こいごころ
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#141 [向日葵]
だから、どんなにひどい事を言われても、全ての怒りを向けることが出来ない。
気持ちは、分かるから。
大きく深呼吸する。
落ち込んでいても、仕方がない。自分は、自分のやり方があるのだから。
――――――――…………
今日の日程が終了した。
各々片付けにかかる。
「あ、宗助!一緒に帰らない?」
千早先輩が言う。
茉里はその言葉を耳にしながら、お茶を配っていた。
一向に、宗助のオーケーの返事が聞こえない。
:09/05/17 01:35
:SO906i
:☆☆☆
#142 [向日葵]
自分に気を遣ってるのだと分かる茉里は、さりげなく席を外す。
今日は1人コースだ。
そう思いながら、歩いて更衣室へ向かう。
「お疲れ様」
脱力する気もなくなった。
しつこく声をかけられ続けられたら、嫌でもその声の主が分かってしまう。
「なにか?沢口さん」
「だからさ、敬語やめない?」
後ろから茉里の前へ回り込んだ沢口は、どれだけ失礼な態度をとってもその微笑みを崩さない。
まるで能面だ。
:09/05/17 01:36
:SO906i
:☆☆☆
#143 [向日葵]
「一緒に帰らない?」
「私は1人で帰りたいので」
「ちょっと会話すれば、お互い色々分かるじゃない」
茉里はキッと沢口を睨む。
「知りたくもないの。私は好きな人がいるし、他の人なんて考えたくないの。迷惑な……」
そこまで言って、茉里は言葉を止める。
気づいてしまった。
自分は沢口をどうこう言える立場じゃない。
茉里だって、同じなのだ。
:09/05/17 01:36
:SO906i
:☆☆☆
#144 [向日葵]
けれど茉里は、アピールして続けいて、いつか振り向いてくれればいいなどと言って、仮彼女として、宗助そばにいることをゆるされている。
でもこれは、今、沢口がやっている事と同じようなもので、茉里自身、けれが迷惑と感じているなら、宗助だって迷惑を感じているのかもしれないのだ。
そんなこと、気づきたくもなかったのに……っ。
八つ当たりのように、茉里は沢口を睨んだ。
「とにかくもうやめて!」
茉里は更衣室へと走って行く。
:09/05/17 01:36
:SO906i
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#145 [向日葵]
遠くで沢口が呼んだ気がしたが、無視した。
ホントに、仮彼女でいていいの?
アピールするどころか、宗助にますます嫌われているんじゃ……。
だから今日、あんな事を言われて……。
自問自答しながら、更衣室で鞄を取ると、またすぐに出て、今度は駅へと走って行く。
頭がうまく回ってくれない。
少しして、茉里はゆっくりと歩き出した。
今更……こんなに深く考えても仕方ないのかもしれない。
:09/05/17 01:37
:SO906i
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#146 [向日葵]
他に好きな人を作れば、きっと楽な道を選べる。
でも好きな人は……作るものじゃないから……。
ほら、こうやって、また理屈をこねてしまう。
自分はこんな風でしか、恋愛が出来ないから。
そんな簡単に、諦めるなんて、したくないから。
「……もうっ……」
今、自分がどういう考えを持てばいいか、分からなくなってる。
ため息をひとつ吐いて、足のスピードを速くしようとした時だった。
:09/05/17 01:37
:SO906i
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#147 [向日葵]
勢いよく、肩を引かれる。
「なに、先に帰ってんの……」
息を切らせた宗助が、そこにいた。
「宗助……」
気の抜けた声で、彼の名を呼ぶ。
「なんで……。先輩は?」
「彼氏と会うから、やっぱり一緒に帰れないって」
なんだ。それでか……。
「……それもあった。けど、気になったから」
「なにが?」
「アンタが」
:09/05/17 01:37
:SO906i
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#148 [向日葵]
茉里は目を見開く。
私を……?
「さっき、やっぱり俺の言葉が間違ったと思ったから」
「さっき?」
「ふざけた事だなんて……言ったから」
茉里は顔を伏せる。
いつになく大人しい茉里に違和感を覚えた宗助は、首を傾げて茉里をじっと見る。
「いいの。気にしてないから」
「嘘だ」
「ホントだもん」
:09/05/19 01:48
:SO906i
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#149 [向日葵]
「いい加減にしろっ」
宗助は声を荒げる。
茉里はびくりと体を震わす。
「なに気にしてるか知らないけど、不満があるなら言ってくれなきゃ、俺が気になるんだよ。これでもアンタの事、色々心配してんだからなっ!……ってか、これ前も言っただろ」
ほらね、やっぱり諦めるなんて出来ない。
「ふざけた事なんて言って悪かった……。俺は、加賀の俺に対する……好意を、ふざけてるなんて思ってないから」
:09/05/19 01:49
:SO906i
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#150 [向日葵]
顔を見れば、声を聞けば、姿を見つければ、やっぱり思ってしまう。
「先輩は褒めただけだけど、アンタは、好きだなんて言おうとするから……。ちょっと恥ずかしかっただけ……っ!」
乾いた地面に、雨粒のような雫が2、3滴落ちる。
「……加賀?どうした?」
気づけば、茉里は泣いていた。
ただ、その涙がどこからくるものかわからなかった。
切ない、もどかしい、嬉しい、愛しい……。
:09/05/19 01:49
:SO906i
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