こいごころ
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#691 [向日葵]
「疲れたあなたに気づいてあげられないのなら、私が彼を癒します、って言われたわ」

裕之は、馨を見れなかった。
顔を伏せ、目をギュッととじる。

「あなたをそうさせたのは、わたしなのね……」

違う。

「別れたい?」

「そんなわけ……っ!!」

そんなわけないと言うため、顔を勢いよくあげる。
裕之は馨をみて、むしろもう別れたくなった。

⏰:11/04/23 20:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
それでも馨は、裕之を責める気にはなれなかった。
いや、責めたかったのかもしれない。

でも、誰が正しいとか正しくないとか、悪いとか悪くないとか、考えだしたらキリがなくて、もう馨も自分がどうしたいのかわからなくなっていた。

でも裕之が、自分を心の底から愛してくれているのはわかっている。

しかし、3年間も自分しか知らない裕之を、他の誰かが見たのかと思えば、胸が痛むのは仕方がなかった。

⏰:11/04/23 20:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#693 [向日葵]
涙流すくらいは、ちゃんと感情は働いているんだわ……。

裕之をみつめて、頬を流れる涙を感じながら、馨は思った。

「ご飯は、食べる?」

涙を拭いて、口元に少しの笑みをたたえながら、裕之にたずねた。
裕之はしばらく黙って馨を見ていたが、彼女が今何を思っているかわからないので、小さく頷く。

静かに食器がテーブルに並べられる。

その日は、裕之の好物ばかりだった。

⏰:11/04/23 20:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#694 [向日葵]
ーーーーーーーー…………

「お母さん、なにか手伝うことある?」

茉里がひょこりと顔をだす。
昔に意識を飛ばしていた馨は、少しぼんやりと茉里をみる。

「え……。あ、ああ、大丈夫よ。もうあとは煮込むだけだから」

「カッレー!カッレー!」

茉里は馨が作ったカレーが大好きだった。
甘すぎず辛すぎず、でも少しピリッとする。
大きめに切ったジャガ芋はほくほくしてておいしい。

「玉ねぎを飴色になるまでいためるとおいしいらしいけど、お母さんどうしても面倒くさくなるのよね」

⏰:11/04/30 20:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#695 [向日葵]
そんな母の言葉に、茉里はきょとんとする。

「お母さんって、面倒くさがりだっけ?17、18年一緒にいるけど、そんな感じはしないな」

「じゃあ上手くごまかせてるのかしらね」

2人して、アハハと笑う。

笑いながら馨は気づく。

自分でも、知らなかった。
自分は、面倒くさくなることを、きっと避けてたんだわ。

⏰:11/04/30 20:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#696 [向日葵]
あの時も…………。

ーーーーーーーー…………

「馨、どこか出掛けないか?」

裕之はしばらく有休をとった。
有休をとっても、仕事の電話はかかってきたが、ゆっくりするのは久しぶりだった。

あれから、馨に触れていない。
触れさせてくれない。
それは当たり前なのだが、裕之は触れたくて仕方なかった。

「今日は掃除する日なんです。お風呂もカビがはえてたところが気になるし」

⏰:11/04/30 20:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#697 [向日葵]
「昨日もそう言ってたじゃないか……」

「ほこりは毎日たまるんです!」

馨は次の日にはもう何事もなかったかのようにしている。
あの日は、近くにいてほしくなかっただろうと思い、いつも一緒に寝ているが、裕之は客間で寝た。

馨はいつものように茉里を送り出し、買い物に行き、洗濯をし、きびきびと働く。

でも裕之には全部わかっていた。
馨は平気なふりをしているだけだということ。

彼女はこうみえて、感情をあまり顔に出さない。
なにもなかったように演じろと言えばきっと出来るぐらい。
いや、今現にしているのだけど。

⏰:11/04/30 20:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#698 [向日葵]
「茉里は、今日はミュシャちゃんの家に泊まるんだろ?なら丁度いいじゃないか。遠くまで車を走らせて……」

「裕之さん、そんなこと言ってる暇があるなら、庭の草抜きでもしてきてください!」

言い返す前に、ゴミ袋と軍手、熊手を押し付けるようにして渡される。
何か言おうとする前に、洗濯が終わった音が鳴って、馨は行ってしまう。

裕之はため息を吐く。

こうも避けられては、為す術がない。
しかしそれは自業自得なのであった。

⏰:11/04/30 20:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#699 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・

なにかしていないと、足元がおぼつかなくなりそうだった。

裕之はきっと話をしたいはずだ。話合って、一緒に乗り越えてほしいんだと思う。

彼はひたすら謝るだろう。
ただ、繰り返される謝罪の言葉を、どう受ければいいかわからない。
受けたところで、何をすればいいかわからない。

笑顔で許せばいい?
物を壊すぐらい暴れて怒ればいい?
目を腫らして、過呼吸になってしまうほど泣けばいい?

⏰:11/04/30 20:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#700 [向日葵]
そうやって考えるうちに、考えているのがもう面倒になってきて、頭がぐらぐらとゆれる。
だから、逃げるように家事をする。

助けて……。

なにに対してそうしてほしいのがわからないまま、馨はそう心の中で呟いた。

茉里も……きっともう知ってる。
きいたんだと思う。
あの会話を。

その証拠に、裕之がリビングにいると、なるべく顔を出さないようになった。

⏰:11/04/30 20:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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