こいごころ
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#111 [向日葵]
何を話していいか分からなくて、茉里はやっぱり窓の外を見つめる。
「なんで……」
「へ?」
宗助が独り言のように呟いた。
「なんで先輩を好きになったかって、前に訊いたよな」
「あ、ああ……、うん」
「弱いとこ、見せなかったからさ……守ってあげたかったんだ」
遠くを見つめるようにして、まるで思い出話をするように、宗助は話を続ける。
:09/05/09 00:05
:SO906i
:☆☆☆
#112 [向日葵]
「先輩は、俺にだけ見せてくれた。それが、特別な気がしたんだ。……でも、先輩を本当に守ってやるのは、俺じゃないんだ……」
スッと、雫が宗助の手に落ちる。
宗助が、涙を流す。
たくさん、次々と……。
「今日まで、部活の中では、俺は特別な存在だったかな……」
本当は、もっともっと泣きたいのだろう。
でも泣けない。
自分の気持ちをさらけ出すわけにはいかないから。
でもこうやって、茉里の前だけで泣くのは、少なくとも部活内では特別と認めてくれてるからだろうか?
:09/05/09 00:06
:SO906i
:☆☆☆
#113 [向日葵]
それでもいい……。
窮屈でも、我慢する。
嫌な態度とるかもしれない。
それでもいいから……。
「泣かないで……」
茉里は宗助の頭を撫でる。
まるで、試合会場で、先輩の頭を撫でる宗助自身のように。
あの時の宗助みたいに、私は今、宗助を支える事は出来ているだろうか。
ほんの数ミリでも、この気持ちが伝わっているだれうか。
でも今は、その涙を止めてほしい。
胸が苦しくなってしまうから。
:09/05/09 00:06
:SO906i
:☆☆☆
#114 [向日葵]
宗助はされるがままに静かに泣き続ける。
そうやって、涙も枯れた時、宗助が笑顔であってほしいと茉里は思った。
しばらくして、気が済んだのか、目をぐいとこすって、宗助が顔をあげた。
「格好悪い……。男がマジ泣きとか……引くよな……」
茉里は首を傾げる。
「男だからって、泣いちゃ駄目なんて、私は思わないよ?」
宗助は茉里を珍しいものでも見るようにして、薄く笑った。
「そっか……」
:09/05/09 00:07
:SO906i
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#115 [向日葵]
少しずつ、元気が戻ってきてるみたいで良かった。
茉里はホッとして、微笑む。
「そういえば……さっき、随分とピリピリしてたけど、なんで?」
ギクリと体を震わす。
「き、気のせい……」
「じゃなかったアレは」
「別に、宗助には関係ないでしょ!」
そう言えば、宗助は眉を寄せて不機嫌そうにする。
「な、なに……」
「関係ない……ね。気遣っちゃいけないんですか……?」
:09/05/09 00:07
:SO906i
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#116 [向日葵]
「まったまたー。大して気にしちゃいないでしょ?」
ほっといても私は嫌いになんかならないんだから。
「……そうでもないよ」
え……。
茉里はドキッとする。
「元気ないのは、やっぱり気にはなるからね」
茉里は顔が赤くなるのを感じた。
それを見た宗助は、目をまん丸くさせる。
「なんで赤くなるの……?」
「え……いや……」
「い、言っておくけど、別に他意はないからな……っ?」
:09/05/09 00:07
:SO906i
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#117 [向日葵]
「わ……分かってるよ!」
今日は忙しい1日だなと、茉里は思った。
怒ったり、悲しんだり、すねたり、嬉しかったり……。
宗助が相手だと、自分がどんなタイプの人間かわからなくなってしまいそうだ。
「あ、私も訊きたい事があるのっ!」
「……なに?」
「どうして前、変質者に襲われた時、宗助いたの?」
宗助はそれを訊かれるとは思ってもみなかったみたいで、頭をポリポリとかく。
:09/05/09 00:08
:SO906i
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#118 [向日葵]
バツが悪そうな顔をしながら、ため息を吐く。
「……内緒」
「なにそれっ。嘘でも心配だったからとか言えばいいのにっ!」
「嘘でも言ったら調子に乗るから嫌」
「あっそ!」
すねた茉里は、なにか飲もうと鞄を開ける。
乱暴に鞄の中をあさっていると、中から何かが落ちた。
「なにこれ」
宗助が拾って、見る
「え?」
それは、会場で渡された、メールアドレスが書かれている紙。
:09/05/10 22:38
:SO906i
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#119 [向日葵]
茉里は顔が青くなる。
浮気者だと思われたらどうしようと、動きを止める。
「ああ、会場で言ってた奴ね」
「聞いてたの?」
「いやでも耳に入ってきた」
宗助はそれを返す。
茉里は外のファスナーがあるポケットにそれを素早くポイと入れる。
「かっこよかった?王子様のような沢口は」
「私は……興味ないもん。これだって勝手に……」
:09/05/10 22:38
:SO906i
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#120 [向日葵]
「メールくらいすればいいじゃない。他校と交流を深めるのだって大切だしね」
茉里の胸が、また鋭い痛みに襲われる。
何も……わかってない。
興味がないのは、宗助しか見てないからなのに。
茉里は悲しくなってうつむく。
まだ……伝えたりないのかな……。
「宗助……」
静かに茉里は口を開く。
「今日、先輩と帰りなよ」
:09/05/10 22:39
:SO906i
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