こいごころ
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#691 [向日葵]
「疲れたあなたに気づいてあげられないのなら、私が彼を癒します、って言われたわ」
裕之は、馨を見れなかった。
顔を伏せ、目をギュッととじる。
「あなたをそうさせたのは、わたしなのね……」
違う。
「別れたい?」
「そんなわけ……っ!!」
そんなわけないと言うため、顔を勢いよくあげる。
裕之は馨をみて、むしろもう別れたくなった。
:11/04/23 20:32
:SH05A3
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#692 [向日葵]
それでも馨は、裕之を責める気にはなれなかった。
いや、責めたかったのかもしれない。
でも、誰が正しいとか正しくないとか、悪いとか悪くないとか、考えだしたらキリがなくて、もう馨も自分がどうしたいのかわからなくなっていた。
でも裕之が、自分を心の底から愛してくれているのはわかっている。
しかし、3年間も自分しか知らない裕之を、他の誰かが見たのかと思えば、胸が痛むのは仕方がなかった。
:11/04/23 20:33
:SH05A3
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#693 [向日葵]
涙流すくらいは、ちゃんと感情は働いているんだわ……。
裕之をみつめて、頬を流れる涙を感じながら、馨は思った。
「ご飯は、食べる?」
涙を拭いて、口元に少しの笑みをたたえながら、裕之にたずねた。
裕之はしばらく黙って馨を見ていたが、彼女が今何を思っているかわからないので、小さく頷く。
静かに食器がテーブルに並べられる。
その日は、裕之の好物ばかりだった。
:11/04/23 20:33
:SH05A3
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#694 [向日葵]
ーーーーーーーー…………
「お母さん、なにか手伝うことある?」
茉里がひょこりと顔をだす。
昔に意識を飛ばしていた馨は、少しぼんやりと茉里をみる。
「え……。あ、ああ、大丈夫よ。もうあとは煮込むだけだから」
「カッレー!カッレー!」
茉里は馨が作ったカレーが大好きだった。
甘すぎず辛すぎず、でも少しピリッとする。
大きめに切ったジャガ芋はほくほくしてておいしい。
「玉ねぎを飴色になるまでいためるとおいしいらしいけど、お母さんどうしても面倒くさくなるのよね」
:11/04/30 20:29
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#695 [向日葵]
そんな母の言葉に、茉里はきょとんとする。
「お母さんって、面倒くさがりだっけ?17、18年一緒にいるけど、そんな感じはしないな」
「じゃあ上手くごまかせてるのかしらね」
2人して、アハハと笑う。
笑いながら馨は気づく。
自分でも、知らなかった。
自分は、面倒くさくなることを、きっと避けてたんだわ。
:11/04/30 20:29
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#696 [向日葵]
あの時も…………。
ーーーーーーーー…………
「馨、どこか出掛けないか?」
裕之はしばらく有休をとった。
有休をとっても、仕事の電話はかかってきたが、ゆっくりするのは久しぶりだった。
あれから、馨に触れていない。
触れさせてくれない。
それは当たり前なのだが、裕之は触れたくて仕方なかった。
「今日は掃除する日なんです。お風呂もカビがはえてたところが気になるし」
:11/04/30 20:30
:SH05A3
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#697 [向日葵]
「昨日もそう言ってたじゃないか……」
「ほこりは毎日たまるんです!」
馨は次の日にはもう何事もなかったかのようにしている。
あの日は、近くにいてほしくなかっただろうと思い、いつも一緒に寝ているが、裕之は客間で寝た。
馨はいつものように茉里を送り出し、買い物に行き、洗濯をし、きびきびと働く。
でも裕之には全部わかっていた。
馨は平気なふりをしているだけだということ。
彼女はこうみえて、感情をあまり顔に出さない。
なにもなかったように演じろと言えばきっと出来るぐらい。
いや、今現にしているのだけど。
:11/04/30 20:31
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#698 [向日葵]
「茉里は、今日はミュシャちゃんの家に泊まるんだろ?なら丁度いいじゃないか。遠くまで車を走らせて……」
「裕之さん、そんなこと言ってる暇があるなら、庭の草抜きでもしてきてください!」
言い返す前に、ゴミ袋と軍手、熊手を押し付けるようにして渡される。
何か言おうとする前に、洗濯が終わった音が鳴って、馨は行ってしまう。
裕之はため息を吐く。
こうも避けられては、為す術がない。
しかしそれは自業自得なのであった。
:11/04/30 20:31
:SH05A3
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#699 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・
なにかしていないと、足元がおぼつかなくなりそうだった。
裕之はきっと話をしたいはずだ。話合って、一緒に乗り越えてほしいんだと思う。
彼はひたすら謝るだろう。
ただ、繰り返される謝罪の言葉を、どう受ければいいかわからない。
受けたところで、何をすればいいかわからない。
笑顔で許せばいい?
物を壊すぐらい暴れて怒ればいい?
目を腫らして、過呼吸になってしまうほど泣けばいい?
:11/04/30 20:32
:SH05A3
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#700 [向日葵]
そうやって考えるうちに、考えているのがもう面倒になってきて、頭がぐらぐらとゆれる。
だから、逃げるように家事をする。
助けて……。
なにに対してそうしてほしいのがわからないまま、馨はそう心の中で呟いた。
茉里も……きっともう知ってる。
きいたんだと思う。
あの会話を。
その証拠に、裕之がリビングにいると、なるべく顔を出さないようになった。
:11/04/30 20:32
:SH05A3
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