こいごころ
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#671 [向日葵]
ちらりと見ると、花形はふわりと微笑む。
そして彼女からは、懐かしくも感じる、あの香りが漂ってきたのだった。
ーーーーーーーーー…………
「そんなに似てたんですか?」
家に帰ってきて、裕之は花形のことを話した。
3歳になった茉里を寝かしつけ、リビングに戻ってきた馨は、台所に立って、食器を洗っている。
「うん。職場に馨がいたらって僕の願いが叶ったのかって一瞬疑ったよ」
:11/04/10 22:35
:SH05A3
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#672 [向日葵]
「それは良かったですね」
「でさー」と続けようとしたが、馨の後ろ姿から、さっきと雰囲気が変わったのがわかった。
気になった裕之は、おずおずと馨の隣に立つ。
馨を見ても、何も変わらないかのように見えるが、馨の機敏を読み取るのは、裕之は得意だった。
「なにか……怒らせた?」
泡だらけの手が、ぴたりととまる。
「ずいぶんと……、彼女が気に入ったんですね」
小さな声だった。
「私を、求めてくれてるのはよくわかりますけど、彼女は別人なんですよ」
:11/04/10 22:35
:SH05A3
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#673 [向日葵]
蛇口をひねると、騒がしい水の音が台所に響く。
シンクに洗った皿を置く。
「片付けの邪魔なので、あっちに行っててください」
その声が震えていたからいけなかった。
裕之は馨の腕をひいて、自分の腕の中に閉じ込めた。
少し抵抗があったが、裕之が抱く力を強くすると、ゆっくりと馨の力が抜けた。
「僕には馨だけだよ」
「わかってますよ。これは……私の勝手でわがままな嫉妬ですから」
「嫉妬なんて、僕を喜ばせたいの?」
:11/04/10 22:36
:SH05A3
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#674 [向日葵]
少し屈んで、唇を寄せる。
ちょっと抵抗するように馨は顔をそらそうとするが、顎に指をかけられては、そらしようがない。
熱いくちづけに馨はいつまでも慣れなくて、裕之を引き離そうとするが、裕之はそうすると余計に体を密着させる。
「ひ……ろ、ゆきさ……っ」
「もう少し黙ってて……」
口ごと食べられてしまいそうなキスに、馨もだんだんと酔いしれる。
息苦しい、でもそれが気持ちよくもある。
:11/04/17 00:20
:SH05A3
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#675 [向日葵]
キスの間に、裕之は何度も愛の言葉をささやく。
後に思い出す。
『あまり口にはしないで』
ーーどうして?嬉しくない?
『嬉しいの、とっても。でもね、あまり言ってしまうと、あなたの私への気持ちが、なくなってしまいそうで、とてもこわいわ』
なくなったわけじゃない。
むしろ増していた。
好きで、大好きで、いとおしくて、愛していて……。
:11/04/17 00:20
:SH05A3
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#676 [向日葵]
なのにーーーーーーーー
ドコデ間違エタ…………?
:11/04/17 00:20
:SH05A3
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#677 [向日葵]
ーーーーーー………………
「お前たちって仲良いな」
上司の田辺が言う。
裕之と花形、2人して田辺を見る。
「普通じゃないですか?なあ花形」
「ねえ加賀さん」
「そういうのほほんとした会話が仲良いって言ってんだよ」
実際に仲は良かった。
彼女はやっぱり馨に似ていて、会話から動作まで似ているから、どうしても、馨と接しているようになってしまう。
:11/04/17 00:21
:SH05A3
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#678 [向日葵]
裕之はそれでも、馨と花形は違うと思っていたから、ただの同僚としてしか思っていない。
「あ、そうだ加賀、この資料まとめといてな」
「え、昨日やりましたよね?」
「訂正の部分が出たんだ。悪いな」
肩を叩いて去っていく上司は、ちっとも悪いと思っていない。
ちぇっと、訂正しなくてはならなくなった書類を苦々しくみつめる。
残業決定か。
最近こんなことが多くなって、茉里と遊べないし、馨ともゆっくり出来ない。
:11/04/17 00:21
:SH05A3
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#679 [向日葵]
茉里ももう小学3年生になった。
この前も、父の日だからと、少ないお小遣でネクタイを買ってくれた茉里は、裕之にあげるのを楽しみにしていたのに、裕之はその日残業で、結局あげたのは次の日だった。
「気に入った?これを見てたまには茉里のことも思い出してね」
幼く、いじらしいその言葉は、裕之は胸を痛めた。
だから早く帰って、力いっぱい抱きしめてやりたいのに。
少し疲れ気味の裕之は嘆息する。
「あの加賀さん、私も手伝いますよ」
明らかに肩を落としている裕之を気遣ってか、花形は控えめに申し出た。
:11/04/17 00:21
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#680 [向日葵]
「ああ……悪いな……。頼む」
「任せてください!」
にっこりと微笑む。
その笑顔が、馨と重なる。
疲れた心が、癒される。
手を伸ばした裕之は、何か迷って、花形の頭を撫でた。
「ありがとな。ちょっとコーヒーでも飲んでくるわ」
花形の隣を通れば、あの香り。
裕之は頭を撫でるつもりなんてなかった。
そして自分のしようとしてたことを、歩きながら心の底から戒めた。
撫でるつもりなんてなかった。
本当はーーーーーー。
:11/04/17 00:22
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