こいごころ
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#212 [向日葵]
――――――――…………
次の日。
宗助は茉里より早く学校に着いただろうと思って、暇つぶしに道場近くにある自販機に行く。
昨日、茉里は慣れたことなのか、とても普通に話していたが、心の底では深く傷ついているように見えた。
彼女は、傷を隠すのがうまい。
だから気づかず、通りすぎてしまいそうになるけれど、最近ではそういうのが分かってきた。
だから、傷つけない言葉を必死に探していたら、無口になってしまった。
:09/06/04 03:40
:SO906i
:☆☆☆
#213 [向日葵]
電車の揺れか、茉里の行動かは分からなかったけれど、胸にあった温もりを大切にしてあげたいと思った。
俺って……もしかして……。
ふと頭に浮かんだ言葉は、自販機近くのベンチに座っている人物を見つけた事によって、かき消された。
「先輩……?」
そう呼ばれた人物は、宗助の声を聞くと、顔をあげた。
座っていたのは、千早先輩だった。
その顔は、涙に濡れている。
「そーすけ……」
:09/06/13 01:42
:SO906i
:☆☆☆
#214 [向日葵]
宗助も、ゆっくりと先輩の横に座る。
「……っ、どうしたんですか……っ」
「彼氏と……ちょっと……」
先輩は、簡単に涙を流す人じゃない。
こんなに人目構わず泣いているということは、よほどショックな事があったか、大きなケンカをしたか……。
「道場の近くに来れば、なんか落ち着く気がしたんだけど……。なにも聞こえないからさ……」
「昨日から、明日まで休みなんですよ」
「そっか……」
:09/06/13 01:43
:SO906i
:☆☆☆
#215 [向日葵]
少し笑いながらも、先輩はまたポロポロ涙を流す。
「やっぱり、アンタの前で泣いてたせいか、アンタが近くにいると、安心して余計に泣けちゃうよ……」
そう言ったとき、宗助のポケットに入っている携帯のバイブが鳴る。
サブディスプレイを見れば、茉里からのメールだった。
返そうか迷いながら、とりあえず携帯を開く。
「宗助……」
「あ、はい」
受信ボックスを、開こうとする。
:09/06/13 01:43
:SO906i
:☆☆☆
#216 [向日葵]
「しばらく……そばにいて……」
しかし、その指は止まった。
「お願い……お願いだから……」
先輩は宗助の肩に額を乗せる。
そして指先で腕にそっと触れる。
宗助は少しためらって、やがて、携帯の電源を押した。
――――――――――…………
「あれー?」
茉里は道場の椅子に座っていた。茉里の方が、早くに着いていたのだ。
:09/06/13 01:43
:SO906i
:☆☆☆
#217 [向日葵]
到着すること20分。
宗助に現在どこにいるか聞こうとメールを送ったところだ。
「気づいてないのかなー。メール返信してくんないなー」
来るまで掃除でもしようとモップを手に取る。
その時、バイブが鳴ったので、携帯を置いてる机に飛んでくる、が、メルマガだったので、乱暴に携帯を机に投げて、掃除に取りかかる。
ひたすら待って、待って、待って……30分待った。
掃除も終えた。
なんなら棚整理も、救急箱整理も終わった。
もしかして寝坊?
:09/06/13 01:44
:SO906i
:☆☆☆
#218 [向日葵]
「しょうがないなー。モーニングコールしてあげようじゃないかー」
大きな独り言を恥ずかし気もなく言った茉里は、電話をかけてみることにした。
ブツッと音がしたので、口を開く。が。
{お客様がおかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入ってないため……}
「電源……?」
いれてないわけがないと思う。
多分電波が悪いのだろう。
「事故……じゃないよね?」
心配すれば、よからぬ事が次々に頭をよぎる。
:09/06/13 01:44
:SO906i
:☆☆☆
#219 [向日葵]
大丈夫なのかと、メールを送る。
3分待ったが、やっぱり返ってこない。
こうしちゃいれない。
駅まで行ってみよう。
行ったからといってどうなる訳でもないのに、茉里はそう思った。
鞄を持って、戸を開けようとすると、先に開けられた。
宗助かと思って、笑顔で顔を上げれば、茉里はその笑顔をすぐに引っ込めて、驚きの表情に変える。
「さ、沢口さん!」
「久しぶりだね。合宿だと聞いて、いつ帰ってきたのか知らなかったんだけど、イチかバチか来てみて良かった」
:09/06/13 01:44
:SO906i
:☆☆☆
#220 [向日葵]
「ちょ、他校に勝手にかつ簡単に入らないでください!」
「どこかの部活が練習試合で、他校が来てたから、入っても怪しまれないかなーって思って」
茉里は呆れて、思わずポカンと口を開けてしまったが、すぐに我に返る。
こんな事、してる場合じゃなかった。
「私、急いでるんです。じゃ……」
「あ、待って!」
腕を掴まれ、茉里は立ち止まる。
「この前、加賀さんを傷つけたみたいだから、謝りたくて……」
:09/06/13 01:45
:SO906i
:☆☆☆
#221 [向日葵]
「べ、別にあれは……」
半分八つ当たりみたいなもので、全部が沢口が悪いという訳じゃない。
「気に障るような事を言ったのだったら謝るから。だから、そんなに素っ気なくしないでくれるかな」
困ったように、でも申し訳なさそうに微笑む。
確かに、しつこいからと素っ気なくしてたけれど、沢口本人を見れば、別に大きな問題があるほど悪い人ではない。
むしろいい人なのだろう。
そう思えば、茉里の方が悪い気がして、茉里はシュンと肩を落とす。
:09/06/13 01:45
:SO906i
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