こいごころ
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#798 [向日葵]
考え事しながらお茶を飲むものじゃない。
咳をしても咳をしても、誘発されるかのようにとまらない。

「だ……だい、じょ、ぶ……げほ……」

じゃなくて。

「あの……。ずっと言おうと思っていたんだけど」

「うん。なに?」

思い出しても、黒い霧は襲って来なかった。
だから落ち着いて言える。
深呼吸するが、それはもう咳がおさまったかを確認するだけのものだった。

⏰:11/06/25 16:36 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#799 [向日葵]
「いつだったか、事故した時、「死ね」だなんて言ってごめん……」

裕之は全く気にしていないように、「ああ」と言った。

「茉里が謝ることじゃない」

「でも、その……」

茉里は馨をちらりと見る。
浮気相手のことを云々話すのは、馨にとって苦痛ではないだろうか。

けれど馨は薄く笑って、変わらない表情で二人の話に耳を傾けていた。

それは大丈夫だということだと思い、茉里は言葉を続ける。

⏰:11/06/25 16:36 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#800 [向日葵]
「あれは、浮気の途中だったんでしょ……?」

「そういえば茉里は、僕が何人も浮気してたと思っていたんだよね?それは違うってことをとりあえず訂正しとくね。訂正した上で話をすれば、あれは浮気ではなかったんだ」

「じゃ……あ……?だって、付き添いの女の人がそういうニュアンスで話してたけど」

「それはね」

耳を傾けていた馨が口をはさんだ。
その間に茉里はお茶をすする。
今度はむせないように。

⏰:11/06/25 16:37 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#801 [向日葵]
「お母さんも一緒にいたでしょ?だから、お母さんへの当てつけ。あの時はすでに、お父さんは浮気をやめてしばらく経ってたし、あなたはお父さんの話をききそうもなかったから」

茉里はうっと唸る。

「だって……」

「気にしなくてもあの時は仕方なかったのよ。人間誰だって、信じてみようって心の底から思わなきゃ、いくら真実を言っても嘘にきこえるものだから」

母の器はやはり大きい。
この小さな体に、どのくらいの愛情がつまっているのだろう。

「お母さんは……、どうしてそんなに早くにお父さんを信じれたの?」

⏰:11/06/25 16:37 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#802 [向日葵]
馨はきょとんとする。
裕之のほうを見ると、同時に裕之も馨のほうを見る。
まるで示し合わしたかのように、二人はふっと笑みをこぼして、茉里を見る。

「愛しているからって理由が、一番大きいかしらね」

単純な理由が、とても大きな理由だと思えた。
だから茉里も、今日初めて、二人に向けて、満面の笑みを見せた。

今、この瞬間、忘れてしまっていた家族の時間を取り戻せたのだった。

⏰:11/06/25 16:38 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#803 [向日葵]
ーーーーーーーー…………

次の日の朝。
茉里はふと目を覚ました。

今……何時……?

近くに置いてあった携帯を見る。
起きる時間より一時間も早い。
もう一度寝ようと目を閉じるが、どうしてか寝れそうにない。

仕方ないとカーテンを開けるも、冬の太陽はまだ夢の中にいるらしい。
とりあえず顔でも洗うかと、下に行くことにした。

リビングには明かりがついている。
それもそのはず。
馨が裕之と茉里の分の弁当を毎朝作ってくれているのだから。

⏰:11/06/25 16:38 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#804 [向日葵]
なにか手伝うことがあるかもしれない。

そう思った茉里はリビングに入ろうとした、が。

「裕之さん、ご飯の準備ができないからあちらで座っててください」

「今日はとても目覚めがいいんだ。だから君を手伝うよ」

「そう言って、さっきから私に抱き着いてるだけじゃないですか」

「ああ、そういえば、朝のキスがまだだったね」

「ちょっ……、裕之さ……っ!」

⏰:11/06/25 16:39 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#805 [向日葵]
茉里は遠い目をしながら、足音をたてないように洗面所へと向かった。

二人がラブラブであることは知っていても、ああいうやりとりは出来ればききたくはないものだ。
こっちが恥ずかしくなってくる。

洗面所について蛇口をひねれば、つい手を引っ込めてしまうぐらい水が冷たい。
けれどそれぐらいが、まだ起きてない体には丁度いいのかもしれない。

手で器をつくり水をため、顔に勢いよく数回かける。
さっぱりして鏡を見るのと、洗面所に裕之が来たのとが一緒になった。

⏰:11/06/25 16:40 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#806 [向日葵]
「あれ、茉里。起きるのにはまだ早いんじゃないのかい?」

「でも目が覚めちゃったし……」

タオルで顔を拭きながらちらりと裕之を見れば、さっきのあんなやりとりの後のせいか、顔がツヤツヤとしているように見えた。

なんかそれって……欲求不満だったみたいでやだな……。
父親がエロいってどうなの。
いや、エロそうだけど……。

「ん?どうかした?」

「いやなんでも」

タオルを元の位置に戻して、立ち去ろうとするが、裕之がにこやかにじっとみつめてくるから、茉里は足を止める。

「……なに?」

⏰:11/06/25 16:40 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#807 [向日葵]
「おはよう」

「……?おはよう」

「おはよう茉里」

「うん、おはよう……。……?なに、一度言えばわかるけど?」

裕之は更ににこにこと笑うと、茉里の頭のてっぺんにキスを落とした。

急なことに驚くより、キョトンとしてしまった茉里は、変な顔をして裕之を見る。

「だ……だから……、なに……?」

裕之はなにも言わず、洗面台の前に立って、歯磨きをしだした。
その周りには音符やら花やらがいくつも飛んでる風に思えた。

ああ、なるほどね。
「おはよう」って言えることが、嬉しいってことね。

⏰:11/06/25 16:41 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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