こいごころ
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#131 [向日葵]
赤く長いたすきを茉里に差し出したのは、宗助だった。
スコアを付ける準備をしていた茉里は、ファイルを一旦置く。
少し背の高い宗助は、背を向けるとちょっと屈んでくれる。
なんで、こんな普通なんだろう……。
ついこの間、あんなにぎくしゃくしていたのに、1日経てば宗助はいつも通りに戻っていた。
安心したような、物足りないような、茉里はそんな気分だった。
「随分と、気に入られてるな」
「なにが?」
「沢口」
:09/05/13 02:07
:SO906i
:☆☆☆
#132 [向日葵]
茉里は思いきり眉根を寄せる。
「嬉しくないよ」
「顔は申し分ないし、性格も良さそうじゃないか」
「竹刀で顔面を思いっきり殴られたいの……?」
どうしてそんなひどい事言うのよ……。
出来たという合図に、背中を叩くが、いつもの叩く強さより遥かに強く叩いた。
宗助は少し呻くが、茉里はそんな事知る由もなかった。
「どうかした?茉里ちゃん」
「なんで?」
:09/05/13 02:07
:SO906i
:☆☆☆
#133 [向日葵]
「目がつり上がってる」
茉里は目元を揉みほぐす。
自分だって、こんな顔したいわけじゃない。
「そういえばね、千早先輩が今日見に来てくれるんだって」
あっ、そ……。
茉里の心は更に荒んでいった。
黒板に、チョークで自分たちのチームの名前を書く。
「僕らのも書いてくれる?」
きた……。
激しい脱力感に襲われる。
「自分で書いてください」
「加賀さんの字、きれいで見やすいから」
:09/05/13 02:08
:SO906i
:☆☆☆
#134 [向日葵]
もういい……。
書こうと手を上げたとき、ふわりと誰かの手が重なる。
そしてチョークを抜き取られる。そばに立たれれば、漂ってきた香りで誰だか分かる。
「アンタは上、うまく書けないだろ?変わる」
「……宗助はノッポだもんね」
ギロリと睨まれたが、茉里は知らんぷりをする。
顔を背ければ、我慢していたかのように顔の体温が一気に上昇する。
手が触れた……。
もっと別の取り方があるだろうに、なんで……。
自分ばかり、うろたえる……。
:09/05/13 02:08
:SO906i
:☆☆☆
#135 [向日葵]
たまには宗助も、自分の事でうろたえてしまえばいいのに……。
触れたところが、まだ熱を持っている。
――――――――…………
試合を開始し、20分程が経過した。
男子の試合。
黒板に結果を書いていると、次の番の宗助が見に来た。
「1……2……、ここで、あ、そっか……」
なにやらブツブツと言いながら、決まった技の本数を数え、今やっている試合を見る。
「ほぼ互角ね」
:09/05/13 02:08
:SO906i
:☆☆☆
#136 [向日葵]
「まあな。とくに沢口は強い……」
嫌味でも意地悪でもなさそうだが、茉里は苦い顔をする。
しかし、宗助の言う通り、沢口の剣道はきれいだった。
他の北高の部員と違い、経験がない茉里でさえ、その技の1本1本が磨かれていると思った。
でもやっぱり……。
「私は……宗助の剣道の方がす……」
「頼むから、今あまりふざけた事言わないでくれ。集中したいんだ」
ふざけた事……か……。
:09/05/13 02:09
:SO906i
:☆☆☆
#137 [向日葵]
そりゃこの状況で言うセリフではないかもしれないけれど、あんまりだ。
茉里は下唇を噛む。
また黒板に向き直った時、道場の戸が開いた。
「あ、茉里ちゃん」
「千早先輩っ」
現れた千早先輩に、宗助は振り向く。
千早先輩は黒板をみて、試合状況を確認すると、宗助の方を見る。
「ちょっと、ここらでバシーンと決めなさいよ!」
「分かってます。でも、相手は沢口ですから……」
「ああ、あの子強いよね。でも、自信もちなさい。アンタの方がいい剣道してるわっ」
:09/05/13 02:09
:SO906i
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#138 [向日葵]
茉里が言いたかった事を、先輩はあっさりと言ってしまった。
宗助は止めなかった。
言ってほしかったのかもしれない。
宗助は黙って頷く。
集中出来ないんじゃ……なかったの?
皮肉にも、先輩が来た後の宗助の試合は、内容も結果も申し分なかった。
また10分休憩が入る。
ヤカン2つ分のお茶を入れ終えた茉里は、補充でまた出て行く。
靴を履き替えるところまで来たとき、腕を引かれた。
宗助だ。
:09/05/17 01:34
:SO906i
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#139 [向日葵]
なにか、苦しそうに顔を歪めている。
「お茶なら今から行くとこだよ」
「……そうじゃない。さっきの事で」
「さっき?なんの事?」
意外なほど、茉里の顔は冷静だった。
だから宗助は困る。
「宗助はなにか悪い事したの?」
「……気が……する……」
「いらない心配するなら、先輩と喋って来たら?」
茉里は踵をかえす。
宗助はそれ以上追っては来なかった。
:09/05/17 01:35
:SO906i
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#140 [向日葵]
ヤカンに水を入れながら、茉里はぼんやり考える。
どうしたら伝えれるのかな。
まだ、宗助の中で、私の想いは軽いものなのかな?
重い想いって、どんなのだっけ?
言われてきたけれど、分からない。
分からないから、それ以上の表し方が分からないのかもしれない。
気を緩めたら、泣きそうだけど、宗助の立場からすれば、好きな人とから誉められるのは嬉しい事だから、仮彼女とか、中途半端な位置にいる茉里よりは、集中出来るのだろう。
むしろやる気すらおこる。
:09/05/17 01:35
:SO906i
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