こいごころ
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#728 [向日葵]
茉里の部屋は、洗いたての洗濯物のような、優しい匂いがした。
家具もベーシックな色で、宗助は落ち着いて入れた。

妹の華名は、淡いピンクだとはいえ、なんとなく落ち着かないのだ。

ところどころに小さなぬいぐるみがあったり、ポストカードが貼られているのを見れば、落ち着いた部屋にも女の子らしさを感じる。

ベッドが目に入った時に、少しだけドクリと血が熱くなったのは、男ならば仕方ないことだ。

⏰:11/05/14 22:47 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#729 [向日葵]
「アイツと……なんの話してたの……?」

そのベッドに、茉里が腰をかけるものだから、宗助は少しドキリとする。

躊躇ないその行動は、宗助を信頼してるからこそだとは思うが(下に親もいるし)、信頼されすぎもちょっと困るものだと、心の中で苦笑いした。

「あのお2人の過去だよ」

「……そう」

「なあ茉里。親父さんを許せないのは、今も変わらないか?」

⏰:11/05/14 22:47 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#730 [向日葵]
「……宗助……?まさか、アイツの話に同情したとか」

「そうじゃない」

言葉を途中で遮るように、宗助は否定する。
茉里の近くに座り、思ったことを言ってみる。

「おれは、茉里がもう許したいんじゃないかと思ったから」

「私が……?」

茉里は訳がわからないとでもいうように顔を歪ませる。

「怒らないでくれ。そんなつもりで言ってるんじゃないから」

⏰:11/05/14 22:48 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#731 [向日葵]
茉里はそれでも、眉根を寄せたままだ。
怒っているというよりは、戸惑っているのだろう。

茉里の心情を確認してから、宗助は言葉を続ける。

「茉里はもしかして、親父さんの思ってることをわかってるんじゃって思っただけ」

「あいつの思い?」

「うん」

「なに?あいつの思いって」

⏰:11/05/14 22:50 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#732 [向日葵]
「親父さんは……。茉里に嫌われたままでいることが、唯一の罰だって言ってた」

茉里は眉間のしわをさらに深くするが、その目は、どこか悲しそうに揺れていた。

「どうして私が、あんな奴の思うつぼにならなきゃなんないの……。それに、それが罰だと思ってるなら、万々歳よ」

「本当に?」

宗助はじっと茉里の目をみつめた。
問いただすように。
茉里の真意を見出だすために。

茉里の目は透き通っていて綺麗だが、その奥は暗く深くなっている。
彼女はきっと、その闇から出てこれずにいる。

⏰:11/05/14 22:50 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#733 [向日葵]
幼い心に刻まれてしまった深い闇は、色を増していくばかり。

その闇を、どうすれば、薄めてやれる?
あとどれぐらい白を混ぜれば、灰色になる?
そして、白くなる?

茉里も宗助の目をみつめかえす。宗助の目はとても好きだ。

真面目で、けれど柔らかく自分を見守ってくれているから。
けれど今は、まるで脳天からまっすぐ棒をいれられたように突き抜けそうで、怖くて、そらしたくて仕方ない。

「…………っ」

⏰:11/05/14 22:50 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#734 [向日葵]
何を言えばいい?

宗助は私に、どんな言葉を待っているの?

私に許せというの?
あんなひどいことした奴のことを?

私は許したい?
あの大きな手でまた、頭を撫でてもらいたい?

私は…………。

「わからない…………」

一粒だけ、涙が落ちた。
何が悲しいかわからない。
もしかすれば、嬉しいのかもしれない。
そんな感情すらも、わからなかった。

⏰:11/05/14 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#735 [向日葵]
「本心は、許したいとか……思ってるかもしれない。でもそれはすぐに、大嫌いとか、許したくないとか、そんな思いに潰されて消えていく……。じゃあ許したいと思ったのは、偽善みたいなもので、もしかしたら、それよりひどい、あいつを憐れに思う心からくるものなのかなとか……」

許したい。
許さない。
大好き。
顔もみたくない。

光と影のように、いつも心にその2つはあって、結局自分は、どちらの思いが強いか、わからなくなっていった。

考えれば考えるほど、混乱して、吐きそうになって、考えるのをやめにした。

⏰:11/05/14 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#736 [向日葵]
許したい。

でも許せばあいつばかりが救われる。

許さない。

それが自業自得というものだ。

「いや……。どうして……」

宗助、どうしてそんなこというの……?

近くにあったクッションを急に掴んだ茉里は、宗助に投げつける。
突然のことに戸惑った宗助は、まんまとそのクッションの餌食になった。
けれどそれだけじゃおさまらず、茉里は周りのまだあったクッションやら枕やらを投げてくる。

⏰:11/05/14 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#737 [向日葵]
幸いなのが投げてくるのが柔らかいことだと、次々に飛んでくるものを避けながら宗助は呑気にもそう思った。

「どうして宗助が私の家族関係にそこまで首をつっこむの!!私の家族のことじゃない!!宗助は関係ないじゃない!!」

「ま……っつり……、ちょ……!」

「私があいつを許そうが許すまいがどうでもいいじゃない!!」

「茉里!!」

ようやく茉里の腕を掴んで制止させると、そのまま引っ張って、抱きしめる。
それでも、茉里は暴れた。

「ほっといて!!もうほっといて!!こんな……こんな思いさせないで!!」

宗助は力をいれておさえようとする。
女の子だと思って油断すると、拳で殴ってきそうな勢いだ。

⏰:11/05/14 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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