こいごころ
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#653 [向日葵]
馨は実は、裕之が好きだった。
馨も一目惚れだった。

入学時、校内で迷った馨を案内してくれたのが裕之だった。

初めてだった、こんなに素敵な人を見るのは。
しかし入学してから知るのだった。

裕之は女の子なら誰でも好きなことに。

そんな人の、特別になりたいだなんて、無理にきまっている。
裕之はああ言ってくれているが、絶対に信じてはいけない。
信じてはこちらが痛い目にあうのだ。

⏰:11/03/26 22:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#654 [向日葵]
そうやって泣いている子を、何人、何十人と、見てきたから。

本当は、もうあのやさしい檻に閉じ込められたままでよかった。
その考えに、このまま委ねてしまおうとして、ハッと気づいた。

傷つくのはこわい、と。

真剣な彼の目が、心臓の音を早めて苦しかった。

どれくらい走ったかは知らないけれど、いつか彼と座った木陰のベンチを見つける。

ゆっくりと近づき、ゆっくりと腰をおろす。

⏰:11/03/26 22:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#655 [向日葵]
傷つきたくないから恋をしないだなんて……。

「私は臆病なのかしら……」

傷ついて、ひとつ成長するのも恋だと思う。
それでも、自分は傷つく勇気なんてない。

「きっとあの人も、そこまで私を好きじゃないでしょうしね」

「そんなことないよ」

頭の上からふってきた声に、馨は驚いて振り向く。

⏰:11/03/26 22:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#656 [向日葵]
自分は走ってここまで来たというのに、後ろにいた裕之はまるで最初からいたかのように、先程と変わらない、涼しい顔をしてそこにいた。

そして少し汗ばんだ馨の頬に手を触れる。

「もうずっと、君に夢中なんだ。君しか考えられない。それぐらい、君を想ってる。こう言っても、まだ信じてくれない?」

美貌が近くにあれば、それだけで顔が熱くなるのに、更に強く、情熱的な言葉が出てくるものだから、馨はもう顔を熱くするどころか固まってしまった。

⏰:11/03/26 22:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#657 [向日葵]
「もう逃げないで。君を絶対に悲しませたりしない。だから僕を、受け入れてくれ」

真剣な目が、声が、言葉が、全てが馨に突き刺さって、思ってることすら口に出来ない。
わずかに動く目が、彼を避けるように泳ぐ。

「言葉に出来ないっていうなら、態度でしめして。今から君にキスをする。嫌なら今すぐに逃げて」

キ……キス……!?

更に馨は固まる。
しかし固まってる場合じゃない。

今は周りに人影がないといえ、いつ通るかわからない。
こんなとこ見られたら友人にどう言えば……っ。

とほんの数秒のうちに考え、馨はあれ?と思う。

⏰:11/03/26 22:14 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#658 [向日葵]
私……逃げることを考えてない……。

そう思った瞬間、柔らかなものが、唇におしつけられる。

ああ……、私もう、自分でもわからないうちに、覚悟を決めてたんだわ。

傷ついてもいい。
この人の気持ちに答えたい。
そして自分の気持ちを伝えたい。

どれくらい長い間キスをしていただろう。
離れてはまたしてを繰り返して、馨は息が少し荒くなっていた。

そんなキスをしたのは初めてだったから、恥ずかしくて困った顔になりながら、ちらりと裕之を見ると、今までに見たことがないくらい、眩しく、美しい笑顔で、馨を見つめていた。

⏰:11/03/26 22:14 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#659 [向日葵]
ーーーーーーー…………

話ながら茉里の父、裕之は、一口二口、コーヒーを飲んでいた。

宗助は手付かずのまま、裕之の話をきいていたので、きっともうコーヒーは冷めてしまっているだろう。

懐かしそうに笑う裕之は、コーヒーにうつる自分に微笑む。

「話をきかせて頂くと……、随分と奥さんに夢中みたいにきこえますが……」

宗助は眉を寄せて、まるで難解をつきつけられたような表情をする。

⏰:11/03/26 22:14 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#660 [向日葵]
そう言われて、裕之は寂しそうに笑った。

持っていたカップをかたりとソーサーに戻し、足を組みかえ、下を向いて静かに目を閉じる。

そう、夢中だった。
馨さえいれば良かった。
茉里さえいれば良かった。
2人がいり家があれば、それだけで幸せだったんだ。

なのに……。
自分でも許せない。
後悔してもしきれない。
いっそ殺してほしいぐらいに苦しい。

馬鹿だ。
馬鹿だったんだ。

⏰:11/04/02 22:50 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#661 [向日葵]
[17]上げることの出来ない頭

帰ってこない……。

茉里はリビングで全身に力を入れて座っていた。

なにをしてるの?
宗助になにをしてるの?
関わらないでよ。
私の大切な人に、関わらないでよ……っ!

ことりと音がしたかと思い、いつの間にかかたく閉じていた目を開く。
目の前に、白く少し大きめのカップに、ココアが入っていた。
甘い匂いに、体の力が緩む。

⏰:11/04/02 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#662 [向日葵]
「色々考えすぎると、可愛い顔に変なシワが入るわよ」

からかうように笑う母、馨は、茉里から見ても美人の類に入る人だと思う。

そんな母なら、他にいい人なんてたくさんいるはずなのに、どうして父にこだわるのだろう。

「今年で結婚何年目になる?」

「3月でー……17?18?それぐらいね。あら?19だったかしら?」

「まあ約20年ね……。」

⏰:11/04/02 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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