こいごころ
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#286 [向日葵]
するともう宗助がいた。

「宗助、お待たせー!」

少し離れたところから声をかける。が、宗助に聞こえてないのか、反応がない。
近くに来ても、まだ反応がない。

「宗助?」

宗助の目の前で手を降りながら呼びかけると、ようやく気づいた。

「どうしたの?」

「あ、いや……別に」

「寒かった?」

宗助の頬に手を当てる。
冷たかった。

⏰:09/07/22 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#287 [向日葵]
そんなに待たせてしまったのだろうか。

考えていると、宗助はその手をやんわりとのけて、歩き出した。

どうも様子がおかしい。

後をついて行く。

なんとなく喋れなくて、茉里も黙ったまま歩く。
さっきまで雪が降っていたので、道には雪が積もっている。

歩けば、雪独特のシンとした静寂と、さくさく雪を踏む音だけが聞こえた。

「そ、宗助っ……!」

あまりに沈黙が長く、耐えられなくなった茉里は、口を開いた。

⏰:09/07/22 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#288 [向日葵]
宗助はこちらを向かず、ぴたりと止まった。

「手、寒いんだけど……な……」

いつもの台詞。
こう言えば、しょうがないなって顔をしながらも、宗助はちゃんと手を繋いでくれる。

しかし、今日は違った。

宗助は、やっぱり黙ったままだ。

「そ、そうす……」

「分からない」

茉里の言葉を遮るように、宗助は口を開いた。

宗助はゆっくりと茉里の方に体を向ける。

⏰:09/07/22 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#289 [向日葵]
街灯に照らされた宗助の顔は、悲しさと苦しさが混じった、複雑な表情をしていた。

「俺は、先輩が好きだと思ってた。はっきり言って、アンタなんか、絶対好きになんかならないって……思ってた」

なんの話?

そう思っても、茉里は口を挟まず、静かに聞いていた。

「でも……最近は違う。アンタの事、考えることの方が、多くなってきた……」

これは、告白?

そう思うが、なんだか違うと思った。
告白は、こんなに緊迫したムードはない。

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#290 [向日葵]
いや、あるのだけれど、何かが違う。

「正直好きなのかもしれない」

それを聞いて、茉里は息を止める。

宗助が……私を?

しかし、喜ぶのはまだ早かった。

「でも俺は、そんな俺が許せない」

え……。

「先輩の事、その程度だったのか?いや違う、でも……って、何度も自問自答する。俺は、自分の気持ちをうまく整理出来ないん。きっと俺は、アンタが満足するような答えなんて、出せないんだ……っ!先輩を諦めるなんて、絶対無理なんだ……っ!」

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#291 [向日葵]
宗助は泣くのではないかと思うくらいの、しぼり出した声で、そう告げた。

そして茉里は気づいてしまった。

こんなに、宗助を苦しめているのは、自分だと。

自分が無理矢理「仮彼女にしろ」だなんて言ってしまったから、宗助は、ずっとずっと、苦しんでいたんだ。

それに気づかず、何が彼女に昇格……だ。

「アンタを、もう傷つけたくない……。気持ちに、嘘つけないんだ……っ」

宗助は嘘なんてついた事ない。

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#292 [向日葵]
ずっと、一途に、先輩だけを見ていた。

むしろ嘘をついていたのは自分だ。

一途は悪い事じゃない。
そう言っておきながら、先輩に一途である宗助をずっと許せなかった。
好いてもらいたくて、綺麗事を並べた。

仮彼女制度は、ただ単に諦めるように仕向けたものだったと、今気づいた。

「……今日、先輩と、なんの話してたの?」

静かな問いかけに、宗助はハッとした。

⏰:09/07/22 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#293 [向日葵]
茉里は声音と同じくらい、静かな表情で宗助を見ていたが、不思議と、視線は温かかった。

「彼氏と別れたから、ちょっとそばで泣かせてくれって……。今も、多分1人で泣いてる」

それで、茉里が来た時、気づかなかったのだ。

先輩を、気にして。

「戻ってきなよ」

その言葉に、宗助は驚く。
また雪が降ってきた。

茉里はマフラーを巻き直し、手を繋ぐ為に隠していた手袋を出す。
「仮彼女は、もういいからさ。解除。これで宗助は、私に縛られる事はないよ」

⏰:09/07/22 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#294 [向日葵]
さらりとした言い方に、宗助は戸惑う。

「でも、今日は一緒に」

「だめ!先輩を慰めるのは、宗助の仕事でしょ!」

腰に手を当て、宗助を見上げる。
それでもまだ、宗助が迷っているので、茉里はフッと笑う。

「あのね、失恋ごときで落ち込まないから。何回もフラれた経験はあるの。自慢じゃないけどね」

茉里は宗助の横を通りすぎて、駅へと歩き出す。

「じゃ、まった明日ー!」

前を向いて歩いたまま、宗助に手をふる。

⏰:09/07/22 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#295 [向日葵]
自分の足音とは別の足音が、だんだんと遠くなる。

少しして振り向けば、宗助が来た道を引き返していた。
その背中を見ていた茉里の目から、一筋の涙が流れる。

「……ありがとう」

重いから別れてくれと言われ続けてきた自分に、重いと1度も言わず、重いという理由で自分を選ばなかったわけじゃなかった宗助。
そんな人、初めてだったよ。

本当に茉里自身を見てくれた。

今、流れる涙が、悲しい涙じゃなく、嬉しい涙だと言い聞かす。

だって、宗助は悪くないもの。

⏰:09/07/22 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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