こいごころ
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#21 [向日葵]
ドアを開ければ、いつもみたいに彼女は声をかけてくるだろうか?
ガラッと開ければ、まだクラスメイトがちらほらいる程だった。
やっぱりいない。
「入んないの?」
後ろからの声に、宗助は勢いよく振り返る。
そこにいたのは、茉里だった。
茉里はにっこり笑う。
「おはよー笹部っ!」
「……はよ…」
「低血圧だね、笹部はっ!」
宗助の背中を強く叩く。
:09/04/10 01:54
:SO906i
:☆☆☆
#22 [向日葵]
衝撃で宗助はむせる。
そして呆然とした。
なんだ、心配なんてしなくて良かったじゃないか。
傷つけてすらいないみたいだ。
明るい、いつも通りの彼女だ。
そうだ、あれは、無神経に、彼女が言うから悪いんだ。
そう思えば、昨日失恋した事を思い出して、胸の傷が疼く。
でも、だからと言って、諦める事なんて出来なかった。
そんなに、簡単に諦めるほど、簡単な気持ちじゃなかったのだから。
そう思いながら、宗助は席に着く。
:09/04/10 01:59
:SO906i
:☆☆☆
#23 [向日葵]
一方、少し離れた席から、茉里は宗助を観察していた。
やはり元気がない。
昨日の今日じゃやはり駄目か。
「利用してもいいって言ったのに……」
「茉里も元気ないね」
ミュシャが話かけてきた。
「いつもの朝一での公開告白大会がなかったじゃない」
言われて、茉里は苦笑いした。
ミュシャには、何もかもバレてしまうから厄介だ。
:09/04/10 02:02
:SO906i
:☆☆☆
#24 [向日葵]
「私の好きは、軽いんだって。言われてから、どうやって好きって伝えたらいいか、分かんなくなっちゃった……」
重いは、言われ慣れた。
言葉の意味は、掴みあぐねているけれど、それが自分の好きの形だから、今まで通りですんだけど。
軽いなんて初めて言われたから、どう対処すればいいかなんて、茉里は分からなかった。
「ホント、茉里はバカだね」
「バカだもん」
大好きなのに、猛アピールするくせに、相手の幸せを願う自分は、本当にバカのほか、何者でもないと思う。
:09/04/10 02:07
:SO906i
:☆☆☆
#25 [向日葵]
でも絶対。
「諦めないから」
なんと言われようと、本当の本当の決定打が打たれるまで、諦めたりしない。
茉里は曲がっていた背筋をしゃんと伸ばし、強く思った。
今、諦めてしまえば、この気持ちだって軽いって思われる。
けれど茉里は、軽いと言われた事に、さほど傷ついてはいなかった。
自分みたいな猛アピールを、軽いと言う人が、珍しいから、驚きの方が大きかったのかもしれない。
やっぱり宗助は、今まで好きになった人とは、どこか違うのだった。
:09/04/10 10:48
:SO906i
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#26 [向日葵]
―――――――――…………
「あ」
声が重なる。
自販機の前に来たとき、たまたま宗助とばったり会った。
「笹部もなんか買うの?あ、奢ってあげよっか!」
「……いらない」
「そんな遠慮しなくても……。笹部?」
会話中、笹部の視線が茉里から外れた。
外れた視線の先には……。
「千早先輩……」
とその彼氏。
:09/04/10 10:51
:SO906i
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#27 [向日葵]
中庭のベンチで、仲良く喋っている。
顔を少し赤らめて喋る先輩は、道場で見せた事のない、恋する乙女の顔をしていた。
でも、茉里が気になったのは、宗助だ。
宗助は、昨日と同じように、表情にはあまり出さず、心の中に、いくつもの傷を作っていそうだった。
茉里は、突然平手で自販機のボタンを乱暴に押した。
紙パックのジュースが1つ落ちてくる。
宗助は茉里の行動にびっくりして茉里を凝視していた。
その視線を気にせず、また茉里はボタンを押す。
:09/04/10 10:56
:SO906i
:☆☆☆
#28 [向日葵]
「あげるっ!」
宗助に押し付けられたのは、イチゴ牛乳だった。
こんな物は飲まないと返そうとした宗助の腕を、茉里は引っ張った。
連れて行かれたのは道場の中。
「……何がしたいの」
道場に置いてある椅子に力なく座って宗助が茉里に問う。
「だって、辛いじゃない。無理して見る必要なんてない」
「……アンタ変だよ。俺がフラれて、万々歳なんじゃないの?」
「好きな人の傷ついてる顔なんて見たくないのは当たり前でしょっ!!」
:09/04/10 11:01
:SO906i
:☆☆☆
#29 [向日葵]
ただでさえ、声が響く道場。
茉里の声は、少しエコーがかる。
「笹部は、私の気持ちを信じてないかもしれないけど、私は笹部が本当に好きだもん。理由なんてないよ、分かんないし。そうゆうの、笹部だって一緒じゃない」
まっすぐに見つめられて、宗助は何も言えなくなった。
「私は分かるもん。その気持ち。笹部だって、先輩が幸せそうに笑うから、横取りしたくないんでしょ?」
「……」
「でも諦められないなら、私と同じじゃない」
宗助は、まるでふて腐れているように口を閉ざしたままだ。
:09/04/10 11:06
:SO906i
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#30 [向日葵]
聞いてるのか聞いてないのか、手の中にあるジュースをじっと見ている。
「……違うなら、否定してもいいんだよ……?」
何も喋らなくなった宗助が少し怖くなって、茉里は恐る恐る言ってみる。
でも、やはり反応はない。
1人になりたいのかもしれない。
気をきかせて、茉里はそっと出ていこうとした。
「ゴメン」
:09/04/10 11:09
:SO906i
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