こいごころ
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#31 [向日葵]
宗助が口を開いた。
茉里は足を止め、振り返る。
「八つ当たりだったんだ、昨日のは……。だから気にしなくていいから。軽いだなんて、言う気はなかったから」
今度はちゃんとこっちを向いている。
少し長すぎる前髪から見える目元は、いつもより柔らかい気がしたから、茉里の胸はドキリとした。
「ありがとう……。庇ってくれて……」
そんな事を言われては、茉里の恋する思考回路は暴走し始める。
宗助の前まで行くと、目線を合わせる為、膝をついた。
:09/04/10 11:13
:SO906i
:☆☆☆
#32 [向日葵]
「ねえ、提案なんだけど」
「ん?」
「私を、仮彼女にしてくれない?」
宗助は目を見開いて固まった。
口は半開きになって、焦点はどこに定まっているのやら。
そんな宗助に構わず、茉里は嬉々として続ける。
「先輩を好きなままでいいのっ。でも、やっぱり私の方も見て欲しいじゃない?だから、彼氏がいる先輩が、もし彼女になってたらしてみたい事を、私でしてくれたらいいよっ!そしたらお互いの欲求は晴れるでしょっ!」
とんでもない事を言う。
2週間前と、まったく変わらない。
:09/04/10 11:18
:SO906i
:☆☆☆
#33 [向日葵]
「あ、アンタを好きになる保証なんてないぞっ!」
「だーかーら、仮彼女じゃない。好きになってくれたら彼女にしてっ!もし途中で先輩が彼氏と別れて、先輩の彼氏になりたいと思ったら、私はまた片思いに戻るからさっ」
どこからそういう発想が出てくるんだ……。
宗助は持っているジュースで額を冷やす。
茉里は本気らしく、顔を近づける。
「ね、お願いっ!」
「今答えだすのか!?」
「じゃなきゃ、毎日時間あれば問い詰めるわよ」
:09/04/10 11:23
:SO906i
:☆☆☆
#34 [向日葵]
顔を益々近づける。
いくら好きでなくても、目と鼻の先に顔が迫れば自然と顔は赤くなる。
「ど、どうせ……断ったって、また突飛でもない事言い出すんだろ……」
「私は思ったままに言ってるだけよ」
しばらく間近くで睨み合う。
やがて、諦めたように宗助がため息をついた。
「……どうなって、俺は責任とれないぞ……」
それはつまり……。
「オッケー……?」
:09/04/15 01:20
:SO906i
:☆☆☆
#35 [向日葵]
宗助は距離をとれと言わんばかりに茉里の肩を押す。
そして立ち上がり、洗面台があるところまで歩いていく。
茉里の顔が徐々に明るくなっていく。
「やったーっ!」
「仮だからなっ。それを忘れるなよっ?」
「うん!じゃあ宗助って呼んでいいっ?」
話を聞いてない。
茉里は大はしゃぎしている。
ぴょんぴょん跳び跳ねている茉里を見て、今は何を言っても無駄だと思った宗助は、洗面台に手をついて脱力する。
:09/04/15 01:24
:SO906i
:☆☆☆
#36 [向日葵]
この選択が、お互いにとって吉と出るか凶と出るか、まだ分からない。
手探り状態のまま、茉里と宗助の偽りカップル生活の幕が開いた。
「私頑張るからねっ!」
―一途の力、見せたかった。
ただそれだけだったの。
きみを苦しめるだなんて、この時の私は分かってなかったの。
ゴメンネ、自分勝手で……。
:09/04/15 01:27
:SO906i
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#37 [向日葵]
[2]
桜も散り、緑が青々とすれば、その草木を癒すように今度は梅雨の季節になる。
茉里が所属している剣道部の道場では、県大会に向けて、一際気合いが入った練習が行われていた。
体育館の1階にある道場は、風の通りが悪く、湿気も多い。
剣道部にとって、夏場と湿気は敵。
たった少しの時間で道着は洗濯したように汗を吸って重くなる。
それでも、1つでも勝ち進もうと頑張っている部員の為、茉里はヤカン2つに冷たいお茶を用意する。
:09/04/15 01:28
:SO906i
:☆☆☆
#38 [向日葵]
もうすぐ練習が終わるので、コップにお茶を淹れて待つ。
「10分休憩」
面をとった後、キャプテンがそう告げる。
皆いっぺんにお茶を用意したところまでやって来る。
しかし、1人だけ、面をとったまま窓際でぼんやりしている人物がいるのに気付いた。
茉里はお茶を持って、その人物がいるところまで行く。
「ほら、宗助、お茶っ」
宗助はゆっくりと茉里をみる。
そしてこれまたゆっくりした動作で、お茶を受け取る。
茉里はそのまま宗助の隣に座る。
:09/04/15 01:28
:SO906i
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#39 [向日葵]
「雨、やまないね」
「……まあな」
「暑くて嫌になるね」
「……まあな」
「試合までもう少しだね」
「……まあな」
「千早先輩いなくてさみしい?」
「まあな……って何言わせてんだ!」
即答だった……。
茉里はこっそり頬を膨らませる。
千早 麻衣、通称千早先輩は、昨日から風邪で学校を休んでいる。そのせいで、宗助は元気が無かった。
:09/04/15 01:29
:SO906i
:☆☆☆
#40 [向日葵]
いや、そう気付いていたのは茉里だけだ。
他の人からの見れば、いつものクールで少し無愛想な宗助のまんまなのだ。
自分だけが分かっている。
それが茉里はちょっと誇らしかった。
「まあ、“仮彼女”なわけですから?文句は言いませんけど?」
“仮彼女”
一種の賭け事だ。
彼氏持ちの先輩を諦めれない宗助に、好きになってもらう為に提案した。
その代わり、宗助は先輩を想ったままでも良く、先輩としてみたい彼氏彼女の色んな事を茉里にして、少しでも気を紛らわすよう利用しても良いとまで言った。
:09/04/15 01:30
:SO906i
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