こいごころ
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#663 [向日葵]
少しだけとろみがついたココアに口をつける。
甘い味が口の中をいっぱいにする。

「アイツのなにがよかったの?」

「もう……。いい加減お父さんって呼びなさいよ。お父さん茉里にどう接したらいいかわからなくてオロオロしてるわよ」

「自業自得じゃない。私やお母さんがどんな思いしたかわかってんの?」

馨は苦笑いして、茉里の頭をふわりと撫でた。
茉里をなだめる為に撫でたのだが、茉里はなんだか叱られてる気分になって、肩を落とす。

⏰:11/04/02 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#664 [向日葵]
そんな茉里を見ながら、馨は昔を思い出した。

ーーーーーーーー…………

大学を卒業した裕之は、有名ではないが社名を言えばみんなが「ああ……アレね」というぐらいのところへ就職出来た。

馨はまだ1年ある為、大学にまだ通っていたが、裕之は休みなど暇が出来れば馨に連絡するというマメぶりだった。

「馨は就職はどうするの?」

何回かのデートの時に、裕之がきいた。

「デート中の台詞がそれですか?」

⏰:11/04/02 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#665 [向日葵]
ぶにっと、裕之の頬を軽くつねる。
そんなことさえ嬉しいのか、裕之はにこにこしている。

「あんまり忙しかったら会えないから、それなりのところがいいな」

「そんなの勝手に決めないでくださいよ。確かにそんな年がら年中バタバタ走り回ってるようなところには行きませんけど」

「じゃあもう働かずくる?」

「どこに?」

「僕のとこ」

⏰:11/04/02 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#666 [向日葵]
「冗談はやめてください」

もうっ、と馨はそっぽを向く。

裕之は冗談ではないのにと思いながら、そうやって雰囲気に流されない真面目な馨がいとおしくなる。

「まあ、そのうち嫌だって言っても結婚してもらうからね」

「なんですか。その脅迫めいたプロポーズは」

しかしその日もそう遠くはなかった。
大学を卒業し、半年ほどが過ぎた時、待ちきれないかのように裕之がまたプロポーズをした。

⏰:11/04/10 22:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#667 [向日葵]
車で出かけてた2人は、暗くなり、そろそろ帰ろうかという時に、海岸沿いに車をとめて、指輪を出した。

馨は嬉しくて涙を流すことで「はい」と答えた。

色んなことが足早に過ぎていき、気がつけば茉里が生まれて、毎日が本当に幸せだった。

そしてーーーーーーーー

裕之は間違ったのだった。

・・・・・・・・・・・

⏰:11/04/10 22:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#668 [向日葵]
「加賀」

上司から呼ばれた裕之は、足をとめて振り返る。

「はい?」

「この前のプレゼン良かったって評判だぞ。もしかしたらおれたちので決まるかもしれないって」

「本当ですか!」

もともと、なにをやっても器用にこなす裕之は、上司からの信頼も厚く、若くして色々な重要企画に加わっていた。

嬉しくて笑顔を隠せない裕之は、ふと、上司の後ろにいる影に気づく。

⏰:11/04/10 22:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#669 [向日葵]
「田辺さん、後ろにどなたかいらっしゃいますか?」

「あ、そうだった。ホラ、挨拶」

出てきた相手に、裕之は息を呑んだ。

「馨……?」

呟くように名前を呼ぶ。

しかし、馨ではない。
それはわかった。

ただその雰囲気、顔立ち、ほとんどが馨にそっくりだった。

控えめに笑う彼女は、裕之に向かって頭を下げる。

⏰:11/04/10 22:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#670 [向日葵]
「はじめまして、加賀さん。私、花形香と申します。部署が変わりまして、加賀さんとお仕事させて頂くことになりました」

名前までそっくりだ。

しかし自分と仕事?

「田辺さん。話がみえないのですが……?」

「ああ、今言ったとおり、コイツ部署が変わってな。仕事は結構優秀だって言われてるんで、おれたちのチームに入ることになったんだ。で、一番新人のコイツを、チームの中で一番新人のお前が、面倒みるってこと」

ああ、なるほど。

⏰:11/04/10 22:35 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#671 [向日葵]
ちらりと見ると、花形はふわりと微笑む。

そして彼女からは、懐かしくも感じる、あの香りが漂ってきたのだった。

ーーーーーーーーー…………

「そんなに似てたんですか?」

家に帰ってきて、裕之は花形のことを話した。
3歳になった茉里を寝かしつけ、リビングに戻ってきた馨は、台所に立って、食器を洗っている。

「うん。職場に馨がいたらって僕の願いが叶ったのかって一瞬疑ったよ」

⏰:11/04/10 22:35 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#672 [向日葵]
「それは良かったですね」

「でさー」と続けようとしたが、馨の後ろ姿から、さっきと雰囲気が変わったのがわかった。

気になった裕之は、おずおずと馨の隣に立つ。
馨を見ても、何も変わらないかのように見えるが、馨の機敏を読み取るのは、裕之は得意だった。

「なにか……怒らせた?」

泡だらけの手が、ぴたりととまる。

「ずいぶんと……、彼女が気に入ったんですね」

小さな声だった。

「私を、求めてくれてるのはよくわかりますけど、彼女は別人なんですよ」

⏰:11/04/10 22:35 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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