こいごころ
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#758 [向日葵]
口が、波でもうってるかのような形になりそうなのを必死で堪える。
「私がどれだけ悲しかったかなんて、しらないでしょ」
「……」
「大好きだったのに……っ、う、うら……っぎられた気持ち、わかんないでしょ……っ」
家に帰るのが嫌で、もうこの家族は一緒にいられないかもしれない不安が毎日ついてきた。
「ふぇ……っ?んくっ、私……っ、すごく傷ついたんだからぁぁぁ!!」
:11/05/28 20:17
:SH05A3
:☆☆☆
#759 [向日葵]
なにもかもが爆発した。
5年間、言いたいことはいっぱいあって、でも言いたくなくて、けれど思い知れと思った。
もう恨まなくていい、言いたいことは言った、その達成感とか安心感とか、全部が弾け飛んだ。
子供みたいに「うえぇぇえん!!」なんて言って泣き叫ぶ自分をみっともないと思いながらも、声を出さないようにすることが出来なかった。
「もう疲れたっ!!娘にこんな思いさせ……さ、せな、いでよおっっ!!私はふ……っふつ、うに幸せに、17年間を、しゅ、し、過ごしたかったあぁぁっ!!」
:11/05/28 20:17
:SH05A3
:☆☆☆
#760 [向日葵]
裕之はなんとも言えない笑顔で、茉里の言葉に頷く。
「昼ドラじゃ、な、いんなだからさぁっ、ドロドロしたよ……ようしょ……、要素、入れないでよおぉっ!!」
「茉里さっきから噛み倒してるよ」
「アンタのせいでしょうがぁ!!必死にっ、話してんの、に、茶化すなあぁっ!!」
裕之はまた笑みを深くする。
その笑顔が胸にしみて、茉里はまた一段と声を上げた。
ふわふわと裕之が頭を撫でれば、撫でるその掌の感触が懐かしいあの頃を思い出してまた泣けた。
:11/05/28 20:17
:SH05A3
:☆☆☆
#761 [向日葵]
ああみっともない。
馬鹿らしい。
許してしまった。
でもそんな顔で笑うなら、許してあげてよかった。
そう思ったことなんて、当分言わない。
全部いっぺんに許しちゃうのは、なんだか嫌だから。
だからまず、今日は一緒にご飯を食べようか。
:11/05/28 20:18
:SH05A3
:☆☆☆
#762 [向日葵]
[18]茉里と父
急に泣き声がきこえたので、リビングで椅子に座って待っていた宗助はびくりとはねる。
泣きながら何か言ってるのはわかったが、何を言ってるかはまったくわからなかった。
さっき自分の前で混乱してても泣かなかった茉里が、あんなに大きな声で泣いている。
でもそれはいいことだと思った。
茉里が、甘えている証拠だからだ。
そしてその甘えている相手が、裕之なのだから尚更良い。
どんな形でそうなったかはしらないが、きっと和解出来たんだろう。
結局自分はなにも出来なかったし、したところで役には立たなかったかもしれない。
:11/06/05 22:26
:SH05A3
:☆☆☆
#763 [向日葵]
最終的には、家族でどうにかしていかなければならないのだから。
何か役に立てればと意気込んだ自分としては、どこか情けないし切ない気もするが、茉里がもう苦しまずにいると思えば、自然と笑みが口元にあらわれる。
「きっとね……」
馨は戸口をみつめながら、そっと微笑み、宗助に話しかける。
「茉里はきっかけが欲しかったんだと思うの。引くに引けなくて、しかもなんで自分が引かなきゃならないんだとか葛藤しながら」
「きっかけもですけど、茉里の……っと、すみません。茉里さんの心に、小さな変化があったから、良い方向へ行ったんだと思います。それに……。……あの、なにか……」
:11/06/05 22:26
:SH05A3
:☆☆☆
#764 [向日葵]
馨がじっとみつめるものだから、宗助はなにか間違ったことを言ってしまったのではないかと不安になった。
馨の目は、全てを見透かしてしまいそうだ。
悪いことを考えていなくても、なんだかソワソワしてしまう。
居心地が悪いわけではない。
いや……悪いのかもしれないが、特別「もうみないでくれ」と思うほどのものではない。
「ああ、ごめんなさいね。私、人をみつめるのくせで。続けて続けて」
:11/06/05 22:27
:SH05A3
:☆☆☆
#765 [向日葵]
人をみつめるのはくせになるものなのか……?
そういえば、茉里もじっとみつめてくる。
「いえ……もうやめときます。偉そうに語るものでもないですし」
「あら、遠慮しなくていいのに。私たちが育てた娘が、どんな風に周りからみられてるか、気になるもの」
「付き合いの短い奴が、17年間手塩にかけた娘をとやかく言われるのは、嫌ではないですか?」
:11/06/05 22:27
:SH05A3
:☆☆☆
#766 [向日葵]
馨はきょとんとして宗助をみつめる。
改めてみると、馨の顔は少女のように幼く、そして綺麗だ。
肌だって、まだスベスベしていそうだし。
馨は目尻を下げると、くすくす笑いだした。
「あなたは真面目ね。そこまで考えなくていいのよ。それにね、例えあなたからみた茉里と私たちからみた茉里が違っていてもいいのよ。中と外では人の顔は違うものだから」
「けれど……」
「あなたがもし茉里を馬鹿だと思っていても、愛情があればいいのよ。愛情もなく、本当に馬鹿にしてたら、例え外の茉里が馬鹿でも、それはカチンとくるわ。それこそ、手塩にかけた娘を、少ししか付き合ったことがないあなたになにがわかるの!ーーってね」
:11/06/05 22:27
:SH05A3
:☆☆☆
#767 [向日葵]
ふわふわと話しているのに芯がある馨の話し方が、宗助はききやすかった。
その姿、考え方をみながら、ききながら、「この人は、茉里の母だなあ」と思った。
馨の、愛情の深さを感じて、そう思った。
ーーーーーーーーー…………
「泣きやめそう?」
しゃっくりが出て、涙と鼻水でぐしゃぐしゃな茉里に、裕之が優しく問い掛ける。
:11/06/05 22:28
:SH05A3
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