「好き……」
涙声の茉里の声が、宗助の耳に届く。
「好き、私……宗助が好きだよ……っ」
「……うん」
「本当だよ」
「うん」
「信じて……っ」
「うん……」
信じてるよ、加賀の気持ちは。
ずっと前から。
真っ直ぐにぶつかってくる君が、俺は放っておけないんだ。
信じれないのは、霧の中に置いてきてしまった、自分の気持ちなんだ。
:09/06/29 04:01
:SO906i
:☆☆☆
#259 [向日葵]
だから今も、君のその細く震える肩を、抱いてあげる事すら、出来ないんだ。
――――――――…………
夏休みもついに終わった。
課題テストも終わり、今度は体育祭のお祭りムードが色濃くなってきた。
茉里は、また宗助と一緒に帰っている。
「体育祭、楽しみだねーっ」
「張り切りすぎて怪我しそうだよな、アンタは」
「それはー、あんまり頑張ると、怪我するから、無理しちゃ駄目だぞっ、て言ってくれてるの?」
:09/06/29 04:02
:SO906i
:☆☆☆
#260 [向日葵]
「アンタの妄想には毎度頭が下がるよ」
「違うの?」
「なにが?」
「心配、してくれてるんじゃないの?」
「好きなように取れば?」
そう言って、優しく、どこか意地悪に笑う。
最近、あの不器用な笑顔じゃなく、こんな風に自然に笑ってくれることが多くて嬉しい。
もちろん、あの不器用な笑顔だって好きだ。
でもこの頃の笑顔は、心から自分といることを楽しんでくれてる気がするから嬉しいのだ。
:09/06/29 04:02
:SO906i
:☆☆☆
#261 [向日葵]
そんな幸せも束の間。
体育祭も終わり、今度は冬の気配が色濃くなってきた頃のことだった。
その季節、茉里は知る事なる。
一途の重さと、苦しさを。
――――――――自分の諦めの悪さに、嫌気がさす。
どうして、運命を受け入れなかったんだろう……。
:09/06/29 04:02
:SO906i
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