こいごころ
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#581 [向日葵]
「あー!そうだったぁぁ!わっすれてたよ!先生もう帰っちゃったよね!?」

周りを大袈裟に見回す茉里に、同級生のキャプテンの綾香が言う。

「さっき出て行ったとこだから、職員室にまだいるんじゃない?一緒に行こうか?」

「あー、ゴメンネーッ」

バタバタと忙しなく走っている途中、宗助にどこで待ってて欲しいか言うのを忘れたと気がつく。

戻ろうか一瞬迷うも、汗をかいているのに、胴着の上からベンチコートを着ただけの綾香を付き合わせているので、その考えは諦めることにした。

職員室の戸に手をかけようとすると、向こうから誰かが開けた。
瞬時に手をひっこめる茉里の前にいたのは、栞だった。

⏰:11/01/01 21:11 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#582 [向日葵]
栞は一瞬目を見開いたが、すぐに落ち着いた表情を見せ、そして仄かに笑い、茉里に会釈した。

「部活ですか?」

話しかけられるとは思ってなかったので、その言葉が脳に届くまで時間がかかった。

「あ……、うん、そう」

「栞ちゃーん」、先生プリントくれたよー

後ろから、おさげを揺らして、きっと同じクラスだろう女の子がきた。
栞はその子に向かってこくりと頷く。

⏰:11/01/01 21:11 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#583 [向日葵]
「頑張ってくださいね」

茉里の横を通り、友達と歩いていく栞を見ながら、咄嗟に茉里は叫ぶ。

「一緒にマネージャーやらない!?」

栞と友達は足を止めて、ゆっくりと振り返る。

「楽しいよ、剣道部っ。皆優しいし面白いし、もし他の部活入る予定がないなら……」

自分の話しをちゃんと聞いてくれる栞が怖くて、だんだんと声が小さくなっていく。

⏰:11/01/01 21:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#584 [向日葵]
栞は友達になにか言うと、1人だけで茉里の前まで歩いてきた。

少しだけ背の高い茉里を見上げ、困ったように笑う。

「あなたって変わった方ですね。今、あなたの魅力に気づいた気がします。」

「あの……」

「あなたと宗助が幸せそうなところ、私に見ろっていうのですか?」

「あ……」

なにも言えなくなった茉里に、栞は優しく微笑んだ。

「冗談ですよ。もういいんです。いつか、あなたにも色々話さなきゃならないと思ってましたし。けど、部活のことはもう少し保留で」

⏰:11/01/01 21:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#585 [向日葵]
「では」と栞は頭を下げ、待つ友達のところまで歩いて行った。
そんな栞を見て、茉里は栞が変わったと思った。

明るい口調の中に、落ち着いた雰囲気を感じさせる彼女は、自分がしらない間に宗助と何かあったのかもしれない。

そういえば2週間程に、宗助が珍しく自分に甘えてきたというか、寄りかかってきた。

そのことを思えば、より一層宗助がいとおしくなって、なんだか泣きそうになった。

⏰:11/01/01 21:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#586 [向日葵]
宗助を、絶対幸せにするからね……。
ずっとずっと、笑い合えるように……。

少し潤んだ目をこすって、茉里は職員室に入った。

――――――――…………

「茉里先輩って宗助先輩と付き合ってるんですよね?」

後輩が訊いてきたので、笑顔で茉里は頷いた。

「宗助先輩ってどんなんなんですか?草食男子っぽいですけど」

「まあ、皆が見てるまんまっていうか」

「キスするんですか宗助先輩でも」

⏰:11/01/01 21:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#587 [向日葵]
期待の眼差しで見られるが、宗助とキスをしたのはあの初詣だけだ。
手はよく繋いだりするけれど、別にキスして欲しいとは思ったことはない。

そういえば、宗助のキスはぎこちなかった……。
でも優しくて、柔らかくて、温かくて……。

思い出せば、茉里は顔が真っ赤になり、それを見た後輩たちは「いーーなああーっ!」と大合唱した。

宗助は好きだって言いたくなったり、抱きしめたくなったり、キスしたくなったりしないのかな……。

⏰:11/01/01 21:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#588 [向日葵]
……なんかそれって、私がめちゃくちゃしたいみたい。

いつの間にそんなスケベになったんだ私……。

「宗助先輩とのデートってどんな感じなんですか?」

恋愛話が大好きな後輩たちはまだ訊いてくる。
さっきの興奮がさめないのか、茉里にどんどん寄ってくるものだから、茉里は壁に背中が当たり、行き場をなくす。

「付き合ったばっかりだし、そんなにデートとかしたことないよ」

⏰:11/01/16 01:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#589 [向日葵]
「そうなんですか?」

「付き合いたてなら、ベッタリなイメージなんですけどねー」

「ハイハイ!この話はまた今度!」

綾香はパンパンと手を鳴らして、後輩たちの注目を集めると同時に、会話を打ち切った。

「下校時間までにここの灯りが消えてないと、キャプテンの私が注意されるんだからね」

後輩たちは渋々といったように各々カバンを持ち始める。
茉里はひそにかにホッとため息をついた。

⏰:11/01/16 01:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#590 [向日葵]
1歳しか変わらないのに、どうしてこの子たちはこんなにも元気なんだろう……。

でも1歳だけでも、その1歳が自分たちにとって大きいことを茉里は知っている。

先輩が、そうだったから。

とても大人のように思えて、逆に自分がすごく子供のようにも思えて嫌だったあの頃。

……ああ、そうか……。

⏰:11/01/16 01:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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