こいごころ
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#276 [向日葵]
それとも……宗助が……。
目を瞑る。
そうしようとした時だった。
「こんにちわー!先輩今日は試合練習ですかー?」
がらりと道場の戸が開けられた瞬間、2人はすごい勢いで離れた。
「ま、まだ決めてない……」
「じゃあ一応、旗とストップウォッチと拍子木の用意しときますねー」
「わ、わ、私、お茶用意してくる……っ」
茉里はやかんを持って、全速力で道場を出る。
その時、今来たところの綾香に当たりそうになった。
:09/07/17 01:38
:SO906i
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#277 [向日葵]
「わっ!ごめんっ!」
「ま、茉里ちゃんかあ……。びっくりした……。ん?なんか顔赤いよ?大丈夫?」
そう言われて、さっき吸い込まれそうになった宗助の目を思い出す。
だんだん近づいてきて……。
宗助ってまつ毛長いんだとか、のん気に思いながら目を閉じた。
更に、茉里は顔を赤くした。
「だ、大丈夫……っ!」
また走って、ウォータークーラーまで行く。
もうなんの息切れか分からないまま、その場にへたり込む。
:09/07/17 01:39
:SO906i
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#278 [向日葵]
もしあのまま……なんて考えたら、顔が赤くなってるとか、そんな問題じゃくなりそうで怖い。
思い出せば、胸が苦しい。
でもこのキューッと締め付けるような感覚は嫌いじゃない。
悲しい事があった時の胸の痛みとはまた違う。
しかしいつまでも余韻に浸ってる訳にもいかないので、さっさとやかんに水を入れる。
「――――っ」
「ん?」
どこかで話し声が聞こえてきた。
きになって、辺りを見回す。
しかし他の人たちの話し声と重なったりして、なかなかどこから聞こえてくるか分からない。
:09/07/17 01:39
:SO906i
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#279 [向日葵]
すると、中庭に通じる道から、男の人が出てきた。
多分1つ上の人。
近くにあったベンチで話していたのかもしれない。
茉里の位置からでは、そのベンチは植え込みがあるせいで見えにくい。
だが、一緒にいただろう人物が、ベンチから立ち上がると誰だか分かった。
千早先輩だった。
後ろ姿だったから、その表情は分からなかったけれど、悲しそうな雰囲気を漂わせていた。
どうしたのだろうと、声をかけようと思い、でもと思い止まる。
どうして、ライバルの心配をしなくちゃならないのかと。
:09/07/17 01:39
:SO906i
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#280 [向日葵]
茉里はやかんに水を入れて、見て見ぬふりをして、その場をあとにした。
――――――――…………
結局、その日は試合練習となった。
茉里はスコアを黒板に書いたり、時計係をしたり、バタバタとしていたら、さっきの事など忘れつつあった。
「茉里ちゃーん、竹刀削りってどこにあったっけー?」
「ちょっと待ってねー」
練習も終わり、後片付けをしていた茉里が立ち上がると同時に、道場の戸が開いた。
皆が先生かと思い、一瞬ピリッとするが、その人を見た途端、皆は肩の力を抜いた。
:09/07/17 01:40
:SO906i
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#281 [向日葵]
「千早先輩ーっ!」
「やー、なんかここに来るのひっさびさだなー」
さっきの悲しい気配はどこへやら。
先輩はからりと笑っている。
「今日は試合しただけ?」
綾香に訊く。
「クリスマスに、毎年恒例の山の中にあるキャンパス使っての大会があるもんで」
「あの相互審判のね。あの大会変に旗が軽かったり重かったりするから嫌なんだよねー。私なんか相手場外出しても反則とられなかったんだよー?」
明るく笑う先輩は、先ほど見た悲しそうな雰囲気なんてまったくなかった。
:09/07/17 01:40
:SO906i
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#282 [向日葵]
あの時、声をかけなくて良かった。
やっぱりなんともないじゃないか。
「宗助」
先輩が宗助を呼ぶ。
「なんですか?」
「ちょっといい?」
そう言われて、少しためらった宗助は、茉里がいるところまで来る。
「すぐ終わるから、校門で待ってて」
待っててなんて初めて言われたから、茉里は嬉しくなる。
大きく頷いて、道場をあとにした。
――――――――…………
「先輩別れたんでしょうかね?」
後輩がポツリと言った。
:09/07/17 01:40
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#283 [向日葵]
「別れた?」
綾香が訊く。
「千早先輩カップルって、結構有名なんですよ。でこの頃ケンカと言うか、もめてる所を目撃してる人多くて。なんで、ついに別れてしまったのかなーって」
あんなに明るかったのに?
まさか。
茉里は帰る支度をしながら少し悪態づいてみる。
「でも、今日の先輩、なんだかカラ元気って感じしませんでした?目だって赤くなってた気もしますし」
そんな細かいところまできにしてられないよ。
そう思いながら、ふと思う。
:09/07/17 01:41
:SO906i
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#284 [向日葵]
もし、自分が宗助を好きではなかったら、きっとこの会話に加わっているんだろうなと。
人って本当に勝手だな……。
「―――……ね?茉里ちゃん」
「えっ……。えっと、なに?」
「茉里ちゃんは笹部くんと付き合って結構になるよね?」
え。
「な、なに言って……っ!私、宗助と付き合ってないよっ!」
それを聞いて、皆一斉に「えーっ!?」と叫んだ。
「だって、毎日好きだって言ってるんでしょ?噂で聞いたよ?」
:09/07/17 01:41
:SO906i
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#285 [向日葵]
「しかもこの頃めちゃくちゃ雰囲気いいじゃないですか」
そんなことを言われても、自分は正式には仮彼女だ。
未だそこから進展はない。
でも……と、今日道場であった出来事を思い出す。
あれは絶対、キスしようとしたよね?
もしかすれば、近いうちに昇格する確立が?
なら、こうしちゃいられない。
鞄を持ち、更衣室を出る。
「あー!逃げるの反則!」
皆からブーイングの嵐。
「その話はまた今度!」
茉里は走って校門まで行く。
:09/07/17 01:41
:SO906i
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