こいごころ
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#718 [向日葵]
諦めたかのような態度をとった彼女だったが、電話で嫌がらせをしていたらしい。
それがわかったのは、馨が茉里の様子からわかったらしい。

馨自身も何度か電話をとったが、その度に毅然とした態度で言葉を倍返しされていたらしく、花形が裕之によりを戻してほしいと何度かまたヒステリックに声をあげていた時、馨との電話の内容をしゃべっていた。

『あの女、電話でなんて言ったと思います!?「これ以上、娘や裕之さんを傷つけたら許しません」!!違うでしょ!!あの女が加賀さんを傷つけてたんじゃないですか!!』

そんな馨の言葉が、裕之はいとおしくて仕方がなかった。

⏰:11/05/07 22:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#719 [向日葵]
何ヶ月かそんなことを繰り返していたが、花形は疲れたようにいつも通りになった。
裕之には、どこか冷たかったが、裕之は気にはしなかった。

最初はどこかげっそりと、そして全身がトゲでもまとっているのではないかという雰囲気だったが、それも次第になくなっていき、元の花形らしい空気に戻っていった。

その頃には、裕之とも普通に接していた。

そしてしばらくして、花形は会社を辞めていった。
理由は知らないが、噂によれば、田舎に帰るとのことだった。
そこで結婚もするらしい。

⏰:11/05/07 22:23 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#720 [向日葵]
花形は去る時、裕之に言った。

「今思えば、芸能人みたいな憧れがあったんですよ、加賀さんに。だから離したくなかったんです。だって芸能人を手放すなんて、勿体ないじゃないですか」

「だから好きではなかったんですよ」と、申し訳なさそうに言う花形に、「今の相手とはどうなんだ?」と訊くと、花が咲いたように笑った。

「大好きしか、出てこないですね!」

その笑顔を見た時、裕之は泣きそうになった。

そして心の中で、沢山の「ごめん」とそれより沢山の「ありがとう」を言ったのだった。

⏰:11/05/07 22:24 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#721 [向日葵]
「それを、茉里には話さないんですか?」

裕之はにこりと笑って、椅子にかけてあったジャケットを手にとった。
帰る支度だと思えば、宗助は冷めきったコーヒーを一気飲みする。

冷めても美味しかったコーヒーを、暖かいまま飲みたかったと少し悔やみながら、伝票に手を伸ばす前に伝票をとられる。

「僕が誘ったんだ。長話にも付き合ってもらったのに、君に出させるわけないじゃないか」

「でも、あの」

「いいのいいの」

⏰:11/05/07 22:24 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#722 [向日葵]
会計を済ませ、車に乗る。
シートベルトをしめながら、裕之は口を開く。

「茉里にはね、恨んでもらったままでいいんだ」

「え……」

車がゆっくり発進する。
ここにくる時の運転を抜きにすれば、裕之の運転は丁寧なものだった。

「茉里にまで許してもらったんじゃ、僕はただの幸せ者になる。僕がしたことは、決して許されることじゃない」

宗助はそれをきいて、うつむく。

茉里と付き合うまで、宗助は茉里に対してひどいことをした。
それでも彼女は手を広げて待っていてくれた。

⏰:11/05/07 22:24 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#723 [向日葵]
そんな彼女に、ときどき心苦しくなる時がある。

だから、自分が表現出来る限りの「好き」を彼女に表す。

「許してほしいけど、許してもらえば苦しい。複雑で歪んだこの茉里への感情は、唯一、僕に残った罰なんだ」

「もし、茉里が許すと言ったら……?」

そう言うと、裕之は黙ってしまった。

宗助はふと思う。

茉里はもしかして、自分が「唯一の罰」だと感じている?
だから許せないのかもしれない、と。

⏰:11/05/07 22:25 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#724 [向日葵]
それなら、もうそんな役目はやめてやってほしい。
茉里は、そんなことを望んではいない。

沈黙が続いたまま、車が停まった。
停まったのは、またもや茉里の家だった。

「もう遅いし、ご飯食べて帰りなさい。家の人には連絡するといい。……というか、予定は大丈夫かな?」

「はい。今日は母が仕事休みですから、妹は1人にしてないので」

「そうか。今日は悪かったね」

⏰:11/05/07 22:25 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#725 [向日葵]
今思った。

裕之の笑った顔は、茉里と似ているんだな、と。

家に入ると、ドアの開いた音を聞いて、馨がやってきた。

「おかえりなさい。……あら?」

不思議そうに宗助を見る。
初めて見る茉里の母に、宗助も思わずじっと見つめ返してしまう。

するとまるで目で話しをきいたかのように、馨は急に納得して、茉里を呼ぶ。

「茉里ー、彼氏さんが来てるわよー」

⏰:11/05/07 22:26 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#726 [向日葵]
馨の言葉に、遠くから「ええっ!?」と驚いた声がきこえたかと思うと、茉里が転ぶようにして玄関へやって来た。

「宗助!ど、して……っ」

「僕が夕飯に誘ったんだ。馨、夕飯はたくさんある?」

「ええ。丁度作りすぎたぐらいですから」

「この匂いは……。僕の好物だね」

「正解です」

⏰:11/05/07 22:26 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#727 [向日葵]
夫婦の間に流れるやわらかな甘い雰囲気に、見てるこちらが恥ずかしくなりそうだったが、茉里は慣れっこなのか、手招きして宗助を家に入れる。

「ああなったら長いから。ほっといてかまわないよ。いつまでも新婚気分だから」

2階に上がると、木製のシンプルなドアがいくつかあった。

手前から2番目のドアが茉里の部屋のものらしく、茉里はそこを開ける。

妹の華名や栞とは違う、年頃の、しかも彼女の部屋に入るとなると、どこかドキドキするものだとは思うのだが、あっさりと通されれば、ドキドキすることすら忘れてしまっていた。

⏰:11/05/14 22:46 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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