こいごころ
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#301 [向日葵]
こんな顔をさせるのを、茉里は望まない。
いつだって、相手に罪悪感を抱かせないように、笑ってた。
頑張って、本当に欲しいものを我慢した。
それでめ、ミュシャの怒りがおさまるわけではない。
「自分が許せないなんて被害者ぶらないで。一番、中途半端な事をして、辛い思いをさせるだけさしたのはアンタよ!」
宗助はなにも言わない。
口を真一文字に結んで、下を向いている。
「結局、アンタは茉里を利用したのよ」
宗助の肩が、少しだけピクリと動く。
:09/07/31 03:44
:SO906i
:☆☆☆
#302 [向日葵]
「自分の心の傷が少しでもいたくならないように、どうでもいい奴に甘えて、自分を守ったのよ」
「どうでもいいなんて俺は……っ」
「言い訳なんてしないでっ!」
宗助の言葉は遮られた。
ミュシャを見ると、蜜色の目が少しだけ潤んでいた。
口も少し、わなわなと震えている。
そんなミュシャに、宗助はもう口を開く事は出来なかった。
茉里とミュシャがどれだけ仲が良いのかは知らない。
でも2人もいつも一緒にいるから、親友だと言えるくらい仲が良いのだろう。
:09/07/31 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#303 [向日葵]
そんな大切な友達が傷つけられて、しかもそれをそばで見ているのは、辛いだろうと分かるから、宗助はミュシャを見つめるしか出来なかった。
「どんなに茉里に対して贔屓だと思われたっていい……。とにかく私はアンタを許さない。2度と、茉里に思わせぶりなことしないで。アンタに次なんて……ないんだからね」
最後にドンと宗助の胸を軽く拳で叩いてから、ミュシャは教室に入った。
宗助はその場から動けず、ただあの日、最後に見た茉里の悲しそうな笑顔を思い出した。
:09/07/31 03:45
:SO906i
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#304 [向日葵]
この先、彼女の悲しみを癒してあげられるのは、誰なんだろう。
何故かその事ばかり、頭の中を回る。
そんな事、思う権利なんてないのに。
どうかしてる……。
―――――――――…………
一足早く、道場に来た茉里。
宗助はしばらくの休みで友達と別れるのが寂しいのか、茉里と2人きりになるのが気まずいのか分からないけれど、宗助とは別々にきた。
今11時半。練習は12時半からだ。
:09/07/31 03:45
:SO906i
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#305 [向日葵]
きっとまだ誰も来ていない。
お昼ご飯を買いに行ったり、まだ教室にいたり。
だから自分が一番だろうとおもっていた、が、道場の戸が開いていた。
誰か来てるの?
道場に入る茉里。
しかしそこにいたのは、今一番、会いたくない人物だった。
「あ、茉里ちゃん、こんにちわ」
爽やかな笑顔に、茉里の胸はかき乱される思いがした。
「……どうしたんですか……」
「皆とご飯食べたいなって思って。練習は何時から?」
:09/07/31 03:45
:SO906i
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#306 [向日葵]
「……あと1時間くらいです」
「そっかー。じゃあもうちょって待とっと」
茉里は一緒にいたくないので、更衣室にでも行こうと思って、踵を返した。
「あ!茉里ちゃん、この前はごめんね」
足を止める。
この前?
思い当たる事がいっぱいありすぎて、もうどれの事を言ってるかすら分からない。
謝ってほしいというか、嫌な思いをしたことなんて何度もあったから。
:09/07/31 03:46
:SO906i
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#307 [向日葵]
「何がですか……」
「一昨日。宗助と一緒に帰ってるのに宗助取っちゃって」
「べつに……私は……」
「いつ頃から?付き合ってるんでしょ?」
耳を疑った。
何を言ってるの?
茉里の胸が、怒りで熱くなる。
その熱をくすぶらせたまま、言葉を発する。
「付き合ってません」
それだけを言うのが精一杯だった。
感情をコントロールする事に目一杯意識を集中させる。
:09/08/06 21:36
:SO906i
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#308 [向日葵]
「そうなの?てっきり……」
先輩は心底驚いた顔をする。
先輩はそんなつもりないのかもしれないが、わざとらしささえ感じるその態度に、茉里は拳を握りしめる。
そんな茉里に気づかず、先輩は子供のように好奇心に満ちた目で茉里を見る。
「でも茉里ちゃんは好きなんだよね?見てたら分かるっていうかさー」
見てたら……分かる……?
茉里は小馬鹿にされたように感じた。
気づいてるくせに、宗助に抱き締められたり、相談してたって言うの?
:09/08/06 21:36
:SO906i
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#309 [向日葵]
なにそれ。
人の気持ちを知っておきながらそんな態度をとるなんて……。
信じられない気持ちでいっぱいになる。
握りしめた拳が、震えはじめる。爪が掌に食い込んでも、痛いと感じない程に、茉里は全身怒りで覆い尽くされていた。
「宗助もまんざらでもないと思うんだよねー。いつも茉里ちゃんの事を気にしてるし」
宗助がいつ、自分の事を気にしていただろうか。
彼の視線の先には、いつでも先輩がいた。
あの雪の中で言った、宗助の悲痛な声。
:09/08/06 21:36
:SO906i
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#310 [向日葵]
今でも耳に残っているくらい、忘れられないものだった。
それを、この人は知らない。
知らずに、気持ちをもてあそぶようにして無邪気に接して、無邪気に傷をえぐる。
もう出そうになりそうだった「待って」や「行かないで」といったいくつもの言葉を飲み込んだ私を、この人は……知らずに、笑っているんだ。
「宗助、優しくていい子だよね。きっと茉里ちゃんとお似合い……」
音が道場に響く。
え……。何の音……?
目の前に、頬をおさえてる先輩。
:09/08/06 21:37
:SO906i
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