こいごころ
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#282 [向日葵]
あの時、声をかけなくて良かった。
やっぱりなんともないじゃないか。
「宗助」
先輩が宗助を呼ぶ。
「なんですか?」
「ちょっといい?」
そう言われて、少しためらった宗助は、茉里がいるところまで来る。
「すぐ終わるから、校門で待ってて」
待っててなんて初めて言われたから、茉里は嬉しくなる。
大きく頷いて、道場をあとにした。
――――――――…………
「先輩別れたんでしょうかね?」
後輩がポツリと言った。
:09/07/17 01:40
:SO906i
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#283 [向日葵]
「別れた?」
綾香が訊く。
「千早先輩カップルって、結構有名なんですよ。でこの頃ケンカと言うか、もめてる所を目撃してる人多くて。なんで、ついに別れてしまったのかなーって」
あんなに明るかったのに?
まさか。
茉里は帰る支度をしながら少し悪態づいてみる。
「でも、今日の先輩、なんだかカラ元気って感じしませんでした?目だって赤くなってた気もしますし」
そんな細かいところまできにしてられないよ。
そう思いながら、ふと思う。
:09/07/17 01:41
:SO906i
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#284 [向日葵]
もし、自分が宗助を好きではなかったら、きっとこの会話に加わっているんだろうなと。
人って本当に勝手だな……。
「―――……ね?茉里ちゃん」
「えっ……。えっと、なに?」
「茉里ちゃんは笹部くんと付き合って結構になるよね?」
え。
「な、なに言って……っ!私、宗助と付き合ってないよっ!」
それを聞いて、皆一斉に「えーっ!?」と叫んだ。
「だって、毎日好きだって言ってるんでしょ?噂で聞いたよ?」
:09/07/17 01:41
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#285 [向日葵]
「しかもこの頃めちゃくちゃ雰囲気いいじゃないですか」
そんなことを言われても、自分は正式には仮彼女だ。
未だそこから進展はない。
でも……と、今日道場であった出来事を思い出す。
あれは絶対、キスしようとしたよね?
もしかすれば、近いうちに昇格する確立が?
なら、こうしちゃいられない。
鞄を持ち、更衣室を出る。
「あー!逃げるの反則!」
皆からブーイングの嵐。
「その話はまた今度!」
茉里は走って校門まで行く。
:09/07/17 01:41
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#286 [向日葵]
するともう宗助がいた。
「宗助、お待たせー!」
少し離れたところから声をかける。が、宗助に聞こえてないのか、反応がない。
近くに来ても、まだ反応がない。
「宗助?」
宗助の目の前で手を降りながら呼びかけると、ようやく気づいた。
「どうしたの?」
「あ、いや……別に」
「寒かった?」
宗助の頬に手を当てる。
冷たかった。
:09/07/22 02:18
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#287 [向日葵]
そんなに待たせてしまったのだろうか。
考えていると、宗助はその手をやんわりとのけて、歩き出した。
どうも様子がおかしい。
後をついて行く。
なんとなく喋れなくて、茉里も黙ったまま歩く。
さっきまで雪が降っていたので、道には雪が積もっている。
歩けば、雪独特のシンとした静寂と、さくさく雪を踏む音だけが聞こえた。
「そ、宗助っ……!」
あまりに沈黙が長く、耐えられなくなった茉里は、口を開いた。
:09/07/22 02:18
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#288 [向日葵]
宗助はこちらを向かず、ぴたりと止まった。
「手、寒いんだけど……な……」
いつもの台詞。
こう言えば、しょうがないなって顔をしながらも、宗助はちゃんと手を繋いでくれる。
しかし、今日は違った。
宗助は、やっぱり黙ったままだ。
「そ、そうす……」
「分からない」
茉里の言葉を遮るように、宗助は口を開いた。
宗助はゆっくりと茉里の方に体を向ける。
:09/07/22 02:18
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#289 [向日葵]
街灯に照らされた宗助の顔は、悲しさと苦しさが混じった、複雑な表情をしていた。
「俺は、先輩が好きだと思ってた。はっきり言って、アンタなんか、絶対好きになんかならないって……思ってた」
なんの話?
そう思っても、茉里は口を挟まず、静かに聞いていた。
「でも……最近は違う。アンタの事、考えることの方が、多くなってきた……」
これは、告白?
そう思うが、なんだか違うと思った。
告白は、こんなに緊迫したムードはない。
:09/07/22 02:19
:SO906i
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#290 [向日葵]
いや、あるのだけれど、何かが違う。
「正直好きなのかもしれない」
それを聞いて、茉里は息を止める。
宗助が……私を?
しかし、喜ぶのはまだ早かった。
「でも俺は、そんな俺が許せない」
え……。
「先輩の事、その程度だったのか?いや違う、でも……って、何度も自問自答する。俺は、自分の気持ちをうまく整理出来ないん。きっと俺は、アンタが満足するような答えなんて、出せないんだ……っ!先輩を諦めるなんて、絶対無理なんだ……っ!」
:09/07/22 02:19
:SO906i
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#291 [向日葵]
宗助は泣くのではないかと思うくらいの、しぼり出した声で、そう告げた。
そして茉里は気づいてしまった。
こんなに、宗助を苦しめているのは、自分だと。
自分が無理矢理「仮彼女にしろ」だなんて言ってしまったから、宗助は、ずっとずっと、苦しんでいたんだ。
それに気づかず、何が彼女に昇格……だ。
「アンタを、もう傷つけたくない……。気持ちに、嘘つけないんだ……っ」
宗助は嘘なんてついた事ない。
:09/07/22 02:19
:SO906i
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