こいごころ
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#282 [向日葵]
あの時、声をかけなくて良かった。
やっぱりなんともないじゃないか。

「宗助」

先輩が宗助を呼ぶ。

「なんですか?」

「ちょっといい?」

そう言われて、少しためらった宗助は、茉里がいるところまで来る。

「すぐ終わるから、校門で待ってて」

待っててなんて初めて言われたから、茉里は嬉しくなる。

大きく頷いて、道場をあとにした。

――――――――…………

「先輩別れたんでしょうかね?」

後輩がポツリと言った。

⏰:09/07/17 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#283 [向日葵]
「別れた?」

綾香が訊く。

「千早先輩カップルって、結構有名なんですよ。でこの頃ケンカと言うか、もめてる所を目撃してる人多くて。なんで、ついに別れてしまったのかなーって」

あんなに明るかったのに?
まさか。

茉里は帰る支度をしながら少し悪態づいてみる。

「でも、今日の先輩、なんだかカラ元気って感じしませんでした?目だって赤くなってた気もしますし」

そんな細かいところまできにしてられないよ。

そう思いながら、ふと思う。

⏰:09/07/17 01:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#284 [向日葵]
もし、自分が宗助を好きではなかったら、きっとこの会話に加わっているんだろうなと。

人って本当に勝手だな……。

「―――……ね?茉里ちゃん」

「えっ……。えっと、なに?」

「茉里ちゃんは笹部くんと付き合って結構になるよね?」

え。

「な、なに言って……っ!私、宗助と付き合ってないよっ!」

それを聞いて、皆一斉に「えーっ!?」と叫んだ。

「だって、毎日好きだって言ってるんでしょ?噂で聞いたよ?」

⏰:09/07/17 01:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#285 [向日葵]
「しかもこの頃めちゃくちゃ雰囲気いいじゃないですか」

そんなことを言われても、自分は正式には仮彼女だ。
未だそこから進展はない。

でも……と、今日道場であった出来事を思い出す。

あれは絶対、キスしようとしたよね?
もしかすれば、近いうちに昇格する確立が?
なら、こうしちゃいられない。
鞄を持ち、更衣室を出る。

「あー!逃げるの反則!」

皆からブーイングの嵐。

「その話はまた今度!」

茉里は走って校門まで行く。

⏰:09/07/17 01:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#286 [向日葵]
するともう宗助がいた。

「宗助、お待たせー!」

少し離れたところから声をかける。が、宗助に聞こえてないのか、反応がない。
近くに来ても、まだ反応がない。

「宗助?」

宗助の目の前で手を降りながら呼びかけると、ようやく気づいた。

「どうしたの?」

「あ、いや……別に」

「寒かった?」

宗助の頬に手を当てる。
冷たかった。

⏰:09/07/22 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#287 [向日葵]
そんなに待たせてしまったのだろうか。

考えていると、宗助はその手をやんわりとのけて、歩き出した。

どうも様子がおかしい。

後をついて行く。

なんとなく喋れなくて、茉里も黙ったまま歩く。
さっきまで雪が降っていたので、道には雪が積もっている。

歩けば、雪独特のシンとした静寂と、さくさく雪を踏む音だけが聞こえた。

「そ、宗助っ……!」

あまりに沈黙が長く、耐えられなくなった茉里は、口を開いた。

⏰:09/07/22 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#288 [向日葵]
宗助はこちらを向かず、ぴたりと止まった。

「手、寒いんだけど……な……」

いつもの台詞。
こう言えば、しょうがないなって顔をしながらも、宗助はちゃんと手を繋いでくれる。

しかし、今日は違った。

宗助は、やっぱり黙ったままだ。

「そ、そうす……」

「分からない」

茉里の言葉を遮るように、宗助は口を開いた。

宗助はゆっくりと茉里の方に体を向ける。

⏰:09/07/22 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#289 [向日葵]
街灯に照らされた宗助の顔は、悲しさと苦しさが混じった、複雑な表情をしていた。

「俺は、先輩が好きだと思ってた。はっきり言って、アンタなんか、絶対好きになんかならないって……思ってた」

なんの話?

そう思っても、茉里は口を挟まず、静かに聞いていた。

「でも……最近は違う。アンタの事、考えることの方が、多くなってきた……」

これは、告白?

そう思うが、なんだか違うと思った。
告白は、こんなに緊迫したムードはない。

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#290 [向日葵]
いや、あるのだけれど、何かが違う。

「正直好きなのかもしれない」

それを聞いて、茉里は息を止める。

宗助が……私を?

しかし、喜ぶのはまだ早かった。

「でも俺は、そんな俺が許せない」

え……。

「先輩の事、その程度だったのか?いや違う、でも……って、何度も自問自答する。俺は、自分の気持ちをうまく整理出来ないん。きっと俺は、アンタが満足するような答えなんて、出せないんだ……っ!先輩を諦めるなんて、絶対無理なんだ……っ!」

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#291 [向日葵]
宗助は泣くのではないかと思うくらいの、しぼり出した声で、そう告げた。

そして茉里は気づいてしまった。

こんなに、宗助を苦しめているのは、自分だと。

自分が無理矢理「仮彼女にしろ」だなんて言ってしまったから、宗助は、ずっとずっと、苦しんでいたんだ。

それに気づかず、何が彼女に昇格……だ。

「アンタを、もう傷つけたくない……。気持ちに、嘘つけないんだ……っ」

宗助は嘘なんてついた事ない。

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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