こいごころ
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#246 [向日葵]
[アンタは、茉里をどうしたいの?]
ミュシャに言われた言葉が、頭の中を何回もよぎる。
どうしたいかなんて、分からない。
ただ、傷つけたけないと思ってる。
小さな約束すら守ってやれず、傷つけた奴が何言ってんだって思われるかもしれない。
あの日、見つけ出せそうだった答えが、今、また霧の中に消えてしまった。
また見つけ出すには、また時間がかかりそうだと思った。
いや……、もしかしたら自分は、避けているのか?
:09/06/26 03:52
:SO906i
:☆☆☆
#247 [向日葵]
本当の想いから。
そんな事を考えている間に、皆がどんどん先に進んでいっとしまう。
宗助も、後に続いた。
「夏祭りと言えば、かき氷!」
後輩が言う。
「じゃあ買っちゃおうよ!」
近くの屋台に寄る。
せっかくなので、茉里も買うことにした。
かき氷を受け取ったと同時に、誰かが茉里の腕を引いた。
「しー」
沢口だった。
:09/06/26 03:53
:SO906i
:☆☆☆
#248 [向日葵]
「え、な、なに……」
「ちょっと、付き合って」
有無を言わせず、茉里は連れて行かれる。
皆と離れていく。
振り替えっても、もう姿は見えなくなってしまった。
「ゴメンネ。強引に」
川沿いに来た時、沢口がそう言った。
ここはさっきとは違い、人混みから離れている為、静かだ。
周りが静かになれば、茉里の心も静かになり、落ち着いた。
さっきはなんだか落ち着かなかった。
宗助が、いたから……。
:09/06/26 03:53
:SO906i
:☆☆☆
#249 [向日葵]
「加賀さん」
沢口がまっすぐに見つめてくる。
手に持っているかき氷が、ひどく冷たく感じる。
それは段々と麻痺を起こし、持っていると意識しなければ落としてしまいそいになる。
「もう分かってるかもしれないけど、僕は加賀さんが好きです」
茉里は恥ずかしくなってうつむく。
「あ……ありがとう」
小さな消えそうな声でそう言うのが精一杯だった。
:09/06/26 03:53
:SO906i
:☆☆☆
#250 [向日葵]
「加賀さんさえよければ、付き合ってほしいんだ」
沢口を見る。
彼はやっぱり、優しげな笑みを浮かべて茉里を見ている。
出店の明かりで照らされた彼の顔は、皆が騒ぐようにかっこいい。
茉里はぼんやりとそう思った。
神様は、もしかして、今この瞬間、諦めろと言っているのだろうか。
たしかに沢口は嫌な奴じゃない。優しく、いつも自分を気遣ってくれている。
:09/06/26 03:54
:SO906i
:☆☆☆
#251 [向日葵]
微笑まれれば、安心感に包まれる。
私は、宗助とは、結ばれないように出来ていたのかな……。
かき氷を持つ手のように、茉里の気持ちも麻痺しだす。
本当に宗助じゃなきゃ駄目だなんて、もしかすれば錯覚なのかもしれない。
それならば、沢口を選んでもいいのかもしれない……。
「わ……私……は……」
その時、携帯が鳴った。
最初、沢口も茉里も自分のだとはわからなかったが、やがて自分の鞄に手を当てると、自分だと茉里は分かった。
:09/06/26 03:54
:SO906i
:☆☆☆
#252 [向日葵]
「ご、ごめんあの……」
沢口を見ると、にこりと笑って、電話に出るよう促してくれた。
急いで、誰かも確かめずに、急いで出た。
「もしもし」
そう言ったが、向こうから返答がない。
ざわざわと受話器越しに聞こえるから、繋がっているのは確からしい。
聞こえてないのかな?
「もしもし?」
もう1度言う。
「今どこだ」
息が止まる。
:09/06/26 03:54
:SO906i
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#253 [向日葵]
周りの声が、聞こえなくなる。
神経が全て、耳に集中する。
「おい、聞いてるのか」
声を出したいのに、喉の奥で詰まる。
ああ……やっぱりダメだ。
麻痺していた気持ちが、覚醒していく。
どんな事をされても、私はあなたが好きとしか考えられない。
運命じゃないからなんて決めてられない。
運命に逆らってでも、私は今、あなたしか見えないよ。
錯覚なんかじゃ、絶対ない。
「そ……すけ……っ!」
:09/06/26 03:55
:SO906i
:☆☆☆
#254 [向日葵]
思わず泣きそうになってしまう。
「どうした?なんかあったのか?」
茉里の涙声に、宗助は心配する。
「かわ……川沿い……に、いる……」
「わかった。今から行く」
そう言って、宗助は電話を切った。
茉里もゆっくりと携帯を閉じる。そして沢口を見る。
「ごめんなさいっ……。私、諦められない人がいる……。大好きな人がいる……っ」
:09/06/26 03:55
:SO906i
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#255 [向日葵]
最低だ。
甘えるだけ甘えて、私は沢口くんを傷つけた。
それでも、沢口は微笑んだままだった。
少し、寂しそうだけれど。
「そう……。でも、僕も簡単には諦めないから」
「でも、あの……」
「とりあえず、今日は帰るね。加賀さんの求めてる王子様がくるみたいだから」
そう言って、沢口は川沿いを歩いて行ってしまった。
その背中を、小さくなってしまうまで、茉里は見続けた。
気が抜けてしまえば、ポロポロと涙が溢れ始めた。
:09/06/26 03:56
:SO906i
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