こいごころ
最新 最初 🆕
#376 [向日葵]
「それが嬉しくてね。私はつい、宗助に甘えちゃったの。宗助はわかってくれる、宗助にだけなら本当の自分を出しちゃえってね……。でも、これだけはわかってね」

スカートの上に置いていた茉里の冷えた手の上に先輩の手が重なり、優しく包む。

「宗助が好きなのは、やっぱり茉里ちゃんなの」

それを聞いて、茉里は一瞬固まるが、すぐに勢いよく首を横に振る。

「そんな、わけな……っ、宗助はずっと……」

「ねえ茉里ちゃん、茉里ちゃんが変質者に襲われそうになった時のこと覚えてる?」

丁度、梅雨の頃の話だ。

⏰:09/11/01 17:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
間一髪で、宗助が助けてくれたあの時。

しかし、茉里はアレ?と思った。変質者に襲われたのを知っているのは助けてくれた宗助、そして友人のミュシャ。

どうして先輩が?

そう顔に書いてあったのか、先輩は答えてくれた。

「実はね、私たまたまそれ見たのよ。ほら、駅のホームって途中から屋根がなくなって、壁が鉄格子になってるところあるでしょ?」

茉里たちの最寄り駅は、電車の先頭に乗車する場所のホームは、先輩がいうような状態になっており、鉄格子越しには、学校から駅までの通学路が見える。

⏰:09/11/01 17:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
「最初見たとき、雨降ってるわ暗いわ遠いわで、何をしてるかわからなくてね。でもよくよく見れば様子がおかしくて、思わず助けようと鉄格子登ろうと思ったのよ。……そしたら」

「宗助が……来てくれた」

先輩の続きを茉里が繋げ、先輩は頷いた。

「じゃあ宗助は、先輩よりも早く鉄格子を……?」

その茉里の問いに、先輩はきょとんとした。
確かその時、宗助と先輩は一緒に帰ったはずだった。

「え?宗助から聞いてない?宗助、私を駅までの送ってくれた後、道を引き返したのよ」

え……。

⏰:09/11/01 17:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
「でも、私、あの日デパートに行くって……」

「あれ、茉里ちゃん気づかなかった?自転車置き場の前通り過ぎた時、私たち丁度その向かいの外にいたのよ」

デパート側ではないもう1つの通学路は、道と自転車置き場が平行にあり、その間をフェンスでしきっているだけのため、学校の中が見えるようになっている。

傘と、落ち込んでいたので足元しか見ていなかったのが重なり、茉里は2人に気づけなかったらしい。

「私、先生に用事があったのを思い出して、正門近くから引き返して校舎に一旦帰ったのよ。だからその時間差も……。って、茉里ちゃん私より早く更衣室出てなかったっけ?」

⏰:09/11/01 17:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
更衣室に先輩が入ったのが早くても、もともと着替える必要のない茉里の方が早いのは当たり前で、その時の茉里の複雑な気持ちなんて知る由もない先輩は、デパートに行ったはずの茉里が校内に残っているのが、ただただ不思議だった。

ああ……なんてあほらしいの……。

思わず茉里は頭を抱える。

「……それは、いずれ話ます……」

「うん、ありがとう。だからね、きっと宗助はその時から茉里が気になって仕方なかったのよ。だって、宗助言ったもの」

[先輩、加賀が心配なので、戻ってもいいですか?]

その言葉に、、茉里は目を真ん丸に見開く。

勘のいい宗助だから、茉里がデパートに行かない事もお見通しだったのかもしれない。

⏰:09/11/01 17:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#381 [向日葵]
なによ……。
心配なんてしてないみたいに言ってたくせに……。

県大会の帰り道、宗助が何故あの場所にいたかを訊いた時のことだ。
宗助は、嘘でも心配なんて言ったら、茉里が調子のる、だから内緒だと言ったのだ。

なによ……なによ……。
結局宗助は、いつもそうやって自分を気にかけてくれてたんじゃないか。
うそつき。
好きになる保障なんてないって、断言したのは、誰よ。
そんなに心配してもらってただなんて、私……。

「知らなかった……」

宗助の気持ちを、1番理解出来ていなかったのは、自分だ。

⏰:09/11/01 17:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#382 [向日葵]
「あの子の気持ち、もし伝えてきたら、受け止めて、茉里ちゃんなりの正直な気持ちを答えてやってね」

そうやって笑う先輩の笑顔は、今度は悔しいなんて思わず、心から綺麗だと思えた。

―――――――――…………

試合も終わり、全員解散した後、またバスに乗って帰る。

街はイルミネーションで彩られ、そこで今日がクリスマスだったことを思い出した。

きっと今頃、茉里の両親はディナーで幸せなひとときを過ごしているのだろう。

⏰:09/11/23 23:18 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#383 [向日葵]
娘はボロボロなのに……。
少し恨めしい……。

「ねー、皆でなんか食べて帰ろうよー」

駅に着いてから綾香が言った。

私も帰ったところでな……

「行く人おー」

ほとんどが手を挙げる。
もちろん茉里も挙げる、つもりだった。
挙げるつもりだった手は、途中で止められた。

「悪い、俺たち用事があるから」

そう言って、止められた手をそのまま握られ、引っ張られる。

⏰:09/11/23 23:18 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#384 [向日葵]
茉里は思考がついていけずにいた。
だって引っ張ってるのは。

「そ、そうすけ……っ!」

さっさと切符を買い、帰る方面のホームへ、宗助は一言も話さず引っ張っていく。
少し強引なくらいに。

一同は口を開けてポカンといった風な表情で2人を見送る。

こんな事をしてしまえば、きっと次の稽古ではからかわれる。
宗助が好まない状況になる。

それでも宗助は止まってくれず、あまり人が乗らないだろう乗車位置の場所で、ようやく止まってくれた。

⏰:09/11/23 23:19 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#385 [向日葵]
息があがる茉里。
男子と女子とでは歩幅が違う。
そんな些細な事すら気にしないくらい、何かに没頭していただろう宗助は、未だ茉里の手を握ったままだ。

「……な、なに……」

「言わなきゃ、ならないことを、言っておかなきゃならないと思ったから……」

息と共に、動悸も早くなってくる。
じっと見つめられれば、息が止まる。

そんなにじっと、みつめないでほしい。
ちゃんと目が見れないじゃない……。

「今日言ったことは、忘れて」

⏰:09/11/23 23:19 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194