こいごころ
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#537 [向日葵]
待って。
ねえ待って。

じゃあ恋人は?

もし恋人が主人公なら、そんな人は嫌われるのに、どうして主人公が変われば、それを応援出来るようになるの?

[アンタだって邪魔者で、消えて欲しいのよ]

正月、ミュシャに言われたことを思い出す。

主人公は、どうして悪者にはならないの?

「―――――っ!」

体を少し震わせて、栞はお腹をおさえながらゆっくりと立ち上がった。

⏰:10/08/13 20:03 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#538 [向日葵]
「ん?栞ちゃん?」

「ごめんね話の途中に。ちょっとトイレに行ってくる」

にこりと笑ったが、その顔は少し青くなっていた。

…………………………

水を流すと共に、栞はため息をつく。

月のものはこれだから嫌だ。

栞は人よりも痛みがひどく、薬でいつも和らげていたが、今日はたまたま薬を飲むのを忘れていた。

⏰:10/09/06 23:59 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#539 [向日葵]
仕方ない、保健室で貰うか。

休み中、学校へ入り、ある程度どこに何があるかを把握している為、誰にも頼らず保健室を目指すことが出来た。

歩く度に鈍痛がひどくなっていく気がして、速度がだんだんと落ちていく。

保健室のプレートを見た瞬間は、安堵で倒れそうになった。

「失礼しまー……」

途中で口を閉じる。
中に見知った人物がいたからだ。

おそらく学校一綺麗とうたわれているだろう人物だ。
少しピンク色が入った金髪はフワッと柔らかそうで、それを際立たせるような白い肌は透き通り、手足はすらりと長い。
目は憧れるような蜜の色をしていて、唇は触れたくなるくらいふっくらとしている。

⏰:10/09/07 00:00 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#540 [向日葵]
「あら」

声は凛としていて、栞を更に嫌な気持ちにした。

ミュシャの顔を出来るだけ見ないようにしながら、栞は戸を後ろ手に閉め、その場に立ちつくす。

「具合でも悪いの?」

「あなたには関係ないことですから……」

「そんな顔色してる子に攻撃なんかしないから安心なさい。で、どうかした?」

「体調のことなら保健医に言います」

正月のこともあり、警戒の気配を漂わせる。
しかしミュシャは本当に攻撃する気はないらしく、なんの感情もなく、至って事務的に栞に話す。

⏰:10/09/07 00:00 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#541 [向日葵]
「保健医ならしばらく帰ってこないわよ。職員室に呼ばれて、仕事言い渡されてたし。なんか必要なもんでもある?アンタよりはここを熟知してるわよ」

このまま話していても仕方ないと思った栞は、生理痛に効く薬をと頼んだ。
棚を見れば、ちょうどいつも服用している薬と同じものがあったので、それを指差す。

棚の開き戸を開け、薬を取ったミュシャは2錠出し、ついでにコッブに水を入れてやった。
それを栞の立っている近くにある机に置く。

「こっち、ストーブあるから早く座ったら?暖めたら少しは楽になるだろうから」

⏰:10/09/07 00:00 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#542 [向日葵]
敵に指示されるのは抵抗があったが、痛みが楽になるのならばもうなんだっていいと思い、ストーブ前にある長椅子に座る。

薬を飲むのはいいが、水が冷たくて、体を震えが駆け巡る。

飲み終えると同時に、ミュシャがクスクスと笑い出したので、眉根を寄せてミュシャを見る。

「アンタでしょ。笹部にあんな本仕込んだの」

「…………なんのことですか?」

「別に怒ってるわけじゃないの。どちらかと言えば褒めてやりたいわ」

⏰:10/09/07 00:01 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#543 [向日葵]
「なんでです?」

「バカップルがしょうもないことで騒ぐ様が面白いから。特に笹部あたりはうぶで、動揺っぷりがまた一興」

ドS……。

そう思わずにはいられなかった。

「でも、あんなのよく買う勇気あるわ。男もんでしょ、あれ。男の方がリアルに描いてる気がして、女の子が買うような夢いっぱいな感じなさそうなのに」

「どうってことないですよ。買っちゃえばこっちのもんなんですもん。それに、いちいち他人の様子なんか伺ってたら、こっちが不利にまわりますよ」

冷たく嘲笑う栞に、ミュシャは眉根を寄せる。

⏰:10/09/07 00:01 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#544 [向日葵]
「他人のことは、どうでもいいって、思ってるってこと?」

「そうですよ。当たり前じゃないですか。他人なんか気にしてたら、自分がどんどん後回しになっちゃうんですから」

「そんなんだから、好きな人をとられるんじゃないの?」

ミュシャにそう言われた栞は、お腹に添えていた手に、グッと力を入れた。

うるさい。
うるさい。

アンタはあっちの味方だから、そう言うくせに。
あたしの味方なんて、これっぽっちもしようとしないくせに。

⏰:10/09/07 00:01 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#545 [向日葵]
あたしの気持ちなんて、わからないくせに。

「あなたに……あたしの何が分かるって言うのよ!」

叫びながら、栞は立ち上がった。
ミュシャは薬を取り出した棚に寄り掛かって、栞を静かに見る。
その冷静さが、また栞の怒りに火をつける。

「ずっと……ずっとずっとずっと見てたのに、横取りされる気持ちが、あなたにわかるっていうの!?」

振り向いてくれるまで待って待って待って……。

⏰:10/09/07 00:02 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#546 [向日葵]
あたし、いつまで待ってればいいの……。

もう栞はわかっていた。
わかっていたけれど、わかりたくはなかった。
諦めたくはなかった。

だから見て見ぬふりをした。
現実を。
見てしまったら、向き合ってしまったら、残っているのは惨めな自分だから。

「仕方ないじゃない……」

なのに、どうしてこんな形で向き合わなきゃならないのだろう。

惨めな自分を見てしまったら、惨めな自分を誰が包んでくれるの?

⏰:10/09/07 00:02 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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