こいごころ
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#316 [向日葵]
「か、加賀……っ!ちょっと待って!」

思わず宗助は茉里の腕を掴む。
茉里の顔を見ると、今にも大声で泣いてしまいそうな顔をしていて、宗助は驚いた。

こんな顔をしているのは先輩と何かあったからか?
それとも自分が……?

何も言えず、静寂が2人を包む。

「……ごめん」

しばらくして、茉里が呟くように言った。
ちゃんと耳をすまさなければ、聞こえないくらいの音量だ。

「なにが……?」

出来るだけ怖がらせないよう、宗助は茉里に優しく問いかける。

⏰:09/08/06 21:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#317 [向日葵]
しかし、茉里は答えない。

「加賀?」

「……ごめん……」

2回謝った茉里は、静かに宗助の手をほどいた。
自分の鞄から小さめのタオルを取り出し、洗面所で濡らした。
ゆるめに絞って、それを宗助に渡した。

「なに?」

「先輩のほっぺ……。わたしてくるといいよ」

鞄を持った茉里は、道場を出ようとする。

「加賀っ!」

再び宗助が茉里をとめる。

唇をかみ、茉里は出来るだけ明るい声を出そうとする。

⏰:09/08/14 03:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#318 [向日葵]
声が震えてしまわないよう、意識しながら。

「綺麗な顔に、傷つくっちゃったから、早く冷やしてあげて」

惨めな気持ちが、胸を埋め尽くす。
きっと今、ひどい顔してるに違いない。
でも、笑顔になれなんて、そんなことできっこなかった。

―――――――――…………

今日は練習少なめで、後は明日の準備に時間を費やした。

「加賀」

先生が茉里を呼び、メモを渡す。

「コールドスプレーとテーピング、きれてるから買っといてくれ」

⏰:09/08/14 03:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#319 [向日葵]
「はい、帰りに防具屋さんに寄ります」

メモを片手に、道場をあとにする。
すると戸を出たところで、宗助がまた茉里を引きとめた。
早いことに、もう着替えている。

「なに?」

さすがに茉里は眉を寄せた。

「……一緒に、帰らないか」

「私、買い物が」

「ついて行く」

「なんで?なにがしたいの?」

「なにがって……」

困惑する宗助を見て、茉里の心は嫌な気分でいっぱいになった。

⏰:09/08/14 03:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#320 [向日葵]
罪悪感があるとかで優しくするならやめてほしい。
そんなのいらない。
欲しいのは……そんな事、今更か……。

気持ちが欲しくても、欲しがることは宗助を傷つけるだけだと分かったから、自分は引き下がった。

いっそ、冷たく引き離した方が、宗助にも、自分にも、為になるかもしれない。

「一昨日のことをまだうじうじ悩んでるわけ?」

それは自分だ。

「馬鹿じゃない?」

それも自分だ。

⏰:09/08/14 03:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#321 [向日葵]
「そんなこと心配してる時間があるなら、先輩と付き合う作戦でも考えなさいよ!」

宗助の顔が、痛そうに歪む。
だから茉里も怯むが、これも自分たちの為だと思えば、心を鬼に出来た。

宗助にもう苦しんでほしくはない。
そんな悲しい目でもう見ないで。
悲しい声で呼ばないで。

その度、流したりない涙が流れそうだから。

「私たちはただのクラスメート兼同じ部の仲間。ただそれだけ。これ以上、私に変な気まわさないで」

⏰:09/08/14 03:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#322 [向日葵]
それだけ言うと、茉里は逃げるように宗助から離れた。

茉里の姿が見えなくなるまで、宗助はそこにたたずんでいた。

宗助には分かっていた。
素っ気ない態度の理由も、強い喧嘩腰の口調の理由も。

父親のことで傷ついた茉里。

彼女はその痛みを表には出さなかった。
しかしそれは耐えていたのだとあとから分かった。

彼女のそういった態度は、心の深いところで傷ついてる証拠なのだ。

胸が軋む。

⏰:09/08/14 03:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#323 [向日葵]
それだけ自分は彼女を傷つけたということだ。

傷つけたくない、利用なんかしていない。
そう言っても、最終的にはそういう結果になってしまったのかもしれない。

でも加賀。
昼間のゴメンは、一体なんの謝罪……?

――――――――…………

見事な晴れ具合。
そして腫れ具合……。

鏡を見て驚いた。

目が、いつもの1.5倍……。

昨日、帰ってきてからほぼ部屋で泣いていた。

⏰:09/08/14 03:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#324 [向日葵]
そしていつの間にか寝てしまって、起きたらこれだ。

某ドラマの人物ではないが「なんじゃこりゃ」と言わずにはいられない事になっていた。

そしてこの嫌味な程の快晴ぶり。寒い体を温めてくれる太陽すらうっとおしく感じる。

しかも今日、出がけに母が言った。

[お父さんが今日ディナー行こうって。茉里は?]

行くわけがない。

「試合なのに無理に決まってるでしょ。2人で行ってきなよ。外で食べるし」

って、んなわけない。

⏰:09/08/14 03:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#325 [向日葵]
何が悲しくてクリスマスを祝うカップルで溢れかえっている街にご飯を、しかも1人で食べなきゃならんか。

家でも1人、自分は1人か……。

苦笑しながら、集合時間に間に合うように行った。

駅周辺は自分たちと同じように防具を持った人がちらほらいた。
そして待っていれば、だんだんと皆が集まる。

宗助も、やってきた。

でも茉里は気づかないフリをした。
目を合わせば、自分がどんな顔をしているか容易に想像出来る。

フと、鞄の中を見る。

⏰:09/08/14 03:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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