こいごころ
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#272 [向日葵]
好きと言ってくれる、その日まで。

――――――――――…………

冬になったら、下校時間が早まるのと、気温のお陰で、お茶用ヤカンが1つに減ってくれるのが嬉しい。

「今日は試合練習?」

宗助に訊ねる。

「まだ決めてない。6時間目がホームルームだから、早く済む奴が多いだろうし、大体の人数が集まってから決める」

最近の宗助は、一段とキャプテンらしくなって、なんだか頼もしい。

⏰:09/07/08 05:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#273 [向日葵]
もともとしっかりはしていたし、誰しもが認めるキャプテンだとは思ってたけれど、それに箔がついて、より格好よく見える。

「あ」

突然、宗助が声をあげる。

「どうかした?」

「加賀、面紐の予備ってあるか?」

「切れそう?」

宗助の面を見れば、確かに紐がいたんでいた。

「探すから、取って待ってて」

救急箱の中に入ってたはずと探してみれば、予想通りやっぱりあった。

⏰:09/07/08 05:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#274 [向日葵]
はさみと紐を持って、宗助の元へと行く。

「良かった。あったあった」

「ありがとう」

慣れた手つきで、面紐をつける。
いらない面紐をジッと見て、茉里が言った。

「これ、もらっちゃダメ?」

「は?」

「いいでしょ?どうせ捨てるなら」

捨てるものだから、尚更どうしてそんなものが欲しいのかと、宗助は首を傾げる。

そんな宗助を気にもせず、鞄に入れる。

⏰:09/07/08 05:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#275 [向日葵]
「なんかさ、宗助の頑張ってきた証のものを持っておけば、自分も強くなれる気がしてさ、お守りにしたいなって、思っちゃったの」

ふわりと茉里は微笑む。
その笑顔を、宗助はジッと見つめる。

ようやく宗助に見られていると気づいた茉里は、宗助の方を見ると、パチッと音がしたんじゃないかってくらいに宗助と目があった。

いつもとは違う宗助の雰囲気に、茉里の胸はどうしようもなくドキドキした。

だんだんと、宗助の顔が近づいて来るのは、見つめすぎてる為の錯覚?

⏰:09/07/08 05:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#276 [向日葵]
それとも……宗助が……。

目を瞑る。
そうしようとした時だった。

「こんにちわー!先輩今日は試合練習ですかー?」

がらりと道場の戸が開けられた瞬間、2人はすごい勢いで離れた。

「ま、まだ決めてない……」

「じゃあ一応、旗とストップウォッチと拍子木の用意しときますねー」

「わ、わ、私、お茶用意してくる……っ」

茉里はやかんを持って、全速力で道場を出る。
その時、今来たところの綾香に当たりそうになった。

⏰:09/07/17 01:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#277 [向日葵]
「わっ!ごめんっ!」

「ま、茉里ちゃんかあ……。びっくりした……。ん?なんか顔赤いよ?大丈夫?」

そう言われて、さっき吸い込まれそうになった宗助の目を思い出す。

だんだん近づいてきて……。

宗助ってまつ毛長いんだとか、のん気に思いながら目を閉じた。

更に、茉里は顔を赤くした。

「だ、大丈夫……っ!」

また走って、ウォータークーラーまで行く。
もうなんの息切れか分からないまま、その場にへたり込む。

⏰:09/07/17 01:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#278 [向日葵]
もしあのまま……なんて考えたら、顔が赤くなってるとか、そんな問題じゃくなりそうで怖い。

思い出せば、胸が苦しい。

でもこのキューッと締め付けるような感覚は嫌いじゃない。
悲しい事があった時の胸の痛みとはまた違う。

しかしいつまでも余韻に浸ってる訳にもいかないので、さっさとやかんに水を入れる。

「――――っ」

「ん?」

どこかで話し声が聞こえてきた。
きになって、辺りを見回す。
しかし他の人たちの話し声と重なったりして、なかなかどこから聞こえてくるか分からない。

⏰:09/07/17 01:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#279 [向日葵]
すると、中庭に通じる道から、男の人が出てきた。
多分1つ上の人。

近くにあったベンチで話していたのかもしれない。
茉里の位置からでは、そのベンチは植え込みがあるせいで見えにくい。

だが、一緒にいただろう人物が、ベンチから立ち上がると誰だか分かった。

千早先輩だった。

後ろ姿だったから、その表情は分からなかったけれど、悲しそうな雰囲気を漂わせていた。

どうしたのだろうと、声をかけようと思い、でもと思い止まる。

どうして、ライバルの心配をしなくちゃならないのかと。

⏰:09/07/17 01:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#280 [向日葵]
茉里はやかんに水を入れて、見て見ぬふりをして、その場をあとにした。

――――――――…………

結局、その日は試合練習となった。

茉里はスコアを黒板に書いたり、時計係をしたり、バタバタとしていたら、さっきの事など忘れつつあった。

「茉里ちゃーん、竹刀削りってどこにあったっけー?」

「ちょっと待ってねー」

練習も終わり、後片付けをしていた茉里が立ち上がると同時に、道場の戸が開いた。

皆が先生かと思い、一瞬ピリッとするが、その人を見た途端、皆は肩の力を抜いた。

⏰:09/07/17 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#281 [向日葵]
「千早先輩ーっ!」

「やー、なんかここに来るのひっさびさだなー」

さっきの悲しい気配はどこへやら。
先輩はからりと笑っている。

「今日は試合しただけ?」

綾香に訊く。

「クリスマスに、毎年恒例の山の中にあるキャンパス使っての大会があるもんで」

「あの相互審判のね。あの大会変に旗が軽かったり重かったりするから嫌なんだよねー。私なんか相手場外出しても反則とられなかったんだよー?」

明るく笑う先輩は、先ほど見た悲しそうな雰囲気なんてまったくなかった。

⏰:09/07/17 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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