こいごころ
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#708 [向日葵]
「だ…………っ」
大嫌い。
あなたなんか、大嫌い。
裏切り者。
嘘つき。
触らないで。
もう私に2度と触れないで。
大嫌いなの。
もう愛せないの。
「ずるいわ……」
大嫌い。
そんなわけないじゃない。
「そんな……か、んたんに……っ、嫌いになれたら、こんなに苦しくならないわよ……」
「うん……」
:11/04/30 20:37
:SH05A3
:☆☆☆
#709 [向日葵]
大好きよ……。
離れたくない。
でもこんなんじゃ、ただの面倒くさい女だわ。
なんでもないふりして、あなたのことわかってますみたいな顔して。
でも暴かれれば泣き崩れてすがりつくなんて。
そうなりたくなかったし、そんなことになることも避けようとした。
まるで雨のように、フローリングが濡れていく。
ガンガンと殴る手は、自分を戒めるかのように、力がだんだんと強くなっていく。
:11/05/07 22:18
:SH05A3
:☆☆☆
#710 [向日葵]
その手を、やわらかく包まれる。
「殴るなら、僕の顔にしなよ」
ぶんぶんと、馨は首を横にふる。
「僕は……馬鹿だからさ……」
ぽたりと、馨ではない涙が、フローリングに落ちる。
形のいい目から、丸い涙がこぼれる。
馨は目を見開いた。
裕之が、泣いている。
:11/05/07 22:18
:SH05A3
:☆☆☆
#711 [向日葵]
「君が、傷つくの、わかってたのに……」
痛いほどに、馨の心にひびが入り、小さな破片が割れてとんだと思えば、次々にガラガラと崩れていく音がきこえてくるのがわかった。
どうしようもない馬鹿。
謝罪の言葉は、無力で、無意味で……。
「ごめん」なんて言葉が何故あるのかわからなくなりそうだった。
でもそれを何重にも重ねて、君がそばにいてくれるなら、僕は重ね続ける。
:11/05/07 22:19
:SH05A3
:☆☆☆
#712 [向日葵]
「信用……、なくしたことはわかってる。でも僕は君しかいらない。茉里しかいらない。愛してる……っ」
胸からせりあがってきそうになる叫びを抑えながらも、必死に届いてくれとこめる。
離れないでくれ。
君しかいない。
君だけだ。
好きだ。大好きだ。
愛してるんだ。
そばにいてくれ。
それしか望まない。
もうなにも望まないから。
:11/05/07 22:19
:SH05A3
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#713 [向日葵]
「裕之さん」
優しい声に、裕之はうつむいていた顔をあげる。
馨が、優しく微笑んでいた。
涙はまだ、とめどなく流れていたけれど、もうなにもかもがわかったように、微笑んでいた。
「また……イチから、始めましょう。なにもかも……」
届いた。
そう思った瞬間、裕之は馨を力いっぱい抱きしめた。
髪に顔を埋めるようにすれば、あの甘い香りが胸を満たす。
:11/05/07 22:19
:SH05A3
:☆☆☆
#714 [向日葵]
花形とは、全然違うと思った。
裕之が求めているのは、この空気、この香り、このやわらかさ、この細さだ。
自分が本当に間違っていたのだと思えば、情けなくも嗚咽を漏らしながら泣けてしまった。
馨も久々に触れる裕之のぬくもりに身をよせる。
そこでようやく彼女は、裕之が帰ってきたのだと思った。
まだあなたが、こんなにも力強く抱きしめてくれるなら、きっと大丈夫だわ。
震えてる体が、どちらのものかはわからなかったけれど、その震えがとまるように、二人はお互いを抱きしめあった。
:11/05/07 22:20
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#715 [向日葵]
ーーーーーーーーー…………
時計はもう7時をまわっていた。
喫茶店にいるのは、裕之と宗助だけになっていた。
遠くで流れるクラシックが耳に入ったことで、宗助は話が終わったことに気がつく。
「じゃあ、奥さんとは仲はもう……」
「うん。元に戻ったし、今でもラブラブだよ」
:11/05/07 22:20
:SH05A3
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#716 [向日葵]
ラブラブ……。
今までのシリアスな話に、その単語が正しくない気がして、宗助は椅子からこけそうになった。
あれ……?
「浮気……、あ、すみません。他の人との関係は、その1回だけですか?」
「もちろん。と言っても信用されないかな。でも僕は馨しか見えてないし、馨を傷つけたくないし、馨が世界……いや宇宙一可愛いと思っ……」
「いや、信用します……」
お腹いっぱいとはこのことだ。
「茉里の話だと、何回かしたって……」
:11/05/07 22:21
:SH05A3
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#717 [向日葵]
夏休みの時、確かに言ってた。
茉里自身、相手からも電話がかかってきたのを知ってる。
「花形がね、実は一筋縄では別れてくれなくてね。当たり前だよね、3年も続いたんだ。代わりでもなんて言ってたけど、1番にだれだってなりたい」
別れをもちだせば、それはそれは取り乱した。
仕事の時間外だとはいえ、ヒステリックな声をあげていた。
裕之はそれを軽蔑するように見たが、自分にはそういう目をする権利などないから、なんとかなだめようとした。
:11/05/07 22:21
:SH05A3
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