こいごころ
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#376 [向日葵]
「それが嬉しくてね。私はつい、宗助に甘えちゃったの。宗助はわかってくれる、宗助にだけなら本当の自分を出しちゃえってね……。でも、これだけはわかってね」
スカートの上に置いていた茉里の冷えた手の上に先輩の手が重なり、優しく包む。
「宗助が好きなのは、やっぱり茉里ちゃんなの」
それを聞いて、茉里は一瞬固まるが、すぐに勢いよく首を横に振る。
「そんな、わけな……っ、宗助はずっと……」
「ねえ茉里ちゃん、茉里ちゃんが変質者に襲われそうになった時のこと覚えてる?」
丁度、梅雨の頃の話だ。
:09/11/01 17:31
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#377 [向日葵]
間一髪で、宗助が助けてくれたあの時。
しかし、茉里はアレ?と思った。変質者に襲われたのを知っているのは助けてくれた宗助、そして友人のミュシャ。
どうして先輩が?
そう顔に書いてあったのか、先輩は答えてくれた。
「実はね、私たまたまそれ見たのよ。ほら、駅のホームって途中から屋根がなくなって、壁が鉄格子になってるところあるでしょ?」
茉里たちの最寄り駅は、電車の先頭に乗車する場所のホームは、先輩がいうような状態になっており、鉄格子越しには、学校から駅までの通学路が見える。
:09/11/01 17:32
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#378 [向日葵]
「最初見たとき、雨降ってるわ暗いわ遠いわで、何をしてるかわからなくてね。でもよくよく見れば様子がおかしくて、思わず助けようと鉄格子登ろうと思ったのよ。……そしたら」
「宗助が……来てくれた」
先輩の続きを茉里が繋げ、先輩は頷いた。
「じゃあ宗助は、先輩よりも早く鉄格子を……?」
その茉里の問いに、先輩はきょとんとした。
確かその時、宗助と先輩は一緒に帰ったはずだった。
「え?宗助から聞いてない?宗助、私を駅までの送ってくれた後、道を引き返したのよ」
え……。
:09/11/01 17:32
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#379 [向日葵]
「でも、私、あの日デパートに行くって……」
「あれ、茉里ちゃん気づかなかった?自転車置き場の前通り過ぎた時、私たち丁度その向かいの外にいたのよ」
デパート側ではないもう1つの通学路は、道と自転車置き場が平行にあり、その間をフェンスでしきっているだけのため、学校の中が見えるようになっている。
傘と、落ち込んでいたので足元しか見ていなかったのが重なり、茉里は2人に気づけなかったらしい。
「私、先生に用事があったのを思い出して、正門近くから引き返して校舎に一旦帰ったのよ。だからその時間差も……。って、茉里ちゃん私より早く更衣室出てなかったっけ?」
:09/11/01 17:32
:SH05A3
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#380 [向日葵]
更衣室に先輩が入ったのが早くても、もともと着替える必要のない茉里の方が早いのは当たり前で、その時の茉里の複雑な気持ちなんて知る由もない先輩は、デパートに行ったはずの茉里が校内に残っているのが、ただただ不思議だった。
ああ……なんてあほらしいの……。
思わず茉里は頭を抱える。
「……それは、いずれ話ます……」
「うん、ありがとう。だからね、きっと宗助はその時から茉里が気になって仕方なかったのよ。だって、宗助言ったもの」
[先輩、加賀が心配なので、戻ってもいいですか?]
その言葉に、、茉里は目を真ん丸に見開く。
勘のいい宗助だから、茉里がデパートに行かない事もお見通しだったのかもしれない。
:09/11/01 17:33
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#381 [向日葵]
なによ……。
心配なんてしてないみたいに言ってたくせに……。
県大会の帰り道、宗助が何故あの場所にいたかを訊いた時のことだ。
宗助は、嘘でも心配なんて言ったら、茉里が調子のる、だから内緒だと言ったのだ。
なによ……なによ……。
結局宗助は、いつもそうやって自分を気にかけてくれてたんじゃないか。
うそつき。
好きになる保障なんてないって、断言したのは、誰よ。
そんなに心配してもらってただなんて、私……。
「知らなかった……」
宗助の気持ちを、1番理解出来ていなかったのは、自分だ。
:09/11/01 17:34
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#382 [向日葵]
「あの子の気持ち、もし伝えてきたら、受け止めて、茉里ちゃんなりの正直な気持ちを答えてやってね」
そうやって笑う先輩の笑顔は、今度は悔しいなんて思わず、心から綺麗だと思えた。
―――――――――…………
試合も終わり、全員解散した後、またバスに乗って帰る。
街はイルミネーションで彩られ、そこで今日がクリスマスだったことを思い出した。
きっと今頃、茉里の両親はディナーで幸せなひとときを過ごしているのだろう。
:09/11/23 23:18
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#383 [向日葵]
娘はボロボロなのに……。
少し恨めしい……。
「ねー、皆でなんか食べて帰ろうよー」
駅に着いてから綾香が言った。
私も帰ったところでな……
「行く人おー」
ほとんどが手を挙げる。
もちろん茉里も挙げる、つもりだった。
挙げるつもりだった手は、途中で止められた。
「悪い、俺たち用事があるから」
そう言って、止められた手をそのまま握られ、引っ張られる。
:09/11/23 23:18
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#384 [向日葵]
茉里は思考がついていけずにいた。
だって引っ張ってるのは。
「そ、そうすけ……っ!」
さっさと切符を買い、帰る方面のホームへ、宗助は一言も話さず引っ張っていく。
少し強引なくらいに。
一同は口を開けてポカンといった風な表情で2人を見送る。
こんな事をしてしまえば、きっと次の稽古ではからかわれる。
宗助が好まない状況になる。
それでも宗助は止まってくれず、あまり人が乗らないだろう乗車位置の場所で、ようやく止まってくれた。
:09/11/23 23:19
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#385 [向日葵]
息があがる茉里。
男子と女子とでは歩幅が違う。
そんな些細な事すら気にしないくらい、何かに没頭していただろう宗助は、未だ茉里の手を握ったままだ。
「……な、なに……」
「言わなきゃ、ならないことを、言っておかなきゃならないと思ったから……」
息と共に、動悸も早くなってくる。
じっと見つめられれば、息が止まる。
そんなにじっと、みつめないでほしい。
ちゃんと目が見れないじゃない……。
「今日言ったことは、忘れて」
:09/11/23 23:19
:SH05A3
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